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Googleが時代を先駆けすぎたサービス「Google Wave」で犯した「3つの失敗」とは?

by Google

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受け、リモートワークを導入する企業の増加に伴い、チャットサービスのSlackやタスク管理サービスのTrelloといった「コラボレーションツール」の存在感が日ごとに強まっています。そのコラボレーションツールの先駆けとも言える、2009年にGoogleがリリースしたサービス「Google Wave」がリリースから2年もたたずに開発終了という失敗に終わった理由を、タスク管理ツールを開発する企業「taskade」がブログ上で分析しています。

Google Wave's Failure is a Great Lesson for Modern Real-Time Collaboration Tools - Taskade Blog
https://blog.taskade.com/google-wave-history/

Google Waveは「Eメールを現代の形に作り直すとどうなるか?」という疑問から生まれたサービスで、豪華なフォーマットのテキストや画像などを使ったリアルタイムのコミュニケーションやWikiの共同編集などが可能でした。以下のムービーを見るとGoogle Waveが動作する様子がよくわかります。

Meet Google Wave - YouTube


Google Waveのプロジェクトはラーズ・ラスムーセン氏とイェンス・ラスムーセン氏の兄弟に任されました。ラスムーセン兄弟はまずはじめに、Google Waveのプロトタイプである「Walkabout」と呼ばれる製品の開発に取りかかります。Walkaboutの最終目的は「Eメール、チャット、文書など、コミュニケーションの方法に区分があるのはなぜ?」「もっとシンプルなコミュニケーションの方法はないのか?」といった、オンラインでのコミュニケーション方法に答えを出すというものでした。

2009年のGoogle I/Oにて、Google Waveが正式に発表され、実際にデモも行われました。

Google Wave Developer Preview at Google I/O 2009 - YouTube


正式発表はされたものの、Google Waveはまだテスト段階であり、改善すべき点が多々ありました。そこで、Googleは約6000人の開発者に対し、早期のアクティブテストを実施することに。しかし、これがWaveの最初の失敗だったとのこと。オンラインでの共同作業を促すツールであるにも関わらず、利用者を6000人に限定することはサービスの利用拡大を妨げるものだったとtaskadeは主張しています。2009年9月に、Googleは10万人を新規にGoogle Waveに招待しましたが、2万7000人までしかアクティブユーザーを増やすことができませんでした。Waveの開発責任者であるイェンス・ラスムーセン氏は「Google Waveは2009年の技術的なトピックとして、Twitter上でトップのトレンドとなった」ことから、2009年当時は事態を楽観視していたそうです。

Google Waveはグループ機能の強化や通知機能を実装し、2010年5月に正式リリースされました。しかし、2010年のGoogle I/OでGoogle Waveが紹介された時間は、2009年よりも大幅に短縮されていました。イェンス・ラスムーセン氏は2010年に行われたインタビューに対し「Google Waveはハイプ・サイクルにおける回復期にさしかかっており、実際の利用事例は増加している」と回答しており、2009年の姿勢からやや自信を弱めていることがうかがえます。Google Waveは「チームがGoogle Waveをどう開発し、どんな製品に仕上げるべきかを正確に把握できていない」という、2つめの問題に直面していました。


2010年8月にはGoogleがGoogle Waveの開発をトーンダウンすると発表。最終的にGoogle Waveプロジェクトは廃止され、Google Wave内で使用されていた独自プロトコルを利用した「Google Shared Spaces」と、「Apache Wave」と呼ばれるオープンソースプロジェクトにその技術が引き継がれました。そして2012年4月、GoogleはWaveのサーバーをシャットダウン。2018年にはオープンソースプロジェクトのApache Waveも終了され、Google Waveはこの世から消え去ることになりました。

taskadeはGoogle Waveの失敗について、「不完全な状態での製品リリースによって、製品の話題性にうまく乗じることができなかったこと」「製品の方向感や市場におけるポジショニングが不適切であったこと」に加えて、「Google Waveの登場が時期尚早であったこと」も原因のひとつに挙げています。現在は数多くのコラボレーションツールがありますが、Google Waveのリリース当時はメッセージのスレッド機能やWikiの共同編集機能などは革新的なもので、多くのユーザーがGoogle Waveの本当の価値に気づくことができなかったとのこと。


Waveの失敗から学べることとして、taskadeは「ポジショニングがすべて」と結論づけています。さまざまな選択肢があふれる世界において、自身の開発するサービスがどんな価値をもたらすかを認識できていなければ、ユーザーに利用されずに失敗に終わるとのこと。製品を十分に完成させられるだけの開発期間を設けた上で、自分の開発するサービスについて「何を、誰に、いつ提供すべきサービスなのか」を意識することが必要だとtaskadeは分析しています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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