サイエンス

50種類以上のがんをAIによる新たな血液検査で簡単にスクリーニング検査できるとの研究結果


既に機械学習アルゴリズムを用いたAI(人工知能)は医療現場への応用が期待されており、人間の医師よりも高い精度でCTスキャンデータから肺がんを検出したり、がん免疫療法が効く人と効かない人を判別したりといった成果が報告されています。イギリスやアメリカの研究チームは、新たにAIを用いた血液検査により、50種類以上のがんを簡単にスクリーニング検査できるとの研究結果を発表しました。

Sensitive and specific multi-cancer detection and localization using methylation signatures in cell-free DNA - Annals of Oncology
https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(20)36058-0/fulltext

New blood test can detect wide range of cancers, now available to at risk individuals in clinical study at Dana-Farber - Dana-Farber Cancer Institute | Boston, MA
https://www.dana-farber.org/newsroom/news-releases/2020/new-blood-test-can-detect-wide-range-of-cancers--now-available-to-at-risk-individuals-in-clinical-study-at-dana-farber/

New AI-Powered Blood Test Promises Easy Screening For Over 50 Types of Cancer
https://www.sciencealert.com/ai-powered-blood-test-promises-quick-and-easy-screening-for-over-50-types-of-cancer

New blood test can detect 50 types of cancer | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2020/mar/31/new-blood-test-can-detect-50-types-of-cancer


従来の血液検査によるがん診断の多くは、免疫ががん細胞を破壊した時に血中へ流れ出すがん細胞のDNAを、DNAの塩基配列を決定するDNAシークエンシングに基づいて検出するというものでした。しかし、研究チームはDNAの塩基配列ではなく、がん細胞のDNAメチル化パターンに着目し、新たな血液検査のアプローチを開発したとのこと。がん細胞のDNAに起きているメチル化パターンは通常の細胞とは著しく異なるため、がん細胞が免疫によって破壊されて血中に流れ込んでいる場合、血中のDNAメチル化パターンを分析することでがんの有無が判別できるそうです。

ハーバード大学医学部の主要関連医療機関であるダナ・ファーバーがん研究所に所属するジェフリー・オックスナード博士は、「妊娠中の女性では、胎児に異常がないかどうかを調べるため、血中に浮遊するDNAを調べます。私たちは血中のDNAに基づくアプローチが存在することを知っていますが、問題は血中に浮遊するDNAからがんを探す技術をどのように微調整し、完璧にするかです」とコメント。そこで研究チームは、機械学習アルゴリズムを用いて新たな血液検査アプローチを開発しました。


まず最初に、研究チームは2800人以上のがん患者から血液サンプルを採取し、サンプルに含まれるDNAメチル化パターンをアルゴリズムに学習させました。次に、がんと診断された1531人の患者とがんではない1521人の患者、合わせて3052人の血液サンプルに含まれるDNAメチル化パターンを使ってアルゴリズムを訓練したとのこと。研究チームはがんの有無だけでなく、「このサンプルの患者はどの部位にがんを持っているのか」についても、アルゴリズムに学習させたそうです。

続いて研究チームは、全体のおよそ半数にがんが存在する1264人の血液サンプルを使い、訓練したシステムをテストしました。サンプルには乳がん・食道がん・胃がん・卵巣がん・肺がん・多発性骨髄腫・すい臓がんなど、実に50種類以上にわたるがんが含まれていたとのこと。


テストの結果、新たなシステムはがんであると診断された人の血液サンプルのうち44%で正しくがんを検出したそうで、特に「実際にはがんでない人を誤ってがんと診断してしまう」割合は0.7%と非常に低かったと研究チームは述べています。また、がんの検出精度はがんが進行するほど向上したそうで、ステージIのがんでは全体の18%が検出されたのに対し、ステージIVでは93%の割合でがんを検出できました。

一部のがんでは特に検出精度が高い場合もあったそうで、すい臓がんはステージIで63%、ステージIVで100%の検出精度が確認されました。さらにこのシステムはがんの有無を検出できるだけでなく、がんの種類を特定することもできたとのこと。がんがあるとシステムが判断したケースのうちの96%でシステムはがんの部位を推測し、この推測は93%の精度で的中していたそうです。

オックスナード博士らの研究チームは2019年にも20種類以上ものがんを発見できる血液検査を開発していますが、機械学習アルゴリズムを用いたシステムにより、さらに精度が向上した模様。

20種類以上のがんを特定できる血液検査が開発される - GIGAZINE


オックスナード博士によると、このシステムは既に臨床試験も検討されている段階だとのこと。今回の結果はAIを用いた血液検査によるがん検出が有望だと示すものでしたが、早期がんの検出率が低いといった問題点もあるため、「この血液検査が日常的に使用される前に、臨床試験の結果を見て検査の性能をより完全に理解する必要があるでしょう」と、オックスナード博士は述べました。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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