サイエンス

郵便物やスマートフォンの表面から新型コロナウイルスに感染する可能性はあるのか?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が全世界に拡大する中で、「郵便物や宅配便の荷物、スマートフォンなどの表面に付着した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)から感染してしまう可能性はあるのか?」と不安に思う人も増えているそうです。この疑問について、シドニー大学のEuan Tovey准教授が解説しています。

Can I get coronavirus from mail or package deliveries? Should I disinfect my phone?
https://theconversation.com/can-i-get-coronavirus-from-mail-or-package-deliveries-should-i-disinfect-my-phone-134535


新型コロナウイルス感染症の流行以降、オーストラリアのGoogle検索では「電話を消毒する方法」「電話をきれいにする方法」といった検索ワードが上位になっているほか、「郵便物から新型コロナウイルスに感染するのか?」といった質問形式での検索も増えているとのこと。多くの人々が郵便物や携帯電話を介した新型コロナウイルスの感染を恐れる中、Tovey氏は「リスクを理解して軽減するためには、携帯電話や郵便物がどのようにウイルスと接触する可能性があるのか、さまざまな物体の表面でウイルスが生存する期間について考えることが役立ちます」と述べています。

記事作成時点では、新型コロナウイルスが物体の表面でどれほど生存できるのか、完全にはわかっていないとTovey氏は指摘。しかし、2020年3月17日に査読付き雑誌のNew England Journal of Medicineに発表された論文では、「新型コロナウイルスは銅や段ボールよりも、プラスチックやステンレスの表面で安定している」と報告されました。

研究チームによると、プラスチックやステンレスの表面に新型コロナウイルスを塗り込んでから、最大72時間後まで生存したウイルスが検出されたそうです。一方、銅の表面では塗り込んだ4時間後には生きたウイルスが検出されなくなり、段ボールの表面でも24時間後には生きたウイルスが検出されなくなったとのこと。プラスチックの表面で新型コロナウイルスが長期間生存できるとの結果から、携帯電話の表面には数日間にわたってウイルスが付着し続けている可能性があります。

Tovey氏はこれらの結果について、新型コロナウイルスが実験室に持ち込まれた段階で生存期間がある程度少なくなっていた可能性もあると指摘し、生存期間が過小評価されている可能性もあると考えています。「これは新しいウイルスであり、まだ全てのデータを入手したわけではないことを忘れないでください。毎日のように新しい発見があります」とTovey氏はコメントし、クルーズ船の内部で乗客の下船から17日間後に新型コロナウイルスの痕跡が発見されたというアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告もあることから、ウイルスの生存期間についてはさらに調査が必要だとの見方を示しました。


新型コロナウイルスが携帯電話に付着するシナリオとしては、感染者が携帯電話で通話した時にウイルスを含んだ飛沫が本体の表面に付着するケースが考えられます。この携帯電話を他の人に手渡した場合、表面に付着したウイルスが手の指に移り、その手で口・目・鼻などを触ると伝染する可能性があるとのこと。

また、新型コロナウイルスは糞便を介して感染している可能性もあるとの指摘もされていることから、水を流した際に飛び散る小さな糞便の粒子にウイルスが含まれており、トイレに持ち込まれた携帯電話の表面に付着しているケースもあり得ます。トイレを終えた後の手洗いが重要なのは、糞便を介してウイルスに感染するのを防ぐためだとTovey氏は述べました。

郵便物の表面に新型コロナウイルスが付着するシナリオには、郵便物の送り主や配達人がウイルスに感染していた場合、手で持った時やせきをした時にウイルスが付着する可能性があります。しかし、段ボールの表面における新型コロナウイルスの生存期間は1日程度と考えられており、プラスチックなどと違って多孔質な段ボールの表面には液滴が残留しにくいことからも、Tovey氏は段ボールからの感染リスクはそれほど高くないと考えているそうです。


新型コロナウイルスに感染するリスクを減らすためには、何よりもまず基本的な対策が大事だとTovey氏は主張。「頻繁に手を洗い、他の人との物理的な接触を減らし、体調が悪いときには絶対に出歩かないでください」とTovey氏は述べました。

また、自分の携帯電話はなるべく他の人に渡さず、自分の手元に持っておく方が安全だとのこと。理想的にはスマートフォンやタブレット、キーボードの表面を70%のアルコールを含んだ除菌ワイプで拭くことがおすすめだそうですが、よりアルコール濃度が低い除菌ワイプでも、表面を拭くだけで新型コロナウイルスをある程度は除去できるそうです。

郵便や小包の配達に際しては配達人と必要以上に近づかずに受け取り、パッケージ全体を一度拭き取ってから開封し、箱や封筒を廃棄した後は手を洗うと感染のリスクを減らすことができます。「結局のところ、リスクがゼロになることは決してないため、全ての物体の表面からの感染ルートについて気にしすぎると、世界は悪夢のようになります」とTovey氏は述べ、必要以上に神経質になりすぎない方がいいとアドバイスしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルス感染症の流行でボードゲームやパズルなどの娯楽商品の需要が増えている - GIGAZINE

新型コロナウイルスの解析システムがスーパーコンピューターを超える処理速度に達したとの報告 - GIGAZINE

新型コロナウイルスの流行で閉業に追い込まれたストリップクラブがストリッパーたちを派遣するデリバリーサービス「Boober Eats」を開始 - GIGAZINE

「新型コロナウイルスの影響でコンドームの需要が急激に増加している」という報告 - GIGAZINE

なぜ新型コロナウイルス対策に「石けん」が最強なのか? - GIGAZINE

新型コロナウイルス対策はとにかく「手洗い」に尽きるとWHOが様々な噂をメッタ斬り - GIGAZINE

世界中で1300万回以上再生された「コロナウイルスとは何か&あなたは何をすべきか」を解説するムービー - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.