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1973年のオイルショックでの「トイレットペーパー買い占め騒動」はアメリカでも起きていた


2019年に発見された新型コロナウイルスが世界的に感染拡大していることに伴い、日本を含む世界各国でトイレットペーパーの買い占めが発生しています。これについて、さかのぼること約半世紀前の1973年に日本で発生したトイレットペーパー騒動との類似性を指摘する声もありますが、実は当時のアメリカでも同様の騒ぎが発生していました。そこで、マーケティング情報サイトのPriceonomicsが過去の歴史を振り返って、当時のアメリカで一体何が起こったのかを解説しています。

The Great Toilet Paper Scare of 1973
https://priceonomics.com/the-great-toilet-paper-scare-of-1973/

1973年は、第四次中東戦争が勃発した年です。スエズ運河をはさんでにらみ合うイスラエルとアラブ諸国の戦端が開く前から、不安定な中東情勢のあおりを受けた株式市場の平均株価が年初から45%近く暴落するなど、経済は混乱の渦中にありました。そして、10月に入りアラブ石油輸出国機構(OAPEC)が原油の輸出を大幅に制限する方針を打ち出すと、それまで1バレル(約156リットル)当たり約3ドル(当時のレートで約800円)だった原油価格が約12ドル(当時のレートで約3200円)に跳ね上がるなど大きな影響が発生しました。

これを受けて、各種メディアでは連日「ガソリン・電気・タマネギなどの供給が途絶える」と大きく報道され、アメリカ人の間に「不足心理」が広がっていきました。そして11月下旬にアメリカに舞い込んできたのが、「日本で紙が不足している」とのニュースです。当初は、このニュースを気にかけるアメリカ人はほとんどいませんでしたが、1人だけ深刻に受け止めた人物がいました。それが、ウィスコンシン州第8選挙区から選出されたハロルド・フレーリッヒ下院議員です。


製紙業と関わりが深い地元の林業関係者から突き上げられたフレーリッヒは、11月16日に「合衆国政府印刷局は深刻な紙の不足に直面している」との声明を発表。その後、「政府が軍と政府機関にトイレットペーパーを供給する業者を選定する入札に失敗した」ことを示す文書を入手したフレーリッヒは、12月11日に「アメリカは数カ月以内に深刻なトイレットペーパー不足に見舞われるかもしれません。これは笑い事ではなく、潜在的に全てのアメリカ人の問題です」と発表しました。

当時のアメリカの主要紙は、こぞってフレーリッヒの発表を取り上げて、民衆の不安をあおりました。Priceonomicsはその時の様子を「有線放送やラジオ、マスメディアの海外特派員はストーリーをセンセーショナルにすることに腐心しました。その中で、『may(かもしれない)』や『potentially(潜在的に)』といった言葉は抜け落ちていったのです」と述べています。

さらに、12月19日に放送されたテレビ番組で、コメディ俳優で人気司会者でもあるジョニー・カーソンが2000万人以上の視聴者に向けて「最近ではあらゆるものが不足していますが、トイレットペーパーが不足するという話は聞いたことがありますか?冗談ではありませんよ。そう新聞(papers)に書いてありましたからね!」と話すと、アメリカ人のトイレットペーパー不安は頂点に達し、翌日にはアメリカ全土の小売店でトイレットペーパー売り場に群がる消費者の姿が見られるようになりました。


また、トイレットペーパーの買い占めに狂奔する市民の様子をマスメディアが取り上げたことも、事態に拍車をかけました。当時のニューヨーク・タイムズの(PDFファイル)紙面には「ニュースでトイレットペーパーが不足すると聞いたので、15ロール余分に買いました」「家で開いたパーティーのお客さんに、トイレットペーパーを持ち寄ってと頼みました」といったインタビューが載っています。こうした騒動に対し、小売店の店長は膨大な数量のトイレットペーパーを発注したり、1人当たり2ロールに制限したりして対処しましたが、誰もルールを守らなかったので効果はなかったとのことです。


最終的にパニックが終息するまでに要した期間は、約4カ月間でした。騒動がピークに達していた1974年2月には、お金ではなくトイレットペーパーを使っての物々交換が行われたり、トイレットペーパーを取引する闇市場が形成されたりしている様子も見られたとのことです。

今回の騒動でも「闇市場が形成される可能性がある」と指摘されています。

新型コロナウイルスパニックによるトイレットペーパーや消毒剤の買い占めが海外でも発生、闇市場が形成される可能性も - GIGAZINE


また、デマを広めたとの批判の矢面に立たされたカーソンは、テレビカメラの前で謝罪を迫られることになりました。この時カーソンは「偽のトイレットペーパー不足を作り出したことで後世に名前を残すのは不本意です。私は新聞の記事を少し誇張してしまいましたが、実際には不足は発生していません」と話しています。

この現象について分析したマーケティング学教授のスチュアート・ブリットは、自著の中で「誰もが人より先に物事を知るのが好きです。これはいわば、『ねえ聞いた?症候群(did-you-hear-that syndrome)』です。昔は、うわさが広まるのには時間がかかりましたが、今日では1人のテレビパーソナリティが冗談を言うだけでうわさが広がってしまいます」と述懐しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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