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世界で最も過小評価されている文化財「トイレットペーパー」の歴史とは?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、多くの国々で生活必需品や衣料品、食料品の買い占めが発生しており、日本をはじめとするいくつかの国々ではトイレットペーパーの品切れが相次ぎました。非常時において急に注目を集め、「世界で最も過小評価されている文化財」とまでいわれるトイレットペーパーの歴史について、ジャーナリストのStefan Dege氏が解説しています。

Toilet paper as a symbol of the coronavirus crisis | Lifestyle | DW | 20.03.2020
https://www.dw.com/en/toilet-paper-as-a-symbol-of-the-coronavirus-crisis/a-52861204

「新しい感染症の流行はさまざまな問題を引き起こすだろう」という予想は多くの人がしていたはずですが、新型コロナウイルス感染症の流行によって「トイレットペーパーがスーパーの棚からなくなる」ことを予想していた人はそれほど多くありません。しかし、実際には多くの国々でトイレットペーパーが買い占められており、スーパーの棚からはトイレットペーパーが消えたり、カート一杯にトイレットペーパーを積み込む買い物客が現れたりしています。

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ドイツのボン・ライン・ジーク応用科学大学でビジネス心理学を研究するBritta Krahn氏は、トイレットペーパーの買い占めは「自身の日常をコントロールしたいと願う欲求の現れ」であると指摘。新しい感染症の流行という不確実な事態に直面した人々は、安定した日常の象徴としてトイレットペーパーを求めている可能性があるとのこと。

多くの人々はトイレットペーパーが当たり前の存在だと思っていますが、Dege氏は「長い間、人々はお尻を拭くための紙を持っていませんでした」と述べています。オーストリア北部にある青銅器時代の塩鉱山の遺跡からは、「フキの葉」を尻を拭くために使用していた証拠が残っています。ドイツのバイエルン地方では、未だにフキのことを「Arschwurzen(尻の植物)」と呼んでいるとのこと。

by she_who_must

「お尻を拭く紙」に関する最古の記録は、6世紀の中国にさかのぼります。南北朝時代の学者である顔之推は、子孫に伝える家訓として記した「顔氏家訓」の中で、「五経の文言や解釈、賢人の名前が書いてある紙を尻吹きなどの不浄な目的で使う気にはならない」と述べているとのこと。この記述は、当時の中国で既に尻を拭くために紙を使う文化があったことを示唆しています。また、9世紀に中国を訪れたアラビア人が、「中国人は清潔にあまり注意していない。用便をした後に水で洗わず、紙で拭くだけだ」と書いているそうです。

さらに、1393年には明朝の宮廷が、尻を拭くための60cm×90cmサイズの紙を約72万枚も使用したことが記録されているとのこと。中でも初代皇帝の朱元璋とその家族は「特に柔らかく、香りのある紙」を使用することが許されていたそうで、1年で1万5000枚もの特別な紙を消費した模様。

中国では紙を使って尻を拭く文化が早くからあった一方で、ヨーロッパにおいて尻を拭くために長く使われていたのは、古いぼろきれや羊毛のボール、植物の葉、干し草などでした。エストニアのタルトゥで発見された中世のトイレからは、尻を拭くために使用された布片が多数発見されています。布は非常にボロくすり切れたものから、絹の飾りがついたままの上質なウールで作られた布もあったそうで、布の質から尻を拭いた人々の社会的地位がわかるとのこと。

by Shai Barzilay

尻を拭くために紙を使用する習慣がヨーロッパで普及したのは16世紀のことであり、新聞の普及や産業用紙生産の発達によって、紙が衛生製品としても使用されるようになりました。19世紀後半のイギリスでは水洗便所も普及したため、下水管を詰まらせない特別な紙としてトイレットペーパーが開発されたとのこと。

ドイツのポツダムにある高度持続可能性研究所(IASS)の科学ディレクターであるOrtwin Renn氏は、一部の人々が新型コロナウイルス感染症の流行という危機に対し、一種の戦闘的な代替行為として衛生用品などの備蓄を行っていると考えています。人々が危機に対して戦闘的な気質を持つかどうかは、遺伝子・教育・経験などに左右されます。また、TVやSNSのニュースや職場などの世間話で「トイレットペーパーが買い占められている」「私の家ではもうトイレットペーパーを買い占めた」といった話を耳にした人が、「自分も買い占めなくては」という考えに走ってしまった可能性もあると指摘されています。


トイレットペーパーの価値が急上昇する中、コメディアンのMagic Philさんが投稿した以下のムービーが、FacebookやTikTokなどで大きな人気を集めています。


コーヒーショップを訪れたPhilさん。


注文したコーヒーが届き……


レシートを確認します。


Philさんがズボンのポケットから取り出したのは……


財布ではなく、トイレットペーパーでした。


トイレットペーパーでコーヒー代金を支払ったPhilさん。


最後に店員さんの胸ポケットにチップ代わりのトイレットペーパーを押し込みました。

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in メモ,   動画, Posted by log1h_ik

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