「生きている人間の肌」を識別して顔認証のセキュリティを向上させる技術が開発されている
近年では多くのスマートフォンに顔認証システムが搭載されており、顔をかざすだけでロックを解除できる手軽さがユーザーから歓迎されています。そんな顔認証システムのセキュリティを向上させるため、「生きた肌と作り物の肌を識別するシステム」の開発が進んでいると、テクノロジー系の編集者であるScott Stein氏が報じています。
Your future face-scanning phone could check for live skin - CNET
https://www.cnet.com/news/your-future-face-scanning-phone-could-check-for-live-skin/
多くのスマートフォンに顔認証技術が搭載されている一方で、顔認証技術に多額の投資を行って開発されたAppleのFace IDと違い、Androidスマートフォンの中には顔認証のセキュリティが低レベルなものも多いとセキュリティ企業のカスペルスキーは指摘。精度の低い顔認証技術を採用しているAndroidスマートフォンの中には、実際の顔ではなく平面の写真で顔認証を突破できてしまうケースもあるとのこと。
そこで、ドイツの総合化学メーカーであるBASF傘下のスタートアップ・Trinamixは、顔認証技術のセキュリティを向上させるため、「生きている人間の肌」を検出するアルゴリズムを開発したと主張しています。顔をスキャンする際にスキャン対象が人間の肌かどうかを調べることで、平面の写真はもちろん、3Dプリンターで作成された精巧な模型などで顔認証を突破することができなくなります。
新たに開発されたアルゴリズムは、既存のスマートフォンに搭載されていないような特殊な装置を必要とせず、Face IDなどで使用されている赤外線ドットプロジェクターなどの技術を使い、生きた人間の肌とそれ以外を識別可能できるとのこと。赤外線ドットプロジェクターは、ユーザーの顔の形状を立体的に計測するために数万個ものドットパターンをユーザーの顔に投影し、それを赤外線カメラで読み取るというデバイスです。
Trinamixの創設者兼CEOであるIngmar Bruder氏によると、生きている人間の肌と死んでいる人間や作り物の肌では、赤外線の後方散乱が異なっているとのこと。そのため、既存の顔認証システムが使う赤外線ドットプロジェクターなどのシステムが放出する赤外線の後方散乱を検出することで、生きた人間の肌を識別できるというわけです。
実際にStein氏はマンハッタンのホテルでBruder氏と面会し、Trinamixのアルゴリズムが人間の肌を識別する様子を見ることができました。実際に、Trinamixのアルゴリズムが組み込まれたカメラを取り付けたLG製スマートフォンに対し、ゴム製のフェイスマスクを顔認証させようとしたところ、「これは生きた人間の肌ではない」と判断されたとのこと。その後、Stein氏やBruder氏が同じLG製スマートフォンに顔を向けたところ、「これは人間の肌である」と判断されたそうです。なお、Stein氏はLG製スマートフォンを用いたデモについて、顔を特定の角度に合わせる必要があったと述べています。
by Scott Stein
Trinamixのアルゴリズムは人間の肌とそれ以外だけでなく、木材、プラスチック、金属など、さまざまな素材をそれぞれ識別できるそうです。そのため、ロボットが工場や倉庫から特定の材料を選んで運び出すシステムなど、顔認証以外の技術にも応用できる可能性があるとのこと。
生きた人間の肌を検出するシステムをスマートフォンやノートPCに搭載するため、Trinamixは既に大手半導体開発企業のQualcommと提携しているとのこと。Trinamixによると、2021年には手ごろな価格で新たな顔認証システムが提供可能になるかもしれないとのことですが、記事作成時点ではAppleとの協力は行っておらず、Androidスマートフォンだけで動作が確認されているそうです。
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