中古のIPv4アドレスはどんな手順で売却されるのか？

IPv4アドレスの不足はアメリカやヨーロッパを始め大きな問題となっています。そのため、少しでも枯渇を遅らせるために、既に割り当てられているIPv4アドレスの売買がアメリカなどの一部地域で認められ始めています。どのようにしてIPv4アドレスが売却されるのかについて、インターネットテクノロジーのライターであるデビッド・ストロム氏が、自身の体験を基に語っています。

So you wanna buy a used IP address block? | Web Informant
https://blog.strom.com/wp/?p=7561

ストロム氏が所有していたIPv4アドレスブロックは、PCなどに割り当てを行っていないほぼ未使用の状態でした。ストロム氏は2020年1月頃からIPv4アドレスの売却に乗り出しました。IPv4アドレスを売却するには、まずIPv4アドレスの所有を証明する書類を入手する必要があります。ストロム氏の場合、以前経営していた事業の法人税申告書にIPv4アドレスを記載していたので、それを使用したとのこと。

また、ストロム氏はIPv4アドレスを個人で所有していたのですが、個人で所有するIPv4アドレスは売却が認められていませんでした。売却が認められていたのは、法人が所有するIPv4アドレスのみだったため、ストロム氏はいったんIPv4アドレスの所有権を自身が経営する会社に譲渡しました。この手順は、ストロム氏が住む地域のIPv4アドレスの管理を行っているARINに対して身元を証明し、IPv4アドレス売却の許可を得るために必要な手順です。

ARINから正式に許可を得られれば、IPv4アドレスを他人に売却できるようになります。ストロム氏は、「IPv4アドレスの売却は、ほとんど1人で手続きを済ますこともできます」とも述べていますが、仲介業者を介して売却することを選びました。

仲介業者が必要である理由について、ストロム氏は「購入者と販売者の両方が信頼し合うために、第三者の立場で取引を成立させる人が必要です」と述べています。IPv4アドレスは、大規模な横流しなども問題になっていることから、IPv4アドレスの売買には信頼性が重視されています。

約50億円相当のIPv4アドレスがアフリカから横流しされているという報告 - GIGAZINE

仲介業者を探すにあたり、ストロム氏は始めにARINに登録されている仲介業者のリストから業者を検討しました。ARINのリストには、記事作成時点で29社の仲介業者が登録されており、連絡先、電話番号、リストへの登録日を確認できたとのこと。しかし、ARINのリストはあくまで情報のみが登録されており、各仲介業者がまだ事業を続けているのか、信頼できる方法で売買を行っているかといった情報を得ることはできなかったそうです。

ARINのリストは信頼に欠けるため、ストロム氏はIPv4 Market Groupに登録されている業者から仲介業者を探すことにしました。IPv4 Market Groupは、仲介業者を登録する際に以下の条件を設けていたため、「ARINのリストよりも信頼できる」とストロム氏は判断したとのこと。
・IPv4アドレスの売買両方を扱っているか
・法律上および保険上で適切に保証されているか

最終的に、ストロム氏は仲介業者としてHilco IPv4.Global brokerageを選びました。Hilco IPv4.Global brokerageはオークション形式でIPv4アドレスを販売する仲介業者です。ストロム氏がHilco IPv4.Global brokerageを選んだ理由は、ホームページから全てのオークションを見られるため、価格の相場が分かりやすかったという点だそうです。オークションへの出品から数週間後、ストロム氏のIPv4アドレスは23ドル(約2480円)で落札されました。

ストロム氏がIPv4アドレスを売却する手続きを始めてから、落札金額を銀行口座に送金してもらうまでに約2カ月半かかったそうです。