サイエンス

こまめな歯磨きが糖尿病のリスクを軽減する可能性があるとの研究結果


日常的に歯磨きをすることは、虫歯や歯周病といった口腔衛生の問題を予防する上で重要です。さらに、新たにDiabetologiaで発表された研究で、「こまめな歯磨きは糖尿病のリスクを軽減する可能性がある」と報告されました。

Study links frequent tooth brushing to lower risk of diabetes while dental disease and missing teeth associated with increased risk – Diabetologia
https://diabetologia-journal.org/2020/03/03/study-links-frequent-tooth-brushing-to-lower-risk-of-diabetes-while-dental-disease-and-missing-teeth-associated-with-increased-risk/

糖尿病の原因としては甘い物の食べ過ぎや肥満、遺伝といったものが知られていますが、慢性的な炎症がインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」を引き起こし、糖尿病の原因になっているとの指摘もされています。韓国の研究チームは、歯周病や虫歯といった口腔衛生の問題が、感染症や全身性の炎症を引き起こす可能性があることから、「口腔衛生の指標と糖尿病のリスクは関連しているのではないか」という仮説を立てました。

そこで研究チームは、韓国の国民健康保険制度の記録から、さまざまな個人のデータや過去の病歴、口腔衛生の指標や検査所見が含まれた18万8013人分のデータを分析しました。データは2003年~2006年にかけて収集されたもので、歯磨きの回数や歯科受診歴、専門家による歯のクリーニングといったデータや、欠損した歯の情報なども含まれていたとのこと。対象者についての追跡調査も行われ、その後の人生で糖尿病を発症したかどうかの情報も集められたそうです。


今回の研究では、参加者全体の17.5%に歯周病が認められたほか、平均値が10年だった追跡調査期間が終了した時点で、全体の16%に当たる3万1545人が糖尿病を発症しました。さらに、歯磨きの頻度と糖尿病の発症リスクについて調査したところ、1日3回以上の歯磨きをしていた人々は、そうでない人々より糖尿病を発症するリスクが8%低かったことも判明したとのこと。

歯磨きと糖尿病の発症リスクとの関連は、年齢層によって違いがみられたと研究チームは指摘。51歳以下のグループにおいては、歯磨きは1日1回または1回も歯磨きをしない人と比較した場合、1日2回の歯磨きをすることで糖尿病のリスクが10%、1日3回の歯磨きをすると糖尿病のリスクが14%低いことがわかりました。52歳以上のグループでは、1日1回の歯磨きと1日2回の歯磨きとの間で糖尿病のリスクに大きな差はみられませんでしたが、1日3回の歯磨きをした人はそうでない人と比較して、糖尿病のリスクが7%低かったそうです。

さらに研究チームは、歯磨きと糖尿病の発症リスクの関連に男女差があったことも報告しています。女性の場合は男性よりも歯磨きと糖尿病リスクの低下に大きな関連性があり、1日1回または全く歯磨きをしない女性と比較すると、1日2回の歯磨きをする女性で8%、1日3回の歯磨きをする女性で15%も糖尿病のリスクが低かったとのこと。一方、男性の場合は、1日1回または全く歯磨きをしない場合と1日2回の歯磨きをする場合で糖尿病のリスクに統計的な差はみられず、1日3回の歯磨きをした場合は糖尿病リスクが5%低くなったと研究チームは指摘しています。


歯周病と糖尿病リスクとの関連については、高齢者よりも若年者の方が、歯周病を持っていた場合の糖尿病のリスク増加が大きかったとのこと。また、欠損している歯の数が糖尿病リスクと強く関連していることも示唆されており、51歳以下のグループでは1本~7本の欠損があると糖尿病リスクが16%高く、52歳以上のグループでは15本以上の欠損がある場合、糖尿病のリスクが34%も高かったと述べられています。

研究チームは、「頻繁に歯を磨くことで新たに糖尿病を発症するリスクが低下する可能性があり、歯周病と歯の欠損数の増加によって糖尿病の発症リスクが高まる可能性があります。全体として、口腔衛生の改善が、糖尿病の発症リスク低下に関連しているかもしれません」と結論しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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