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ティーンエイジャーの子どもにとって友達はどのような影響を与えるのか?


子どもから大人へと移り変わる期間、ティーンエイジャーの子ども達にとって、友達の存在がどのような影響を与えているのかについてを、科学分野のジャーナリストであるリディア・デンワース氏が語っています。

Friendship Is Crucial to the Adolescent Brain - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/family/archive/2020/01/friendship-crucial-adolescent-brain/605638/

◆中学校における友達と環境の変化
中学校は、一部の子どもに思春期の始まりをもたらし、「子ども」から「ティーンエイジャー」へと移り変わる期間であるといえます。その理由の1つとして、デンワース氏は環境の大きな変化を挙げています。アメリカのほとんどの子どもは小学校の頃、1日の大半を1つの教室で同じクラスメートと過ごします。しかし中学生になると、複数の教室に行くようになり、それまでとは異なるクラスメートと過ごすようになります。子どもたちは、新しい出会いを受け入れられるか、自分たちがどのように相手に受け止められるかについて、最大の関心を持つ時期に入ります。

カリフォルニア大学の発達心理学者であるヤーナ・ユボネン氏は、思春期の間に周囲の人間関係がどのように変化するか、ロサンゼルスにある中学校26校の生徒6000人の協力を得て、3年間にわたる追跡調査を行いました。

参加した子どもたちは、友達について以下の質問に答えました。
・友達の名前を挙げてください。
・友達はあなたを信頼していますか?
・友達に何でも話すことができますか?
・友達はあなたの家に来ますか?
・いじめられたことはありますか?
・いじめられている人を見たことがありますか?

研究対象となった中学1年生のうち、3分の2が秋から春にかけて「友達の名前を挙げてください」の回答が変化しました。ユボネン氏は「学校制度の構造に関係がある」と考えています。各地の小学校から中学校に集まった生徒たちは、学期の始めでは小学校の頃の友達との交流が顕著です。しかし、年が明けると、生徒たちは同じクラスの生徒と親密になっていきます。新しい環境での生活に慣れると、社会的視野が広がり、昔からの友達ではなく、サッカーや映画、ロボットなど、同じ趣味を持つ人に引き寄せられていきます。


しかし、中学校の社会的環境には暗い側面もあります。友達がいない子どもは、不安、抑うつ、自尊心の低下のリスクがあります。ユボネンの調査に参加した6000人の生徒のうち約12%は、「友達の名前を挙げてください」という質問に対して友達の名前を挙げられませんでした。彼らは一緒に昼食をとる人もおらず、いじめられたときにかばってくれる人もいませんでした。友達がいない生徒の割合は、女子よりも男子が多く、アフリカ系アメリカ人とラテン系アメリカ人の学生は、白人の生徒よりも友達がいない傾向が高くなっていました。

シカゴ大学の社会心理学者であるジョン・カシオッポ氏とルイーズ・ホークリー氏の、社会的孤立の認識とそれに伴う脅威感に関する研究では、中学1年生の時に友達がいないと、2年生の時に社会的脅威を感じる傾向が強くなり、3年生になると抑うつや不安などを感じる割合が高くなると述べられています。

「友情には階層的な地位が存在します。子どもたちは、誰が友達で、その友達が友情における階層のどの地位に立っているかを理解しています。地位を獲得するための手段のひとつとして、いじめは有効な手段となっています。いじめによって地位を獲得したり、維持したりするなど、戦略的な取り組みとも言えます」とユボネン氏は語っています。ユボネン氏によれば、短期的には「いじめっ子は一貫して人気を得られる」ため、いじめが起きるとのこと。

また、ユボネン氏によると「ソーシャルネットワークで最もつながりが希薄なユーザーがいじめのターゲットになりやすい」とのこと。また、少なくとも1人の友達がいる子どもは、いじめの被害者になる可能性が低いことも明らかになりました。


◆友達との交流が行動に与える影響
友達が多いティーンエイジャーは向こう見ずな行動をする傾向が高いことがわかっています。例えば、車に同年代の友達を乗せたティーンエイジャーの運転手は、一人で運転している場合に比べて事故を起こす確率が4倍高くなっています。10代の子どもが初めて酒を飲んだり、マリファナやドラッグを試したりするのは、友達と一緒にいるときの方が多くなっています。友達と過ごすことによって、ティーンエイジャーが危険な行動をとりやすくなるのはピア効果によるものであると、テンプル大学の心理学者であるローレンス・スタインバーグ氏による研究で明らかにされています。

スタインバーグ氏は、ビデオゲームを使ってティーンエイジャーおよび成人の行動の変化を調査しました。参加者は模擬運転ゲームの運転席に座ります。目標は、用意されたコースをできるだけ早く走ることでした。コースを早く走った参加者には報酬が追加されると約束されました。

研究は、以下の3つに場合分けして調査されました。
・運転手だけが運転する場合
・友達が同じ部屋で運転を見ている場合
・友達を隣の部屋に移動させ、友達と運転手はモニターを介して互いの存在を確認できるが、会話ができない場合


結果は、友達が部屋で見ている場合、ティーンエイジャーは1人の場合よりも危険な運転をする傾向が顕著になりました。成人は、友達が運転を見ていようがいまいが、危険な運転をする傾向は変わりませんでした。また、ティーンエイジャーは、友達がモニターを介して見ている場合でも、危険な運転をする傾向が高くなりました。つまり、友達から発破をかけられようが、そうでなかろうが、ティーンエイジャーは友達が自分のパフォーマンスを見ていると認識したとき、1人でいるときよりも、リスクを冒す割合が増加したということです。

スタインバーグ氏は、同じくテンプル大学の神経科学者であるジェイソン・チェン氏と協力し、脳波を測定して同じ実験を行った結果、子どもたちは仲間と一緒にいると脳内の報酬系が活性化されることがわかりました。「子どもが他の子どものそばにいると、報酬系が刺激を受けやすくなり、活性化しやすくなります。その結果、リスクの高い選択がもたらす潜在的な見返りに過度の注意を払うようになります」とスタインバーグ氏は述べています。一方で、ティーンエイジャーは友達と一緒にいるときの方が、1人でいるときよりも学習が早くなることも明らかになりました。友達と一緒に行動することで、より探索的な行動をとる傾向が強くなります。

「親は、子どもが友達から受ける影響や圧力の全てを心配する必要はありません。子どもが遊んでいる仲間が誰なのかを心配すべきです。成績の良い友達と一緒にいると、時間の経過とともに自分の成績も上がっていきます。また、お互いに薬物を使用しないよう圧力をかけあうこともできます。もちろん、その逆もありえます。事実上、全ての子どもは思春期の特性上、周囲の影響や圧力を受けやすくなります。問題は、誰に影響されているのか、何をするよう圧力をかけられているのかということです」とスタインバーグ氏は語っています。


◆親離れ
ウィスコンシン大学の心理学者、セス・D・ポラック氏らのグループは、母親と子どもの交流がストレスにどのような影響を与えるかについて研究を行っています。まず、7歳から12歳までの少女61人に対して人前で話す時間を設けたり、数学の問題を与えたりすることでストレスを誘発させるテストを行いました。テストの後、研究者たちは少女たちのストレスホルモンとオキシトシンのレベルを測定しました。その後、少女の3分の1を母親と15分間再会させます。母親たちは、娘と話したり抱きしめたりなど、好きなように慰めることが許されました。別の3分の1の少女は、検査を終えた直後に母親と電話で話させました。残りの少女は、母親と接触させませんでした。

その後、すべての少女のストレスホルモンとオキシトシンのレベルを測定しました。3つのグループはいずれも、ストレス誘発テストの後にコルチゾールが上昇しましたが、母親と交流したグループはコルチゾールが低下し、オキシトシンが増加する傾向にありました。母親と電話で交流したグループよりも、母親と直接交流したグループの方がコルチゾールの低下およびオキシトシンの増加が顕著に現れました。母親と交流しなかった少女たちはストレステストの1時間後でもコルチゾール値が高く、オキシトシンに変化はありませんでした。

母親と交流したグループは、コルチゾールが低下しました。母親と接触していない人は、ストレステストの1時間後でもコルチゾール値が高く、母親との接触はオキシトシンの放出にも影響した。それは15分以内の接触によって促進されたが、母親と交流しなかった少女には変化がなかった。


エール大学にいる神経科学者であるディラン・ジー氏は、子どもの脳がどのように成熟するかを研究し、思春期がストレス対処のターニングポイントとなることを発見しました。10歳未満の子どもの場合、母親によってストレスがコントロールされる傾向がありました。しかし11歳から17歳までの青年には、母親との交流で10歳未満と同じようなストレスのコントロールは見られませんでした。

さらに、2011年の研究では、11歳と12歳の子どもに対し、毎日、自分自身や自分の経験についてどう感じたかを記録し、誰が一緒にいたかを記録させ、コルチゾールレベルも測定しました。結果、子ども達は友達と一緒にいると、ネガティブな感情が緩衝され、コルチゾール値が下がり、自尊心が高まる傾向にあることが明らかになりました。

デンワース氏は、「ティーンエイジャーにとっての友達の重要性を鑑みると、親離れにより、親が失った社会的緩衝材の役割を友達が引き継ぐのは、論理的なことなのかもしれません」と語っています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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