ワイヤレス制御による投薬機能付きの「スマート包帯」が開発される
ワイヤレス制御で異なる種類の薬を任意のタイミングで投与できる「スマート包帯」をネブラスカ大学リンカーン大学とハーバード大学の合同研究チームが開発しました。開発チームは糖尿病患者の創傷治療に効果的だと述べています。
A Wirelessly Controlled Smart Bandage with 3D‐Printed Miniaturized Needle Arrays - Derakhshandeh - - Advanced Functional Materials - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adfm.201905544
UConn Biomedical Engineer Creates “Smart” Bandages to Heal Chronic Wounds - UConn Today
https://today.uconn.edu/2020/02/uconn-biomedical-engineer-creates-smart-bandages-heal-chronic-wounds/
開発されたスマート包帯のイメージが以下。見た目は包帯というよりもばんそうこうに近く、内部には電極のような小型デバイスとそれぞれに伸びるコードが備わっていることが見て取れます。
スマートフォンサイズの独自デバイスを使ってワイヤレスで制御できる超小型の針がスマート包帯には備わっています。この超小型の針は痛みと炎症を最小に抑えながら皮膚のより深い層に達するため、効率的な投薬が可能とのこと。また、内蔵された薬剤の中から投与する薬剤を選択することもできるそうです。以下の画像は、超小型の針を皮膚に差し込んだときのイメージです。
スマート包帯は主に糖尿病患者を想定したデバイスです。インスリンが慢性的に欠乏する糖尿病はインスリン不足が創傷の治癒に必要なタンパク質の分解を促進するため、糖尿病患者は小さな傷でも治りにくく、時には創傷が重症化してしまうことがあります。アメリカでは糖尿病患者が非治癒性の創傷に伴う合併症が問題視されており、毎年数百万人もの患者が四肢切断などの深刻な合併症に悩まされているそうです。
糖尿病患者の創傷治療では、細胞再生の進行度合いに応じて異なる薬を投与する必要があります。このことが、スマート包帯が異なる薬を投与できるように設計された理由です。また、ワイヤレス制御を活用すれば、患者が医療機関を訪問したり、医師が患者を往診したりすることなく、投薬することが可能になります。
研究チームは皮膚に創傷のある糖尿病のマウスにスマート包帯を装着するという実験も行いました。実験の結果、マウスの創傷は完治し、さらに傷跡なども見られなかったそうです。この結果をもって、研究チームはスマート包帯が糖尿病における創傷治療の速度と質を大幅に改善可能であるとして、創傷が慢性化する比率を大幅に引き下げることができると主張しています。
研究を主導したAli Tamayol氏は、スマート包帯に関する技術の特許を申請したと報告しました。
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