宝くじ当選番号を決めるために天才エンジニアが開発した完全にでたらめな番号を生み出すマシン「ERNIE」
イギリスには無利子である代わりに宝くじがついている国債「プレミアム・ボンド」が存在します。1956年から発行されているプレミアム・ボンドの最低購入額は25ポンド(約3500円)で、最大100万ポンド(約1億4000万円)が当たる可能性があるため、「公正な当選番号の選出」が非常に重要視されました。そこで、天才数学者たちによる先鋭チームが作り出したのが、ランダムな当選番号を生み出すためだけの機械「ERNIE」(アーニー)です。
イギリスの郵便貯金制度と国家的なギャンブルの中枢にいると語る男性。
扉を開けると……
そこに広がっていたのは、一見すると普通のオフィス。
オフィス前のデスクで2人の女性が作業しています。
しかし、男性がロッカーの扉を開けると、中からマシンが登場。このマシンは「Electronic Random Number Indicator Equipment」(債券割増金当選番号抽選器)といい、その頭文字を取って「ERNIE」と呼ばれます。
ERNIEは国債についた宝くじの当選番号を決めるための機械で、コンピューター科学者であるアラン・チューリングがドイツ軍の暗号解読にあたって助言を求めた天才トミー・フラワーズを初めとする研究者チームが開発しました。
中にはガスで満たされたネオン管が並んでいます。
このネオン管を電流が通った時に、ネオンガスの粒子の動きにより、完全にランダムな電流の変動が生まれます。
この変動が男性の持つデバイスにカウントされます。1秒間に数千もの変動が起こり、これが数字へと変換される仕組みとのこと。宝くじの当選番号は公正さが求められるため、「完全にデタラメな数字」を作り出す機械としてERNIEが開発されたわけです。
数字はプリンターで印刷されていきます。
印刷されている文字はこんな感じで、数字とアルファベットが入り交じっています。
また、数字は紙テープにも記録されていきます。
部屋の隅で作業していた女性たちは、この紙テープを扱っていたわけです。
当選者が決まる前に、紙テープはコンピューターに通されます。
マシンの中ではテープが回転し続けています。
当時、このような紙テープは記録媒体として使用されており、このデータを読み取りコンピューター経由で当選番号をカードに印刷していました。
ただし、問題は当選番号を国債の所有者と結びつけるという作業が手作業で行われていたということ。この広い部屋に並んだ棚の中に、国債所有者の名前と番号が書かれたカードが入っており、作業員は大量のカードの中から当選者が誰で、どこに住んでいるかを特定しなければなりません。
ずらりと小さな引き出しの並ぶ棚の間を歩く作業員。
引き出しの中からカードを取り出して……
当選番号と一致すれば、当選者にいいニュースを知らせるという仕組みです。
宝くじの当選者は本当に公正に選ばれているのかという点は、多くの人が気になる点。「ある人は国債を少ししか持っていないのに当選し、たくさん国債を持っているのに当選しない人もいます。その差は何ですか?」と男性が問うと……
担当スタッフは「純粋な運です」と断言。途中で住所を変えても当選の連絡はちゃんと伝えられるとのことで、「連絡がいかないケースはほとんどない」とシステムへの自信をみせています。
なお、プレミアム・ボンドは記事作成時点でもイギリスに存在し、ムービー中に出てくるERNIEは既に引退していますが初代ERNIEの2万1000倍の速度で作業を行う卓上版の「ERNIE 5」が稼働しているとのことです。数々の改良を経て、最新版ERNIEは鉛筆の先ほどのサイズになりました。
Fifth-generation Premium Bonds computer Ernie 5 could make you a millionaire and boasts quantum technology
https://www.thesun.co.uk/tech/8544253/premium-bonds-ernie-5-quantum-tech/
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