サイエンス

まるで人間のように汗をかくロボットが開発される、人間の3倍もの冷却効率を達成


哺乳類は皮膚の汗腺から汗を分泌することで、蒸発する際の気化熱による冷却効果を利用し体温を適切に保っています。そんな「汗をかく」機能を搭載し、過熱を防いでパフォーマンスを維持するロボットハンドが開発されました。

Autonomic perspiration in 3D-printed hydrogel actuators | Science Robotics
https://robotics.sciencemag.org/content/5/38/eaaz3918

Scientists build robot hand that can sweat | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2020/jan/29/scientists-build-robot-hand-that-can-sweat

Robots learn to sweat to stop overheating - The Verge
https://www.theverge.com/2020/1/29/21113421/soft-robot-hands-sweat-overheating-research


生物と同様にロボットも過熱によってパフォーマンスが低下することがあり、効率的な冷却システムの開発はロボットの性能向上において重要です。この課題に取り掛かったコーネル大学の研究チームは、「人間のように汗をかくことで温度を調節するロボットハンド」を開発しました。

「よくあることですが、生物学はエンジニアとして私たちに優れたガイドを提供してくれました。発汗する能力は、人間の最も顕著な特徴の一つです」と、研究チームのThomas Wallin氏はコメント。Wallin氏は、人間が陸上で最も足が速い動物ではないのに捕食者として成功した理由として、適度に汗をかいて体温調節を行い、長時間獲物を追いかけ続けることが可能だった点を挙げています。


ロボットやコンピューターの冷却システムとして、機械の内部に閉鎖式のチューブなどを通して液体を循環させるものは以前からありましたが、研究チームは過熱問題に対処する「より自然な解決策」を採用しました。開発されたロボットハンドの内側は水で満たされており、熱に反応するプラスチック製の穴がある表面に接続されています。通常時は穴が閉じているため水はロボットハンドの外に流れませんが、穴を構成するプラスチックが特定の温度に達すると穴が開き、水がロボットハンドの表面から流れ出るとのこと。

実際にロボットが汗を流す様子は、以下のムービーで見ることができます。

This robot hand can 'sweat' to cool itself down - YouTube


研究チームが開発したロボットハンドは、3Dプリントで作られた人間のような5本の指で構成されています。


ぐっと曲げられた指先から水が滴っている様子がわかります。このロボットハンドでは、内部の水が油圧作動油のような動力源としての役割も担っているとのこと。


ロボットハンドの指は約50%の水分を含むヒドロゲル製であり、一番外側の層が硬く、内側の層はより柔軟な作りになっています。


ロボットハンドが一定の温度に達した場合、指に設けられた穴が開いて水が流れ出る仕組みです。


実際に半球状の物体を握らせてみると……


指先から水が出てきました。指の表面は汗による冷却効果を高めるために表面積が大きくなっており、扇風機による風がある環境下では、汗をかかないロボットハンドと比較して600%もの冷却効率が達成されました。この発汗効率は、哺乳類の中でも汗による冷却効率が高い人間や馬と比較しても、3倍以上の効率だったとのこと。


「この戦略の最も優れた部分は、熱制御性能が材料自体に基づいている点です。ロボットハンドの発汗を制御するためにセンサーやその他の部品を必要としません」と、Wallin氏は述べています。追加実験により、ロボットハンドから流れ出た汗によって握っている物体そのものを冷却する効果も確認されたそうです。

金属製のロボットにおいては、金属そのものが優れた導体であるため熱が分散しやすくなっています。その一方で、医療処置や生鮮食品の梱包といったデリケートな作業に使われるロボットは、多くが優れた絶縁体であるゴム製です。こうした熱を逃がしにくソフトロボットの冷却において、発汗による冷却機能はメリットがあるとのこと。また、汗腺をロボットに組み込むことで、周囲の温度以下に汗腺を冷却できるという点も、ファンによる冷却では達成できないメリットといえます。

汗をかくロボットの欠点として考えられるのは、汗として放出する水を定期的に補充する必要があるという点です。そして、最大の問題として挙げられるのが「汗によってロボットハンドの指が潤滑されてしまい、摩擦が減って物体をつかみにくくなる」というもの。研究チームは、指先にグリップを追加するといった方法で、この問題が解決できると述べました。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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