サイエンス

「組み立てる必要がないロボット」を3Dプリンターから固体と液体で出力


ロボットといえば細かいパーツをいくつも組み合わせた複雑な機構をイメージしますが、ロボットの機構に必要な脚部・油圧ポンプ・クランクシャフトなどのほぼ全てのパーツがロボットとして組み立てられた状態で1台の3Dプリンターから出力されるという、驚異のテクノロジーをマサチューセッツ工科大学(MIT)が発表しています。

First-ever 3-D printed robots made of both solids and liquids | MIT News
http://news.mit.edu/2016/first-3d-printed-robots-made-of-both-solids-and-liquids-0406

世の中では多くのロボットが開発されていますが、漫画やゲームの中に登場する「主人公の周りを飛び回りながらアドバイスなどをくれるようなロボット」は現在も登場していません。この理由のひとつはロボットの組み立てがとても難しいから、とMIT内の研究結果などを外部に発信するメディアMIT Newsは語ります。

人間の手でロボットを組み立てようとすればとても時間がかかるのは明白で、組み立て作業を自動化してロボットにロボットを作成させようとしても、複雑な作業をこなすことができるロボットを作れるような細かい調整はまだ十分に行えないそうです。そこで、「人間でもロボットでも時間や手間がかかりすぎるというなら、3Dプリンターならどうか?」と考えたMITのコンピューターサイエンス&人工知能研究所(CSAIL)に務める研究者が、液体と固体を同時に出力できる3Dプリンターを開発し、これを用いた「組み立てる必要がないロボット」の作成方法を論文で公表しています。

CSAILの研究員であり論文の著者のひとりでもあるダニエラ・ルス氏は「我々が『出力可能な油圧システム』と呼ぶアプローチは、迅速に機能的な機械を組み立てられるようになる大きな一歩となります。あなたがしなければいけないのは、バッテリーとモーターを取り付ける作業だけで、これだけですぐに歩き回ることが可能なロボットを3Dプリンターで作ることができます」と語っています。

実際に論文で語られている「組み立てる必要がないロボット」が、3Dプリンターで出力され動き回る様子は以下のムービーで見られます。

Printable Hydraulic Robots - YouTube


3Dプリンターで何かを出力中。


出力されたのは6つの脚と12個の油圧ポンプを搭載したロボット。取り付けられたスイッチをポチッと押すと……


ロボットは自動で歩き始めました。このロボットはモーターとバッテリーは人の手で取り付けられたものですが、その他は全て3Dプリンターが出力しただけの「ほとんど組み立てる必要がないロボット」です。


「ほとんど組み立てる必要がないロボット」は、液体(青)・固い固体(緑)・柔軟な固体(黄緑)・支持物(黄色)といった具合に、素材の固さや固体・液体といった材質の違いを分けて出力しています。


例えばこれは油圧式のギアポンプ。


これまで、3Dプリンターでギアポンプを出力しようとすれば、複数のパーツを出力して組み立てる必要がありましたが、MITが発明した方法ならば3Dプリンターで即使用できるギアポンプを出力してくれるというわけ。


以下はロボットを脚に動力を伝えるためのアクチュエーター。内部が空洞になっており、片方を押すと片方が伸びるようになっており、これも3Dプリンターで丸ごとこのまま出力できます。


油圧ポンプの動力を脚部に伝えるクランクシャフトはこんな感じ。


これらのパーツは全て組み立てる必要がない状態で出力できるということで、ロボットの組み立てが劇的に楽になるというのが今回の論文のポイント。


さらに、モーターに基板などを取り付ければスマートフォンからロボットを操作できるようにすることも可能です。


同研究では柔軟な素材と液体を利用して……


以下のようにポンプを押し込むことで動作するアームなども出力しています。


これを応用するとこんな感じ。黒色のコの字アームが3Dプリンターで出力されたもの。


これがグッと閉じてあひるの頭をつかみ……


そのまま持ち上げることに成功。


3Dプリント技術の中で液体の出力は他よりも正確性を欠きます。なので、正確に液体を出力するには一度出力した固体を溶かすか、液体を入れたい部分を人間の手できれいに整備する必要がありました。これらは手間がかかる方法なので、これまで液体を利用した動作系は工場レベルの規模でなければ作成できませんでした。同研究では紫外線ライトで凝固する液体と、層ごとに異なる材料を出力することで液体の出力を行っています。

なお、5000ドル(約54万円)以下のデスクトップサイズの3Dプリンター市場は急成長中で、独立系コンサルタントWohlers Associatesの調査によると、2015年には27万8000台もの3Dプリンターが販売されたことが明らかになっています。この調子で3Dプリンターが爆発的に普及していけば「家庭の3Dプリンターでロボットを出力する」ということも十分起こり得るのかもしれません。

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii