難しい本を理解するために効果的な読み方とは?
By photocreo
本を読んだとき、専門的で難しい内容や、著者の主張が難解である場合など、一通り読んでも内容をあまり理解できないという人は一定数存在します。難しい本を読む上で、どのように読めば内容を理解しやすくなるのかを、ソフトウェアエンジニアであるアンディ・マトゥシャク氏と、経済学者であるブラッド・デロング氏が語っています。
Why books don’t work | Andy Matuschak
https://andymatuschak.org/books/
A Note on Reading Big, Difficult Books...
https://www.bradford-delong.com/2019/12/a-note-on-reading-big-difficult-books.html
人が知識を得る手段のひとつとして、本に書かれた文章を読むことが挙げられます。著者はページ上に文章を書くことで自身の考えを説明し、読者は「文章を読む」「著者の考えを理解する」「最後のページに到達し、本を読み終える」という一連の流れで本を読みます。しかし、ほとんどの著者は、文章を読むだけで人が学習できているとは考えていません。
マトゥシャク氏は「読者は文章を読むだけでは知識を得ることはできません。本から知識を得るにはメモを取ったり、他の人と相談したり、本の内容についてのエッセイを書いたりする必要があります」と語っています。なお、本を読むだけで知識を吸収している人も少なからず存在し、そういった人は、「自分たちが何を読んでいるかを本当に考えられる人」であるとマトゥシャク氏は述べています。何を読んでいるかを理解できる読者は、本の内容について「この記述は○○を思い起こさせる」「この主張は○○と競合する」「なぜ○○になったのか?」などと考えながら読むことができるそうです。
「読んだ内容をどのように要約すべきか?」「本の内容に理解できていない点はないか?」「他の本を参照すべきか?」と、読者は本を読んだ後に自分自身の認識を理解しなければなりません。しかし、このような読書方法は簡単には身につけられるものではないとのこと。このようなスキルは「メタ認知」と呼ばれる分野に分類されます。読書を成功させるためには、複雑なメタ認知を意識する必要があります。しかし、多くの大人がメタ認知を欠いていることを示唆する実験が実証されています。さらに、読者がメタ認知そのものを頭で理解していたとしても、実行に移せる人は少数であるという研究結果もあります。読書とメタ認知の両方を同時に行うことは、かなりの労力を要するとされています。
By nd3000
デロング氏は、本の内容を理解することは、学生たちにとっても非常に重要であると述べています。
デロング氏が行う経済思想史の講義では、アダム・スミスの 「国富論」、カール・マルクスの 「資本論」 、ジョン・メイナード・ケインズの 「雇用・利子および貨幣の一般理論」 という3冊の本を読むことを勧めています。専門的な本の読み方を教えることは、大学教育の重要な仕事であるとデロング氏は述べています。大学では修辞学、論理学、文法、算術、幾何学、音楽など、多くのことを教えなければなりません。本を通して学問を教えるにあたり「本に記された理論的な議論や主張をどのように読み取るのか」「どのように利点と欠点を理解するのか」「どのように本の内容を吸収するのか」を学生に身につけさせる必要があるとデロング氏は語っています。
デロング氏は「本を理解するには、『議論とは何か?』を理解し、議論と主張の違いを見分けられるようになる必要があります。まず実際に議論を行い、議論を文字に起こして読んで理解しようとするべきです。また、議論では、結論に対する意見を述べるだけでなく、前提が与えられた場合に、議論に一貫性があるかどうか、前提がどこにあるのかを特定できるようになる必要があります。さらに、議論で反対意見をする場合は、なぜ、どのように反対するのかを明確にすることを学ぶ必要があります」と述べ、読書における議論の重要性を主張しています。
By seventyfourimages
加えて、デロング氏は「国富論の第1巻と第2巻を読むことで、強力な分析的議論を理解することができるでしょう。第1巻と第2巻を理解しなければ、国富論に書かれた思想を理解できません。そして、国富論の第3巻、第4巻、第5巻で、著者のスミス氏が構築した理論体系がどのように利用され、どのように評価しているかを知ることができます。国富論には、スミス氏がある前提から議論を出発させて、それを結論にまで導く過程が記されています。人間性についてスミス氏が考える前提から出発して、市場について独自の論理を持ったシステムを導き出しています」と語っています。
そして、国富論の後、デロング氏の経済思想史コースは資本論と雇用・利子および貨幣の一般理論に進みます。デロング氏が3冊の本を挙げた意図は「マルクスは○○をどう思っているのか?」という質問に答える能力ではなく、「『マルクスが○○についてどう考えていたのか』ということをどう調べればいいのか?」という疑問に学生が行き着くことを大きな目標としているためだそうです。
By garetsworkshop
デロング氏は、難読な本を読む方法として、メタ認知ではなく10段階のプロセスを実施することを推奨しています。以下がデロング氏が定めたプロセスです。
1:著者が本の中で何を語ろうとしているのかを前もって把握しておく。
2:どんな人を対象に書かれた本かを想定し、自分自身が対象の読者となるよう意識する。
3:積極的に本を読んで、重要な部分はノートなどにメモしておく。
4:本に書かれた主張をできるだけ説得力がある明確なものに要約し直す。
5:4でまとめた主張の要約を友人などに話す。
6:もう一度本を否定的な立場で読み返す。
7:本に書かれた主張の弱点が何であるかを理解する。
8:現実と照らし合わせて対して主要な主張や解釈が間違っていないかを考察する。
9:結論を考える。
10:自身の解釈を心に定着させ、将来に生かせるようにする。
この手順を実行することで、読書による学習の可能性を最大限に高めるだけでなく、著者の弱点や盲目さを知ることができ、以前よりも知見を広めることができるとデロング氏は述べています。
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