生き物

人間がミツバチ社会から学ぶべき「意志決定方法」とは?

by Anterovium

遅々として結論が出ない話し合いはよく「会議は踊る、されど進まず」と評されますが、ミツバチが「8の字ダンス」で行う会議には、シンプルかつ効率的な仕組みが隠されているとのことです。

Overcoming Bias : How Bees Argue
http://www.overcomingbias.com/2020/01/how-bees-argue.html

ミツバチは晩春から初夏にかけて、新しく生まれた女王蜂が働き蜂を従えて旅立つ分蜂を行って勢力を拡大させます。この時、新しい女王蜂に付いていく働き蜂は、元の巣にいた働き蜂の3分2にあたる約1万匹にも達するとのこと。新しい女王蜂が従えた群れは、1カ所にまとまって雨風をしのぎつつ、300~500匹の経験豊富な働き蜂をスカウトとして四方に送り出し、新しい巣の候補地を探します。

手ごろな候補地を発見したスカウトは、元の群れに戻ると候補地がある方角や候補地までの距離を表すダンスを踊って、候補地の発見を主張します。群れで待っていた働き蜂は、ダンスの情報を頼りに自分もスカウトに繰り出し、候補地が気に入ったら自分も群れに戻ってダンスをします。なお、候補地の評価基準は、巣として適切な空洞のサイズ、出入口の大きさや位置、壁面の状態などだとのこと。

by Wikimedia Commons

四方に散らばったスカウトがそれぞれ候補地を主張するので、やがて群れの中では、複数の候補地の中から最も素晴らしい候補地を選定する競争が繰り広げられるようになります。スカウトは「候補地の調査」と「群れでのダンス」を繰り返して、自分と同じ候補地を気に入る仲間を増やしていきますが、1匹のスカウトが候補地と群れを往復する回数は、最大でも6回ほど。一部のスカウトは、別の候補地を主張するスカウトに頭突きを食らわせたり、特殊な警告音を発したりしてダンスをやめさせることもあります。

また、候補地を調査中のスカウトは、必ず他のスカウトと接触して、調査中の仲間の数を把握します。一般的に、20~30匹の仲間が同じ候補地に群がっている場合、その候補地が行動中のスカウトの大多数の支持を獲得したことになるため、調査中の仲間が一定数に達したスカウトは、群れに戻って選定の終了を宣言する羽音を鳴らします。こうして、新女王が巣を構える新天地が決まります。


この過程を見ると、ミツバチの位置決定は一応の多数決ではあるものの、頭突きが繰り出されるなどやや乱暴なので、本当に優れた候補地が選ばれるのかについては少し怪しい印象を受けます。しかし、実際に複数の候補地の中から最適な候補地が選定される確率は95%と、非常に正確なものだとのこと。言葉も話せない蜂が、ダンスだけで優れた候補地を決めることができるのには、単純かつ効率的な意志決定プロセスが関係しています。

まず、候補地を調査した各スカウトは、候補地の適性をダンスに折り込んで、自分の候補地がどれくらい優れているのかを宣伝します。実は、この宣伝は少しいい加減で、ダンスが優れた候補地を表現できる確率は80%程度だとのこと。しかし、優れた候補地を支持しているスカウトは、熱心にダンスを行って、地道に支持者を増やそうとします。それなりの候補地を宣伝するスカウトがダンスを行う回数は、全体を通して30回ほどですが、優れた候補地を宣伝しているスカウトは合計で90回ほどダンスをすることもあるとのこと。

by UrosPoteko

そして、最後の決め手になるのが、最も経験豊かな上位3~5%の古参蜂のダンスです。古参蜂たちは、自分自身は意見を持たず、選定の終盤になってから自分の近くにいるスカウトのダンスをコピーします。古参蜂はランダムなスカウトの意見を支持しますが、優れた候補地を支持しているスカウトは高頻度でダンスをするので、優れた意見がくみ上げられる可能性は高いものになります。

Honeybee Democracy(ミツバチの民主主義)」という本から、ミツバチの意志決定プロセスについてひもといた経済学者ロビン・ハンソン氏は、「個々のミツバチは自分の意見を決して変えませんが、優れた意見を発信している時は、より頻繁にその意見を表明します。そして、時間と共に個々の蜂の意見は集約されていき、最も優れた候補地を主張する意見だけが最後に残ることで、選定プロセスは終結します。重要なのは、ミツバチたちが自分の信念を曲げさせられることなく、幅広い意見が最後には1つになることです」と指摘。

ハンソン氏はさらに、「ミツバチの習性が人間にどれほど当てはまるかは分かりませんが、このシンプルかつ素晴らしいやり方は、心に留めておくだけの価値はあると思います」と述べて、ミツバチが合意を形成する方法には、学ぶべきところがあるとの見方を示しました。

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in 生き物, Posted by log1l_ks

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