2020年東京オリンピックでは「ひざまずく」や「拳を上げる」などの政治的意味合いを持つポーズが禁止に
人種差別に抗議するためナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のスター選手が国歌斉唱を拒否しひざまずいたことが2016年に称賛と批判を呼んだことをはじめとし、スポーツの世界では政治的な抗議行動がしばしば見られます。国際オリンピック委員会(IOC)はこのような抗議行動を2020年東京オリンピックで禁止するべく新たにガイドラインを発表しました。
Rule 50 Guidelines Developed by the IOC Athletes’ Commission
(PDFファイル)https://www.olympic.org/-/media/Document%20Library/OlympicOrg/News/2020/01/Rule-50-Guidelines-Tokyo-2020.pdf
IOCによると、このガイドラインは各国の選手が分裂や混乱なくして競技に参加するために設けられたとされています。ここでいう政治的意味合いを持つジェスチャーとは具体的に以下のようなもの。
・サインやアームバンドを使って政治的なメッセージを表示すること
・ハンドジェスチャーや膝をつくことなど、政治的な性質のあるジェスチャー
・セレモニーの慣習に従うことへの拒否
政治的な意味合いを持つジェスチャーとして有名なのは、1968年のメキシコシティオリンピックにおいてアフリカ系アメリカ人選手のトミー・スミス氏とジョン・カーロス氏が表彰台の上で行った行為が挙げられます。2人は黒人の貧困を象徴するためシューズを履かずに黒いソックスで表彰台にあがり、こうべを垂れ、握りこぶしを突き上げました。
by Angelo Cozzi
IOCはガイドラインにより競技場・オリンピック村・授賞式・開会式と閉会式においてこのような行為を禁じており、インタビューやカンファレンスの最中については選手が意見を表明することを認めています。このガイドラインへの違反があった場合、その行動は国内オリンピック委員会・国際競技連盟・IOCによって評価されるとされていますが、具体的な罰則などは規定されておらず、「必要に応じてケースバイケースで」判断されるとのことです。
2019年にペルーの首都リマで開催されたスポーツの祭典パンアメリカン競技大会の表彰式では、フェンシング男子フルーレのレース・インボーデン氏と陸上女子ハンマー投げのグウェン・ベリー氏が膝をつき握りこぶしを上げるなどしてトランプ大統領に抗議を示し、12カ月の保護監察処分とされました。また、2016年にはエチオピア国内の政治弾圧に抗議するためフェイサ・リレサ選手が手錠をかけられることを意味する腕を交差させたポーズでゴールしたことがニュースになっており、さまざまな場面でスポーツ選手が政治的メッセージを発信している様子がみられます。
IOCはガイドラインの発表に際し、「世界の優れた選手が競いながら、同時にオリンピック村で調和した暮らしを送るという例を示すことで、分裂した世界にポジティブなメッセージを送ることができると私たちは信じています。個人的レベルでも世界的レベルでも、オリンピック村や表彰台を政治的・宗教的・倫理的デモンストレーションから解放されたニュートラルな場所にすることが重要だと私たちは考えています」と述べています。
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