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大企業が迅速かつ能率的な意志決定を行えるようになる「RAPID」とは?

by monkeybusiness

Amazonのジェフ・ベゾスCEOの成功の鍵は「素早く判断を下す能力」だとのことですが、ベゾス氏のような人材がどんな組織にもいるわけではありません。そこで、慈善団体向けのコンサルティングを主要事業としている非営利団体Bridgespan Groupが、組織の迅速な意志決定につながる「RAPID」という組織論を提唱しています。

RAPID Decision-Making: What It Is, Why We Like It, and How to Get the Most Out of It | Bridgespan
https://www.bridgespan.org/insights/library/organizational-effectiveness/rapid-decision-making

Bridgespan Groupが提唱する「RAPID」とは、組織による意志決定の要素である「推薦(Recommend)」「承認(Approve)」「実行(Perform)」「インプット(Input)」「決定(Decide)」の頭文字から成ります。これは、意志決定が「推奨・承認・実行・インプット・決定」の順で行われるという意味ではなく、意志決定の各要素ごとの担当者とその役割を明確にすることで、円滑な意志決定を実現するという趣旨だとのこと。Bridgespan Groupに「RAPID」の記事を寄稿したコンサルタントのジョン・ハジェット氏は、意志決定を要素ごとに切り分けることで、誰が意志決定のどの要素に関与しているかを明確化し、組織の目的を効率的に遂行することが可能だとしています。

「RAPID」の導入による成功例の1つが、アメリカで実に40校もの学校を運営している学校法人Aspire Public Schoolsです。Aspire Public Schoolsは設立当初、「RAPID」を採用しておらず、むしろ法人の運営に携わる職員から教育現場の教員に至るまで、全ての従業員がAspire Public Schoolsの運営に責任を持つことをモットーとしていました。Aspire Public Schoolsはこの方法で組織の急拡大に成功し、1998年の旗揚げからわずか8年で17校の学校を設立しました。しかし、組織が大きくなるにつれて、意志決定の責任の所在があいまいになり、組織の運営が行き詰まってしまったとのこと。そこで、Aspire Public SchoolsのCEOであるドン・シャルベイ氏は、「RAPID」の導入を決意します。

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具体的には、以下のような表を作成して、意志決定が必要な案件ごとに各要素の担当者を決めました。例えば、1つ目の赤枠で示した「教材の決定」では、本部のCEO・各地域のヴァイスプレジデント(RVP)及び監督・各学校の校長及び教頭が「I(インプット)」を担当し、最高総務責任者(CAO)が「D(決定)」を担当しています。また、2つ目の赤枠で示した「運営方針の作成と他大学との協定締結」では、委員会が「A(承認)」、CEOが「D(決定)」、中等教育担当ヴァイスプレジデントが「R(推薦)」と「P(実行)」、CAO・最高執行責任者(COO)・RVP・校長が「I(インプット)」を担当することになっています。


シャルベイ氏は「我々は小さな組織であるうちは一丸となって行動できていましたが、当時のやり方は組織の拡大や事業の多角化により維持することができなくなりました。RAPIDを導入したおかげで、それまでよりはるかに説明責任が明確になりました。もし、RAPIDを導入していなければ、我々の組織はとっくに崩壊していたことでしょう」とコメントしています。

ハジェット氏によると、「RAPID」の導入に当たってはいくつかの障害がありますが、適切な対処により乗り越えることが可能だとのこと。例えば、いきなり全ての事業の意志決定を「RAPID」に切り替えようと膨大な案件が詰め込まれた表を作ると、かえって意志決定がまひしてしまいます。そこで、少しずつ意志決定を「RAPID」に置き換えて、有用性を確認しながら導入を進める必要があるとのこと。


「RAPID」の役割分担にも注意が必要です。役割分担が不適切だと、担当者が重責を感じて不安がったり、それまで意志決定を一手に担っていた人から役割を取り上げてしまった結果、疎外感を覚えさせてしまったりするといった弊害が発生してしまうとのこと。そのため、適材適所の人材配置には慎重を期す必要があります。また、「RAPID」はあくまで意志決定の方法論であってコミュニケーションツールではないため、担当者間の連携には別のツールを用意しなければならない場合もあるとのことでした。

ハジェット氏は「『RAPID』の真価は意志決定のプロセスを可視化させることにあります。組織が成長し、より複雑になるにつれて、権限の委任と説明責任の明確化が求められてくるでしょう。そんな場合に、『RAPID』が役に立ってくるのです」と述べて、「RAPID」は大組織に特に有効だとの見方を示しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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