「天才」と語り継がれるクリエイターたちは常に素晴らしい結果を残し続けていたのか?
by Jo Szczepanska
実用的な白熱電球や蓄音機を発明したエジソンや悲劇「ハムレット」を残したシェイクスピアなど、「天才」と評価されているクリエイターたちは後世まで語り継がれる素晴らしい功績ばかり残していると思われがちですが、そんな天才も成功ばかりではなく、実は多くの失敗も経験しているとカリフォルニア大学デービス校教授のDean Keith Simonton氏は指摘しています。
Why Creativity Is a Numbers Game - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/beautiful-minds/why-creativity-is-a-numbers-game/
Simonton氏によると、イノベーションにつながるようなアイデアは試行錯誤を積み重ねるうちに少しずつ進歩していくものであり、新しいアイデアが役に立つものである保証はないとのこと。クリエイティブな成功を収めるためには、複数のプロジェクトやアイデアに没頭する必要があるとともに、高い生産性を発揮し、大量のアイデアや作品を生み出す必要があると述べています。
トーマス・エジソンは、その生涯で1093の特許を獲得しましたが、申請した全特許のうち3分の1は却下されていたそうです。また、エジソンの最盛期である35歳から39歳の間は電灯や配電の研究にいそしんでおり、その間に電池の発明にも挑戦しましたが、失敗に終わっています。実際に電池が発明されたのは20世紀中ごろになってからのことで、エジソンは電池の研究中に研究室の窓が吹き飛ぶほどの大失敗も経験していました。
電池の発明が失敗に終わり、大きな挫折を味わったエジソンは他のアイデアへ方向転換をします。その結果、ジョセフ・スワンが発明した白熱電球を竹製フィラメントを用いて改良し、商用・実用に堪えうる形の白熱電球を生み出すことに成功しました。「エジソンは一時的な障害に直面していても、努力をそそぐ先となる他のアイデアやプロジェクトをいつも持っていたのです」とSimonton氏はコメント。
by John Salzarulo
エジソンのように、何度もトライアンドエラーを繰り返し、数多くの失敗を経験しながら素晴らしい功績を残した天才の事例は他にもあります。著名な戯曲家であるシェイクスピアもその一人です。シェイクスピアはその生涯で多くの戯曲を残しましたが、Simonton氏が行った知名度調査によると、シェイクスピアの代表作である「ハムレット」は知名度100%を記録した一方で、ハムレットと同時期に作られたとされる「トロイラスとクレシダ」は知名度が23%であり、同じくハムレットと同年代の作品とされる「アテネのタイモン」に関しては、知名度が3%しかなかったとのこと。偉大な劇作家であるシェイクスピアでも、全ての作品が広く後世に伝わっているわけではないことがわかります。
全てのクリエイターはその創造物に関わらず、全く同じ方法で物事に取り組むことを避けるような重圧にさらされており、その結果として何度も繰り返し失敗してしまうとのこと。クリエイティブな営みは何かに突き当たるまで繰り返し失敗する過程であり、仮に失敗することがあったとしても、優れたクリエイターはその失敗から学んだ上で成功への道を一歩ずつ歩んでいると述べられています。
by Steve Halama
シリーズ累計発行部数4億5000万部を超える世界的ヒット作「ハリー・ポッター」シリーズも、最初のシリーズは複数の出版社から出版を拒否されたことはファンの間で有名ですが、その「ハリー・ポッター」シリーズの産みの親であるJ・K・ローリングは「人生に失敗はつきものです。慎重になりすぎて生きた心地がしないような人は、最初から失敗しているのです」と語っています。
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