若くして失敗を経験した研究者は後に成功しやすいという研究結果
By NomadSoul1
キャリアの初期に発表した論文が大きな反響を得られず、「失敗」を経験した研究者のほうが、将来的に成功する確率が高いという研究結果が発表されました。
Early-career setback and future career impact | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-019-12189-3
Science demonstrates that what doesn't kill you makes you stronger: Researchers find that early-career failure promotes future professional success -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/10/191001084008.htm
アメリカのノースウェスタン大学の研究チームは、1990年から2005年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)のR01助成金に申し込んだ研究に関して、支給の可否を決定する「NIHスコア」が「しきい値をわずかに下回って助成金を受けられなかった研究」「しきい値をわずかに上回って助成金を受けられた研究」の2つのグループを追跡調査して、それぞれのグループに分類された研究の著者が、その後に「成功」したかを調べました。
この研究における「成功」は、研究者がR01助成金の申し込み後の10年間「どれだけ論文を発表したか」「その論文がどれだけの被引用数を得たか」で規定されました。調査の結果、助成金を受けられなかった研究者は、助成金を受けた研究者よりも10年間でヒット論文を出版する確率が6.1%高いことが判明しました。
By Pressmaster
研究チームは助成金を受けられなかった研究者がヒット論文を飛ばす率が高いことについて、「助成金を受けられなかった結果、無能な研究者が辞めて、有能な研究者だけが残ったのでは」という仮説を立てました。この仮説を検証したところ、実際に助成金を受けられなかったグループは離職率が10%高かったものの、それだけではキャリアの後半で大きな成功を納めたことに対する十分な説明にはならなかったとのこと。
研究チームの一員であるDashun Wang氏は、「失敗には価値がある」と語っており、「同様の調査を範囲を拡大して行っているが、他の分野の研究者においても、『若くして失敗した研究者のほうが将来的に成功する』ということが立証できる証拠が集まりつつあります」とコメントしています。
・関連記事
若者の科学離れの原因は「失敗することに失敗するから」だという指摘 - GIGAZINE
多くの子どもが投げ出してしまう科学・数学などの勉強が長続きするよう親がするべき大切なこととは? - GIGAZINE
45年にわたる5000人の天才の追跡調査で「早熟の天才」ほど社会的・経済的に成功を収めやすいことが判明 - GIGAZINE
論文の価値をゆがめる「論文の被引用数稼ぎ」の実情とは? - GIGAZINE
「努力は必ず報われる」という教えが与える悪影響とは? - GIGAZINE
科学者はいつでも「自身のベストの論文」を書き上げる可能性を秘めている - GIGAZINE
・関連コンテンツ