約2000年前の時点で1700km以上離れた場所から木材の長距離輸送が行われていたことが判明

by Anna Church

古代ローマに存在した「ローマ帝国」では、建築などに使用される木材が想像をはるかに超える長距離から輸送されていたことが最新の研究により明らかになっています。

Dendrochronological evidence for long-distance timber trading in the Roman Empire
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0224077

Long-distance timber trade underpinned the Roman Empire's construction - The Archaeology News Network
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2019/12/long-distance-timber-trade-underpinned.html

イタリアの国立研究評議会で働く研究者のマウロ・ベルナベイ氏が、オープンアクセスの査読つき科学誌であるPLOS ONE上で論文を発表し、ローマ帝国時代に木材が長距離輸送されていたことが明らかになっています。

古代ローマの建築物や船などに使用されている木材の種類は非常に多く、ローマ帝国周辺のさまざまな場所から木材が集められ、建築や造船、さらには燃料として使われたと考えられています。ベルナベイ氏ら研究チームは、古代ローマ時代の木材とされるもののうち、非常に保存状態のよいオーク材24本を調査しました。なお、調査対象となったオーク材は、2014年から2016年にかけてローマで地下鉄建設中に発掘されたものだそうです。

以下の地図の赤枠部分が調査対象となったオーク材が発掘された場所。

調査に使用されたオーク材は、イタリアの首都ローマにあるサンニオ通りにかつて存在した邸宅の庭園にあった柱廊の一部と推測されています。地中には以下のような形で埋まっていたそうです。

実際に地中から発掘された柱廊の一部の写真が以下のもの。

ベルナベイ氏は各オーク材の年輪幅を測定し、統計的テストを実施することでおおよその年代を予測することで、24本のうち13本の年代測定に成功。さらに、年代測定結果を地中海および中央ヨーロッパにおけるオーク材の基準年代と比較することで、調査対象となったオーク材がどこで伐採されたものかを分析したところ、なんと1700km以上離れたフランス東部のジュラ山脈近くで採取されたものであることが明らかになっています。加えて、年代測定に成功した13本のオーク材のうち、8本は西暦40～60年の間に伐採されたものであることも判明しました。

柱廊に使用されていたオーク材の寸法と1700kmにも及ぶ輸送距離から、ベルナベイ氏は「古代ローマ人(もしくは古代ローマ人と取引していた商人)が、木材を水上に浮かべ、現代のフランスにおけるソーヌ川とローヌ川から地中海を経由し、テヴェレ川を上ってローマまで木材を輸送したのではないか」と予測しています。

以下の赤い丸がオーク材が伐採されたと推定されている地点。そこから青線部分にあるソーヌ川とローヌ川を下って地中海に出て、ローマまで木材を輸送したと考えられています。

ベルナベイ氏はオークの厚板を入手することの難易度の高さから、古代ローマにおける物流組織がかなりのレベルのものであったと推測。さらに、1700kmという長距離輸送が行われていたという事実は、古代ローマ時代にさまざまな地域で頻繁に貿易が行われていたことを示唆しているとのことです。

なお、ベルナベイ氏は「この研究は古代ローマ時代に、フランス北東部の自然に近い森林地帯から、ローマの中心部にまで建設用途で木材が運ばれたことを示しています。そして、輸送に伴って発生する可能性のある障害の多さから、古代ローマ人とその社会が強力な輸送組織を持っていたこと、そして古代ローマにとって木材が非常に重要なものであったことがわかります」と記しています。

by zhao chen