消防士の男性は配偶者より同僚と過ごす方が心安らぐ傾向にある
By Jay Heike
死や重傷など、常に危険と隣合わせである職業のひとつに消防士があります。男性が多くを占める消防士にとって、心安らぐ場所は妻の隣ではなく、同僚のそばであることがベイラー大学の教授、マーク・T・モーマン氏の調査によって明らかになりました。
Firefighters’ job stress and the (un)intended consequences of relational quality with spouses and firefighter friends - Mark T. Morman, Paul Schrodt, Amber Adamson,
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0265407519886355?journalCode=spra&
Firefighters’ Workplace ‘Brothers’ Can Ease Stress of a Dangerous Job, but Protecting Spouses from Knowing the Perils Can Ramp Up Anxiety | Media and Public Relations | Baylor University
https://www.baylor.edu/mediacommunications/news.php?action=story&story=214713
男性が多くを占める消防士にとって、自身の仕事のリスクやトラウマから妻を遠ざけたいという欲求が、精神的にかなりの負担になっている可能性があるとモーマン氏は述べています。
消防士という仕事は、火災による煙や人体に害を及ぼす化学物質、怪我、危険な救助などの危険にさらされています。さらには同僚の負傷や死に直面するといった激しいストレスを抱えることもあります。また、消防士は他の職業と比較して、PTSD、自殺、アルコール依存症、うつ、睡眠障害、喫煙率が高い傾向にあります。
「皮肉なことに、多くの場合、人々が消防士に期待する『保護的』『ストイック』『強い』といったイメージが、消防士の男性が精神的に追い詰められたとき、他人に助けを求めにくくする原因となっています」とモーマン氏は述べています。
モーマン氏が、テキサス州にある消防署に所属する428人の男性消防士のデータを分析したところ、77%の既婚者のうち、結婚期間は1カ月~40年で、消防士の勤続年数は4カ月~41年でした。参加者は、同僚と2か月から45年来の友情を築いていました。
研究を始めるにあたり「消防士が同僚や配偶者と良好な関係にあれば、効果的なストレスの緩衝作用がある」とモーマン氏は仮定しました。しかし、研究の結果、よい仕事仲間との関係は仕事のストレスがいくらか軽減されることが分かりましたが、配偶者には当てはまりませんでした。
By Pressmaster
一般的な男性は、配偶者、友人、同僚、家族からのサポートが強いほど強い免疫を持ち、うつ病が少なく、平均寿命が長くなる傾向にあります。そして、未婚の男性は既婚の男性よりも死亡リスクが約2.5倍高くなっています。
しかし、消防士は一般男性とはかけ離れた生活を送っています。多世代の男性が存在する環境で、連日一緒に生活し、仕事をします。料理、テレビ鑑賞、睡眠、シャワー、掃除など、日常生活的な面でも共に過ごす中で、助け合い、信頼、共感が育まれ、心安らぐ環境が形成されます。
しかし、配偶者に対しては感情や不安を隠したり偽ったりする必要性を感じてしまう消防士が多いとのこと。消防士は強くてストイックであることが望まれますが、それを心がけることが精神的に大きな負担になったり、仕事のパフォーマンスを低下すさせたりする可能性があります。
モーマン氏は「男性同士の密接な友情の中では、自己開示が増え、批判・競争が減る傾向にあります」と述べています。多くの男性にとって、似たような境遇にある人との関係はより身近で、快適に感じられるようです。また、モーマン氏は「女性消防士にとっての配偶者と同僚の関係が、男性消防士と同様に機能するかを調査する必要があります」とも述べています。
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