NASAが2つの車輪で氷の「裏側」を走る地球外生命体探査ロボット「BRUIE」を南極でテスト予定
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は、2019年12月に氷の下の海を探査するための自走ロボット「BRUIE」を南極海にテスト投入することを発表しました。BRUIEは何カ月にもわたって海中で動作することが可能で、将来的には地球外生命体探査での活躍を期待されています。
News | Aquatic Rover Goes for a Drive Under the Ice
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7543
Nasa's Underwater Rover Will Hunt for Life on Distant Ocean Worlds | Digital Trends
https://www.digitaltrends.com/cool-tech/nasa-bruie-ocean-worlds/
木星の衛星であるエウロパや土星の衛星であるエンケラドゥスの地表は分厚い氷で覆われていて、その下には水が存在していることが確実視されています。BRUIEは、氷の下深くに潜り、通常では調べることが難しい地球外深海の酸素濃度や塩分濃度、圧力、温度を調査するためのロボットです。
以下の画像がBRUIE。およそ1メートルほどの大きさであるBRUIEは水に浮く設計になっていて、海を覆っている分厚い氷の裏側を2つの車輪で進んでいくという仕組み。海に深く潜る潜水艦タイプの探査機だと、海流に流されて故障したり行方不明になったりすることも考えられますが、BRUIEは海と氷の境目を動くため、海流に流されてしまう心配が少ないとのこと。
BRUIEプロジェクトの主任科学者であるケビン・ハンド氏は「エウロパやエンケラドゥスを覆う氷地殻は海の『窓』として機能しており、海の中で生命を養うのに役立つ可能性があります。そのため、エウロパやエンケラドゥスに存在するかもしれない生命を探索するためには、分厚い氷の下に単独で潜り込んで調査する必要があります」と述べています。
BRUIEのテストは、2015年にアラスカの湖で行われました。分厚い氷の下で動く様子は以下のムービーで見ることが可能。BRUIEは氷の裏を走りながらライトで海中を照らし、データの測定を行ったり、2つのHDカメラでメタンの噴出が起きている場所を探したりできます。
Buoyant Rover for Under Ice Exploration - YouTube
JPLは、エウロパやエンケラドゥスのように分厚い氷に覆われている地球の南極海を「BRUIEの理想的な試験場」と評価していて、2019年12月から南極海でBRUIEのテストを行う予定と発表しました。研究チームによれば、BRUIEは水中でも自動で安全に電源を切ることができ、調査を行いたい時だけ動作させる仕様になっているとのこと。また、氷の下で数カ月動作し、無線による遠隔操作ができるそうです。
ただし、BRUIEのエンジニアであるダン・ベリスフォード氏は「BRUIEはあくまでも地球上の生命に似たものを検出することしかできません。そのため、地球と全く異なる生命体を認識するのは難しい可能性があります」と述べています。
JPLによれば、NASAはエウロパ探査船である「エウロパ・クリッパー」を2025年に打ち上げる計画を立てており、BRUIEもこの計画の一部となることが期待されています。
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