土星の衛星「エンケラドゥス」で新たな有機化合物が検出され地球外生命の可能性にさらなる光
by Kevin Gill
土星の第2衛星である「エンケラドゥス」は、表面を分厚い氷が覆う星で、氷下の海から水素が検出されたことから「地球外生命が存在する可能性のある星」と考えられてきました。そのエンケラドゥスで新たに有機化合物が検出され、地球外生命の存在する可能性がさらに高まっています。
Low-mass nitrogen-, oxygen-bearing, and aromatic compounds in Enceladean ice grains | Monthly Notices of the Royal Astronomical Society | Oxford Academic
https://academic.oup.com/mnras/article/489/4/5231/5573821
New organic compounds found in Enceladus ice grains
https://phys.org/news/2019-10-compounds-enceladus-ice-grains.html
土星の衛星であるエンケラドゥスには氷状の物質を噴出する間欠泉が存在します。この間欠泉では、2018年に数百個の原子が環状や鎖状に並んだ有機高分子が発見されており、これは地球外生命体の排せつ物である可能性も指摘されていました。これと同じように間欠泉から噴き出す物質を調査する中で、アミノ酸の成分となる新しい種類の有機化合物が検出されたことを、2019年10月にオックスフォード大学の学術誌であるOxford Academicに掲載された論文が明かしています。
エンケラドゥスの間欠泉からは、惑星の核から放出される熱で温められた地下に眠る海水が、水蒸気や氷粒として宇宙に放出されます。これまでの調査から、間欠泉から放出される氷粒は、窒素や酸素を含む化合物であることが明らかになっていました。これらは多くの生命の源となっているため、エンケラドゥスには何かしらの生命が存在しているのではと、研究者による調査が盛んに行われてきました。
今回発見された有機化合物は、地球上では生命の構成要素であるアミノ酸を生成する化学反応の一部として利用されるものだそうです。この有機化合物がエンケラドゥスの地下に存在する熱水噴出孔でも同じように作用し、アミノ酸の生成につながっている可能性があると研究者たちは推測しています。
by NASA's James Webb Space Telescope
今回の発表を行ったのはベルリン自由大学の研究チーム。チームを率いたNozair Khawaja氏は、「正しい条件がそろえば、エンケラドゥスの深海から噴き出すこれらの分子が、地球上で見られる反応と同じものを見せる可能性があります。アミノ酸が地球外生命にとって必要なものかどうかはまだわかりませんが、アミノ酸を形成するという事実は、地球外生命について知る重要な手がかりとなります」と語っています。
土星探査機のカッシーニは2017年にその運用が終了し、土星の大気圏に突入して燃え尽きました。しかし、カッシーニが収集したデータは膨大で、いまだに分析が続けられています。Khawaja氏ら研究チームも、カッシーニのCosmic Dust Analyzerが収集したデータを分析し、エンケラドゥスから放出される氷粒を検出することに成功しました。
分厚い氷の層(CRUST)の下にあるエンケラドゥスの海(OCEAN)に溶解した有機化合物が、水面から蒸発し、氷の層の割れ目(vents)の内側で凍結する様子を図示したイラストがこれ。
研究チームの一員であるジョン・ヒリアー氏は、「我々は小さくて可溶性のある有機化合物を発見しました。これはアミノ酸や他の地球上の生命に必要な物質です。今回の発見は、エンケラドゥスの海には反応性の高い化合物が豊富に存在する可能性を示しており、エンケラドゥスに対して行う生命存在の可能性に関する調査におけるブレイクスルーのひとつとなり得ます」と語っています。
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