幻覚剤「DMT」を使った人の脳は覚醒しながら夢を見ている
ジメチルトリプタミン(DMT)という幻覚剤を使用した人の脳波を測定する実験により、DMTを使用して幻覚を見ている人は「覚醒状態のまま夢を見ている」状態にあることが確認されました。
Neural correlates of the DMT experience assessed with multivariate EEG | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-019-51974-4
Ayahuasca compound changes brainwaves to vivid ‘waking-dream’ state | Imperial News | Imperial College London
https://www.imperial.ac.uk/news/193993/ayahuasca-compound-changes-brainwaves-vivid-wakingdream/
南米のシャーマンが儀式や民間療法で用いてきた伝統的な飲料であるアヤワスカは、幻覚作用のあるDMTや5-MeO-DMTを含んでいることで知られています。
by Apollo
インペリアル・カレッジ・ロンドンのサイケデリック研究センターに勤めるクリストファー・ティンマーマン氏らの研究グループは、13人の被験者にDMTが含まれた生理食塩水を静脈注射する実験を行いました。実験中、被験者には頭に電極が付いた帽子を着用してもらい、脳波を測定しました。なお、13人の被験者のうち、1人は激しく動いてしまい脳波が測定できなかったので、実験から除外されたとのこと。
ティンマーマン氏らが被験者の脳波を分析したところ、DMTを服用した被験者の脳は電気的な活動が著しく変化し、主に目覚めている時の人の脳で多く検出されるアルファ波の著しい低下が認められました。一方、ノンレム睡眠時に頻繁に検出されるデルタ波や、目覚めつつある脳の皮質などから検出されるシータ波は増大していました。
以下の図は、DMTの静脈注射を受けた被験者らの脳波を分析した結果です。横軸が時間、縦軸が脳波の周波数を表しており、色が黄色に近いほどその周波数の脳波が強いことを意味してます。赤枠で囲われた、実験開始後5分間ほどの部分を見ると、アルファ波を表す8~15Hzの脳波が弱くなっている一方で、0.1~3Hzのデルタ波や4~7Hzのシータ波が強くなっていることが分かります。また、図の赤い折れ線は被験者が報告した「主観的な体験の強度」を表しており、被験者が激しい体験をしている時と、脳波が激しく変化している時が一致していることも見てとれます。
ティンマーマン氏は「同じ幻覚剤であるLSDやシロシビンでは脳波全体が弱くなるだけなので、DMTによりもたらされる脳の活動の変化はほかの幻覚剤とは違うようです」と述べています。
続けてティンマーマン氏は「被験者の脳の活動の変化が最も激しいタイミングで、突発的なリズムが出現しており、これは混沌とした状態の中に一定の秩序が生まれていることを示唆しています。こうした脳の活動の変化と被験者の報告から、DMTを使用中の被験者は、起きた状態のまま実際の夢よりも鮮明な白昼夢を見ているような体験をしている模様です」とコメントしました。
以下のイラストは、実験中の被験者が見た幻覚をスケッチしたもの。
論文の共著者であるサイケデリック研究センターのロビン・カーハート・ハリス所長は、「DMTを使用した研究は、脳の活動と意識の関係についての重要な洞察をもたらす可能性があると感じています。今回の小規模な実験は、その最初のステップとなるものです」と述べて、さらなる実験への意欲をのぞかせました。
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