未発見の「ナスカの地上絵」をIBMのAIが見つけ出すことに成功、見つかった143点の地上絵はこんな感じ
ペルーのナスカ川とインヘニオ川に囲まれた高原に描かれた図形や絵「ナスカの地上絵」には、百メートル近い大きさの地上絵もあり、空からでないと全体像の把握が難しいとされています。山形大学の研究チームは10年以上にわたってナスカの地上絵についての調査を行っており、新しく142点の地上絵を発見したことに加え、IBMと協力してAIを用い、未知の地上絵1点を発見することに成功。新たに見つかったユニークな地上絵の数々が公開されています。
ナスカ台地とその周辺部で143点の新たな地上絵を発見 ~IBMのAI(人工知能)技術で地上絵の全体像把握を目指す~
(PDFファイル)https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/files/5115/7380/6345/PRESS_RELEASE_nasca20191115R2.pdf
Archaeologists Seek to Unearth Mysterious Geoglyphs in Peru Using IBM AI and Geospatial Data | IBM Research Blog
https://www.ibm.com/blogs/research/2019/11/nasca-lines-geoglyphs/
Ancient Humanoid-Shaped Nazca Line Discovered in Peruvian Desert | Live Science
https://www.livescience.com/humanoid-nazca-line-discovered.html
20世紀前半から調査が続けられてきたナスカの地上絵は、長さ96mにもなる巨大なハチドリや55mのサルなど、上空から見ないと絵であることにすら気付けないようなものが多数あります。それぞれの地上絵は黒っぽい色をした地表を掘り、その下にある明るい色の岩石を露出されることによって描かれているとのこと。
by Wikimedia Commons
山形大学では坂井正人教授を中心とした研究チームが、2004年から継続的にナスカの地上絵を調査しています。なぜ古代の人々が地上絵を描いたのか、どのようにして描いたのかといった多くの謎が残る一方で、地上絵の分布調査はいまだに不十分だとのこと。ナスカの市街地が拡大するに伴い、地上絵の破壊が進んでいることも問題視されています。
そんな中、坂井教授らは航空レーザー測量などにより得られた、ナスカ台地全域に関する高解像度の画像分析と現地調査を実施。主にナスカ台地西部に分布する複数の小道に沿って、具象的な地上絵が集中的に描かれたという仮説を得た研究チームは、現地調査の結果、新たに人や動物などを描いた142点の地上絵を発見したそうです。
以下のPDFファイルでは、新発見された地上絵の代表例が紹介されています。
代表的な新地上絵
(PDFファイル)https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/files/9315/7380/1009/press2019115_02.pdf
白線の部分が確認された地上絵を表しており、以下の地上絵は「シャチ」とのこと。
「人型」や……
「ネズミと人」
「両頭の蛇と人」
「人間の首」
「魚」
「サル」
「鳥」
「ラクダ科動物」
「人型と首」
「人型と動物」
「ネコ科動物」など、実に142点の地上絵を2016年~2018年の間に確定したと研究チームは報告しています。今回発表された地上絵は全長100mを超えるものから5m以下のものまで、さまざまな大きさだったとのこと。大きい地上絵は比較的新しく西暦100~300年ごろに作られ、小さい地上絵は紀元前100年~西暦100年ごろに制作されたとみられています。
また、研究チームは2018年から2019年にかけて日本IBMと協力し、AIを使って新たな地上絵を発見するという実証実験も行いました。研究チームは機械学習プラットフォームの「IBM Watson Machine Learning Community Edition」上でAIモデルを開発。既存のナスカの地上絵データセットを用いてAIモデルを訓練し、山形大学が持つ航空画像などのデータを分析させたところ、研究者がこれまで検出できなかった地上絵候補を発見したとのこと。実際に研究チームが現地調査を行った結果、全長およそ5mの「人型」地上絵が確認されました。
Archaeologists Seek to Uncover Ancient Geoglyphs with IBM PAIRS - YouTube
AIを用いて発見された人型の地上絵は、縦がおよそ4m、幅が2mほどの大きさ。棒を持って頭に飾りをのせている姿だとみられており、3個の点が目と鼻を表しているのではないかと推測されています。また、この地上絵は小道の付近に分布しているため、一種の道しるべとして描かれた可能性があると研究チームは述べています。
発見されたナスカの地上絵は保存状態がよくないものも多く、河川や灌漑の痕跡、道路などの存在も、地上絵を発見しづらくする一因となっているそうです。今回実証されたように、AIを用いて大規模なデータセットを分析することができれば、より効率的に未発見の地上絵を発見できるようになるとのこと。
今後、山形大学の研究チームはIBMが提供するクラウドベースのAI分析テクノロジーである「PAIRS Geoscope」を採用し、さらに地上絵の捜索を行って行く予定。PAIRSは航空画像、衛星画像、地理的な調査情報といった大規模な複数のデータセットを統合し、人間では不可能な速度で分析することが可能とのことで、調査の進展に期待がかかっています。
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