最強クラスのハリケーンは100年前から3倍以上に増えている

by DarkWorkX

2005年8月にアメリカを襲ったハリケーン・カトリーナでは、死者および行方不明者を合わせて1836人の人的被害と約1610億ドル(約17兆5000億円)相当の経済的損失が発生しました。こうした大規模なハリケーンは、過去100年の間に3倍以上に増加していることが、最近の研究により明らかとなりました。

Normalized US hurricane damage estimates using area of total destruction, 1900?2018 | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/11/05/1912277116

Extreme Hurricanes Are 3 Times More Likely Now Than 100 Years Ago, Scientists Warn
https://www.sciencealert.com/the-most-damaging-hurricanes-are-now-3-times-more-likely-than-they-were-a-century-ago

自然の中でもとりわけ破壊的な影響を及ぼすハリケーンの脅威が、近年に入り激増していることを突き止めたのはニールス・ボーア研究所で気象について研究しているアスラック・グリンステッド氏らの研究グループです。グリンステッド氏らは、アメリカの保険業界が長年蓄積してきた自然災害の被害統計から、1900年～2018年の間にアメリカに上陸した合計240件以上の熱帯暴風雨とハリケーンがもたらした被害の調査結果を抽出し、1世紀の間に起きたハリケーンの被害の移り変わりを調べました。

by Loco Steve

しかし、1900年と2018年とではアメリカの物価や人口も大きく違うため、単純に被害額を比較しても有効な結果は得られません。そこで研究グループは、調査結果に含まれていた被害を受けた土地面積のデータから、ハリケーンが特に壊滅的な被害を与えた地域の総面積である「area of total destruction(ATD)」を割り出し、被害の推移を分析しました。その結果が以下のグラフです。横軸が期間、縦軸がATDの合計を表しており、2000年代に入りATDの面積が激増していることが分かります。

研究グループがハリケーンの規模ごとの被害を調べたところ、ATDが130平方キロメートル以下の「中規模」なハリケーンの数は1世紀の間に140％増加していたことが判明。さらに、ATDが1200平方キロメートルを超す「最大規模」のハリケーンの数は330％も増加していました。

ハリケーンの数や規模が大きくなっているのは、気候変動により海水温が上昇しているためです。温室効果ガスで上昇した気温の93％は海洋に吸収されていると推測されており、この熱が嵐の原動力になっています。イェール大学が主導する気候現象関連情報サービスYale Climate Connectionsの調査によると、海水温が1度上昇するごとにハリケーンの風速は時速15～20マイル(時速約24～32km)上昇するとのこと。

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海水温が上昇すると極地の氷が溶けて海面が上昇するため、洪水のリスクも大きくなります。さらに、ハリケーンが発生している海洋の気温が上がると、大気が保持することができる水蒸気も増加するため、降水量も増加します。また、アメリカ海洋大気庁国立環境情報センターに務めるジェームズ・コシン氏は「過去70年間に熱帯暴風雨とハリケーンの速度は約10％低下している」と発表。海水温の上昇がもたらすハリケーンの移動速度低下により、ハリケーンが同じ場所に長期間とどまるようになり、被害がより深刻なものになっていることを指摘しました。

ハリケーンの脅威が1世紀前に比べて激増していることを明らかにしたグリンステッド氏は、「短期的に見ると、ハリケーンに対抗する方法はありません」と述べて、一度発生したハリケーンの前には人類はなすすべがないことを強調し、長い時間をかけて気候変動への対策に取り組まなければならないとの見方を示しました。