Googleが1年前に「不要だ」と主張した2個目のレンズがPixelに搭載された理由とは？

Googleが2019年10月15日に開催した新製品発表会のMade by Google ‘19の中で、Pixelシリーズ最新モデルのPixel 4が発表されました。Pixel 4にはモーションセンスによる操作や高速な顔認識といった新機能のほかに、iPhoneなどでおなじみのデュアルカメラが採用されていますが、以前にGoogleは「レンズは1個で十分、2個目のレンズは不要」と述べていました。「なぜGoogleは不要と言ったはずの2個目のレンズをPixel 4に搭載したのか？」という疑問について、テクノロジー系メディアのThe Vergeが解説しています。

Google keeps adding Pixel features it claimed it didn’t need - The Verge
https://www.theverge.com/2019/10/17/20916996/google-pixel-4-second-telephoto-camera-lens-headphone-jack

Pixel 4に搭載されたデュアルカメラは、12.2メガピクセルのメインカメラ(広角)と16メガピクセルの望遠レンズという構成になっています。独自開発の「Super Res Zoom」技術を組み合わせることにより、写真の一部を切り取っても、ズームで撮影したかのような高精細な切り取りが可能とのこと。

発表会でステージ上に立ったGoogleエンジニアのマーク・レボイ氏は、デュアルカメラを搭載した理由について「一部の被写体はかなり遠くにあり、望遠レンズは遠くの物体を撮影するのを助けます」と説明しました。これは当然のことのように思えますが、発表会の1年前である2018年10月に公開されたインタビュー記事では、Googleのプロダクトマネージャーが「Pixelに2個目のレンズは必要ない」と述べていたとThe Vergeは指摘。

2018年のインタビュー時点では、すでにAppleがカメラの質を向上させるためにデュアルカメラを採用していました。しかしGoogleは、「Super Res Zoom」技術を使うことで、望遠レンズなしでもズームイン中の解像度アップが可能だと主張していました。1年前はAppleに対抗するような姿勢を取っていたGoogleですが、Pixel 4ではあっさりとデュアルカメラを搭載したのです。

The Vergeによると、ある企業が競合他社のデバイスに存在する機能を軽んじる発言をした後で、自社製品に同様の機能を追加する事例は少なくないとのこと。たとえばAppleがiPhone 7からイヤホンジャックを廃止した際には大きな批判が寄せられ、中にはiPhone 7に穴を開けてヘッドフォンジャックを作るユーザーまで登場しました。

これに対し、Googleは初代Pixelのコマーシャルムービーで、「3.5mmヘッドフォンジャック搭載」であることを強調していました。ところが、2017年に発売されたPixel 2では、こちらもヘッドフォンジャックが廃止されてしまいました。

Google Pixel Phone Commercial - YouTube


以前の姿勢を撤回して新機能を追加した事例はGoogleだけではなく、Appleにもあります。かつてスティーブ・ジョブズCEOは「誰がスタイラスなんか欲しがるんだ！？手に入れてもすぐにどこかにやってしまい、なくしてしまう」と発言し、スタイラスをディスっていました。ところが、2015年にiPad Proが登場すると共に、AppleはスタイラスのApple Pencilを発売し、スタイラスをラインナップに加えました。

ジョブズが大嫌いだったスタイラスがiPad Proの「Pencil」で登場したわけとは - GIGAZINE

また、Samusungは2017年にiPhone XのノッチをからかうCMを作成していましたが、2019年に発売された「Samsung Galaxy A50」にはU字型のノッチが搭載されていました

これらの事例は、企業がハードウェアに変更を加えるには時間がかかるためだとThe Vergeは指摘しています。いくつかの変更はあまりにもコストが高すぎるか、ニッチすぎるか、あるいはユーザーの歓迎しないものだとのこと。ユーザーの要求は時間の経過に伴って変化するもので、当初は批判が絶えなかったヘッドフォンジャックの廃止も、やがて多くのユーザーに受け入れられていきました。こうした変化も加味して、企業はかつて批判した他社の機能を自社製品に追加していくことがあるそうです。

多くの企業は、新製品発表がユーザーにとってエンターテインメントとして受け入れられていると理解しており、巨大な企業がお互いの製品をディスるやり取りを多くの人々が楽しんでいます。この点も、あえて企業が競合他社の製品を批判する流れを作っていると、The Vergeは述べました。