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「個性をバグではなくセールスポイントにする」という新しいビジネス形態「パッション・エコノミー」とは?

by enishirotie

インターネットビジネスの専門家であるLi Jin氏が、UberLyftなどのイノベーションのさらに先にある「パッション・エコノミー」の特徴や、パッション・エコノミーがもたらす新たなビジネスの在り方を論じています。

The Passion Economy and the Future of Work
https://a16z.com/2019/10/08/passion-economy/

Jin氏が提唱する「パッション・エコノミー」の前身となったのが、UberやLyftに代表されるギグ・エコノミーです。アプリを中心としたプラットフォームにより需要と供給のマッチングを完全自動化したライドシェアサービスは、運送業の在り方だけでなく労働者の働き方にもイノベーションをもたらしました。

しかし、Jin氏は「ギグ・エコノミーは『誰もが社長になれる』といううたい文句とは裏腹に、仕事の内容はしばしば単調なものにとどまっています」と述べて、自由でクリエイティブな仕事とは言い難いという側面があると指摘しました。

事実、ライドシェアサービスが普及しているアメリカでは既にギグ・エコノミーの問題点が表面化しており、「単なる労働者の使い捨てである」との理由から法規制が行われるという事態に発展しています。

Uberなどの「インターネットで仕事請け負うビジネス」を規制する法案が可決 - GIGAZINE

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そんなギグ・エコノミーに代わる「パッション・エコノミー」の例としてジン氏が挙げているのが以下のようなサービスで、大きく分けて6つに分類されます。1つ目はAnchorに代表されるようなポッドキャストサービス。2つ目はKnowableSpoonなどの音声ベースの配信サービス。3つ目はSubstackRevueといったニュースレター有料購読サービス。4つ目がTeachableUdemyなどの映像配信サービス。5つ目がVIPKIDなどの子ども向けの学習プラットフォーム。6つ目がTorchのようなプロフェッショナル向けの学習プラットフォームです。


こうしたパッション・エコノミーには以下のような特徴があるとジン氏は指摘しています。

◆専門家でなくても個人でサービスを開始できる
従来は、何らかの配信サービスを開始するには、ソフトウェア開発の知識を活用してウェブサイトやアプリを一から開発する必要がありました。しかし、近年ではコーディングの知識がなくても洗練されたウェブサイトが作成可能なWebflowや、Google スプレッドシートで基礎となるデータを用意するだけでPWAアプリを作ることができるGlideなどのサービスが登場しています。

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「こうしたサービスの台頭により、今やクリエイティブなスキルを元にビジネスを行うのは、企業ではなく個人単位になっています」とジン氏は指摘。新たなプラットフォームの構築が身近になったことを背景に、ニーズに即したビジネスを個人単位で立ち上げることが可能なったことが、パッション・エコノミーの特徴であるとしています。

◆個性はバグではなくセールスポイントになる
従来のプラットフォームは「個性をなくして仕事を標準化するためのものだった」と指摘するジン氏は、「パッション・エコノミーではユーザーから多様性を要求されるため、むしろ違いが強調される傾向があります」と述べています。例えば、ビデオチャットによる学習サービスを実施するOutschoolでは、配信者は独自のカリキュラムを組んだり、生徒やその保護者によるリクエストを参考に授業を展開したりできます。

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個人単位でコンテンツを配信するプラットフォームでは、競合する配信者にユーザーが取られるリスクが常に存在する反面、個性を生かした独自性のあるコンテンツを提供することで、固定客を獲得することも可能です。このため、ジン氏は「学習や家庭教育のように、個人間で長期的かつ双方的なサービスを展開するビジネスに適しているのもパッション・エコノミーの特徴です」と述べています。

◆デジタルコンテンツや仮想サービスが中心
個人単位でビジネスを展開できるプラットフォーム自体は過去にも存在していますが、それらは物的な商品を取引するAmazonShopify、対面でのサービスであるUberなど、物理的な製品やサービスが主な内容でした。


一方、ジン氏がパッション・エコノミーとして挙げた上記のサービスは、いずれもインターネット上で完結するSaaSプラットフォームです。このため、パッション・エコノミーにはサービスの提供者とユーザーの両方にとって「場所にとらわれない」というメリットがあるとジン氏は考えています。

◆継続的にビジネスを育てていく
ジン氏によると、広告や利用料などを利益とする旧来のプラットフォームは1回限りの取引が中心となる一方で、クリエイターの収益の一部を利益とするパッション・エコノミーでは、クリエイターの継続的な成長と成功を後押しするインセンティブが働きやすいとのこと。

例えば、起業家専用の学習プラットフォームのWaldenには、起業家養成プログラムの提供者と起業家とをマッチングするサービスが標準で付随しているほか、小規模教室での教育サービスであるPrendaでは、教師にカリキュラムやPCなどの備品が提供されており、クリエイターが自身の仕事に専念しやすい環境が整えられているとのことです。

by monkeybusiness

ジン氏は「新しいプラットフォームの登場により、起業家は個性と創造性を収益に変えることができます」と話し、個人が自分のユニークなスキルや知識を存分に生かすことができるパッション・エコノミーは今後数年で急成長するだろうとの見方を示しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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