生き物

1日に400kmも飛ぶことができるハゲワシが国境を決して越えない理由とは?

by christels

死肉を餌とするハゲワシは、1日に400km以上飛ぶことができる大型の猛禽(もうきん)類です。そんなハゲワシが、ヨーロッパ西部のイベリア半島では、東側のスペインには多く生息しているのに対して、隣接する西側のポルトガルにはほとんど生息していないことが判明。なぜハゲワシはポルトガルへ飛ばないのか、その理由をまとめた研究論文が発表されました。

Invisible barriers: Differential sanitary regulations constrain vulture movements across country borders - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006320717315550


Un muro invisible se alza entre los buitres de España y Portugal | Ciencia | EL PAÍS
https://elpais.com/elpais/2018/02/15/ciencia/1518707418_741915.html

スペインには、ハゲワシ類が多く生息しています。しかし、生態学者のEneko Arrondo氏は60羽のシロエリハゲワシと11羽のクロハゲワシにGPS搭載のタグを取りつけてその分布を観察したところ、スペインの隣にあるポルトガルに入国したのは2年間でわずか13羽であり、そのいずれもすぐにスペインに戻ってきたことがわかりました。


ポルトガルとスペインの国境は川と渓谷に沿ったものであり、両国の間に気候や地形で大きな違いはありません。しかし、スペインではハゲワシの生息が多くみられるのに対して、ポルトガルではハゲワシをほとんど見ることがないとのこと。


Arrondo氏は、スペインとポルトガルでハゲワシの生息数が全く異なる理由として、死んだ牛の処理が関連していると主張しています。死肉を主な餌とするハゲワシにとって、牛の死体は重要な食糧となります。スペインでは、牛の死体はそのままにされる風習ですが、ポルトガルでは牛の死体はかならず埋めたり焼却したりして処分することが法律で義務づけられています。


ヨーロッパでは、狂牛病問題のため、2001年に死んだ家畜を放置することが禁止されました。しかし、死んだ牛の収集・輸送・廃棄には費用がかかり、また焼却の際に排出される二酸化炭素が気候変動の原因になるとして、スペインでは一部からの猛烈な反対意見が噴出。その結果、スペインでは、都市部から離れた地域であることなど特定の条件であれば牛の放棄が再び許可されることとなりました。

餌となる死肉を求めて、ハゲワシの大きなコロニーはスペインの国境沿いに分布していますが、狂牛病対策によって死肉が不足しているため、生息数は年々減少する傾向にあるのこと。Arrond氏は「EUで行われた狂牛病対策が、自然環境に悪い影響を及ぼしたことが今回の調査でわかりました」とコメント。スペインとポルトガルで自然保護を訴える団体BirdLife Internationalは「国境を越えて衛生政策の足並みをそろえることが野生生物に利益をもたらします」と述べました。

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in 生き物, Posted by log1i_yk

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