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セシウム入り燃料による「プラズマステルス」が可能だった偵察機「A-12」


ロッキード社が開発し、アメリカ空軍で1960年代から1990年代に運用されていた超音速・高高度戦略偵察機「SR-71」は、その独特の機体形状と「ブラックバード」という愛称がよく知られていた機体です。そんなSR-71の前身といえる偵察機「A-12」には、「セシウム入り燃料を燃やして発生したプラズマでステルス化する」というプロジェクトが存在しました。

The SR-71 Blackbird's Predecessor Created "Plasma Stealth" By Burning Cesium-Laced Fuel - The Drive
https://www.thedrive.com/the-war-zone/29787/the-sr-71-blackbirds-predecessor-created-plasma-stealth-by-burning-cesium-laced-fuel

1950年代から60年ごろというのは、数々の検証から「レーダーによる発見は避けることはできない」と考えられていた時代でした。そのさなかの1959年、CIAはロッキードと手を組んでA-12を開発します。A-12は偵察機という役割を果たすために、高速かつ高高度を飛行が可能でありながら、レーダーにキャッチされないようにするための、全体的な形状・レーダー回避機構・電波吸収体塗料などの当時の最新技術が組み込まれた機体でした。

By The National Security Archive

しかし、そんな数々の最新技術を兼ね備えていたA-12でも、マッハ3をはるかに上回るトップスピードで飛行する際に、その巨大なアフターバーナーや排気がどうしてもレーダーにキャッチされてしまうという問題を抱えていました。


この問題の解決策が「プラズマステルス」です。プラズマステルスは、イオン化ガス(プラズマ)がレーダー波などの電波を吸収するという原理を利用したもの。ロッキードはプラズマステルスをA-12に実装するため、イオン化ガスを発生させるA-50という「セシウム添加剤」を燃料に混ぜて、アフターバーナーや排気にステルス効果を与えるという手段を編み出しました。

A-50セシウム添加剤を加えたジェット燃料はその有用性が報告されていましたが、このA-50セシウム添加剤の人やエンジンに対する影響に関する疑問がCIA側から生じます。このニュースを報じているThe Driveによると、基本的な運用にはA-50セシウム添加剤は使用されませんでしたが、特定の任務のために許可された場合にはA-50セシウム添加剤が使用された可能性があるそうです。しかし、実際にA-50セシウム添加剤が使用されたかどうかは機密情報のため「明確にはわからない」とのこと。

機体後方から来るレーダー波は、ステルス化において困難な障害の一つであるため、今日でもプラズマステルスは後方側のステルス性能を高める有用な手法の1つ。A-12ではパイロットやエンジンなどへの影響が問題になったわけですが、巡航ミサイルなどの無人かつ使い捨ての兵器であるならば、プラズマステルスはデメリットを考えなくて済むということになります。

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in 乗り物, Posted by darkhorse_log

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