巨大な火の柱を回転させる火祭りと豪快な花火が目の前で楽しめる「スーパー大火勢」を見てきました
宗教行事や地域固有の文化として日本各地で行われている伝統行事の中には、激しい動きのあったり火祭りなど危険を伴ったりで、部外者が簡単に見に行くことができないものも多くあります。危険が伴う伝統行事でありながらも安全や観光に配慮し、スタジアムや公園でイベントとして行われているものの1つとして、福井県大飯郡おおい町で行われている「スーパー大火勢」があります。いったいスーパー大火勢とはどのようなイベントなのか実際に見てきました。
スーパー大火勢
http://www.wakasa-ohi.co.jp/sp-ogase/
場所は、福井県大飯郡おおい町成海の成海緑地・うみんぴあ大飯です。
◆スーパー大火勢(おおがせ)とは
このイベントの元となっているのは、地元のおおい町で行われている火祭り「大火勢」です。この火祭りは、300年余りの伝統があるといわれ、無形民俗文化財に指定されています。大火勢は火災鎮護と五穀豊穣を祈願して奉納されるもので、長さ14mのヒノキの棹(さお)に横木を5段組み立て木の葉型にし、棹の先端と5段の横木にアシやススキの束を結び付けて火勢棹を制作します。そして、火勢棹に火を点けて山頂に立て、火勢棹を回転させては倒し、起こしては回します。大火勢はこれを数回繰り返し炎が乱舞する豪快な火祭りです。スーパー大火勢はこの大火勢を地域のイベントとして発展させたものです。
スーパー大火勢を若衆が回転させる・大松明を倒すシーンなどスーパー大火勢のダイジェスト版ムービーはこちら。
高さ20mのスーパー大火勢を回転させたり倒したりなどスーパー大火勢ダイジェスト【スーパー大火勢2019】 - YouTube
スーパー大火勢が行われた2019年8月3日15時頃の会場の様子。天気は快晴でイベントの準備が着々と進んでいます。
15時45分頃、イベントの準備風景を見ることができる見学ツアーが行われていました。
見学ツアーでは、スーパー大火勢を間近で見ることもできます。
スーパー大火勢の根元は特別な機具でしっかりと固定されており、白い布で包まれている横向きの長い棒はスーパー大火勢を回転させるための棒です。
そのスーパー大火勢を回転させる棒に、見学者は応援のメッセージを書き込むことができます。
16時55分頃、有料観覧席の開場5分前となりました。ゲートの前にはたくさんの観覧客が並んでいます。
17時、開場となりました。有料観覧席は、区域がいくつかに分かれているものの同一のエリア内では自由に席を選べるため、少しでも見やすい席に座ろうと急いで席に向かいます。
スーパー大火勢が近くに見られる席は、早々に埋まっていました。
19時、地元の創作太鼓チーム大飯ブレイズによる太鼓の演奏が始まり、メインイベント前の会場を盛り上げます。
19時40分、イベントが始まりました。まずは、火渡しの儀としてスーパー大火勢に点火するたいまつに悠久の炎が渡される儀式が行われます。
儀式が終わるといよいよスーパー大火勢に火がつけられます。
ある程度火がついたところで、このスーパー大火勢を立てる作業に移ります。左右に用意されている縄を若衆と呼ばれる集団が引っ張ることでスーパー大火勢が徐々に起き上がっていきます。
「ヤッサー」のかけ声と共に徐々にスーパー大火勢が立ち上がっていきます。真下に居る若衆たちがやけどしないように、放水により水が常に掛けられていました。
「もっとしっかり握って」「もっと声出して」など若頭の掛け声で、はっぱをかけられつつスーパー大火勢が無事立ち上がりました。
いよいよメインの見どころであるスーパー大火勢の回転が始まります。
グループ分けされた若衆が、ヤッサーのかけ声と共に棒を押してスーパー大火勢を回転させます。回転することで、燃えている束に風となって空気が当たり火の勢いが増します。火の勢いを大きくすることから「大火勢」という訳です。
3回転くらいさせたところで、別のグループに交代します。放水も常に行われていますが、この放水に使われている水は、海から組み上げた海水です。
均等に燃やすため、交代ごとに回転方向を反対にします。
2019年、今回から新しい試みとして、スーパー大火勢のイベントの途中に花火が打ち上がることになりました。直径約30cm、花火が開いた際には直径330mにもなる尺玉を2発同時に打つ対打ちと言われる方法で上げます。しかも、この尺玉は芸術玉と呼ばれる日本独特の芸術性の高い玉が使われています。野村花火工業株式会社の光の波紋と呼ばれる花火玉とスーパー大火勢のコラボレーション。
花火有限会社糸井火工の八重芯引先紅青白と回転するスーパー大火勢など、6種類計12発の花火が上がりました。
スーパー大火勢全体に火が行き渡ったところで、最後にスーパー大火勢を倒します。
倒れると同時に仕掛け花火も点火、会場全体が明るくなり歓声が上がりました。
メインイベントは終わりましたが、引き続き「花火と光のページェント」と題した花火大会が始まります。会場の沖合に用意された台船から花火が打ち上がるので、スーパー大火勢の会場でそのまま花火大会を楽しむことができます。
台船から垂直に花火を上げるだけでなく、扇状に花火を打ち上げることでワイドな展開も見られる花火です。
花火大会は約30分間。音楽に合わせ連続して花火を打ち上げるミュージックスターマインが9曲連続で次々と打ち上がり、密度の濃い花火大会となっています。
フィナーレでは音楽を使わず花火の音だけで会場を盛り上げます。フィナーレ花火のムービーはこちら。
音楽を使わず豪快な花火の打ち上げで観客を魅了するフィナーレシーン【スーパー大火勢2019】 - YouTube
大玉が開花し小型花火の連打が始まります。
扇状にこれでもかいう程、連打してから……
いよいよラストと思わせる締めの大玉が上がります。会場から拍手が聞こえてきました。
「これで花火は終わったかも」とひと息ついたところで、ごう音とともに畳み掛ける様に花火が打ち上がり、辺り一面を金色の世界に染め上げます。会場からは、拍手と歓声が一気に沸き起こりました。スーパー大火勢のフィナーレでは、このようにBGMを使わず花火を一気に打ち上げ豪快で派手な演出で幕を閉じるのが定番となっており、見どころの1つとなっています。
スーパー大火勢は、解説や雰囲気を盛り上げるBGMが流れるなど観覧用の演出も考えられておりエンターテインメントとして楽しむことができます。花火大会も火祭りのおまけというようなものではなく、短い時間内に一気に打ち上げるなど内容の濃い花火となっており、フィナーレではあえて音楽を流さず花火本来の爆発音で観客を盛り上げ火祭りの締めであることをしっかりと印象づける演出となっていました。
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