中国のレアアース特許申請数は中国以外を合わせた2倍、レアアース関連技術がはるかに進んでいると専門家が警鐘を鳴らす

by Rayonick

「希土類元素(レアアース)」とは、鉱物中に存在する希少な元素で、電池やモーター、光ディスクの記録層などのエレクトロニクス製品に必須なもの。中国はそんなレアアースの一大産地として有名ですが、その産出量を生かしてレアアースに関する特許を多数取得し、レアアースに関する科学技術で世界最先端になっていると報じられています。

China’s war chest of rare earth patents give an insight into total domination of the industry | South China Morning Post
https://www.scmp.com/business/companies/article/3019290/chinas-war-chest-rare-earth-patents-give-insight-total

レアアースや金融、原子力産業に関するコンサルティング会社ThREE Consultingのジェームズ・ケネディーCEOは「中国がレアアースの特許に関しても著しい成長を遂げています」と語り、中国ではレアアースの生産だけでなく、レアアースを使ったハイテク産業も盛んだと警告しています。

中国が申請したレアアース関連の特許数は近年急増しており、2011年から2015年には中国以外の全ての国を合わせた特許数のさらに倍となっています。以下の画像で、黄色い棒グラフが中国が申請したレアアース関連の特許数。灰色が中国以外が申請した特許数です。「2011-2015(年)」の区間で中国の特許数が爆発的な伸びを見せており、2016年から2018年にかけても中国の申請した特許数は他国を突き放しています。

By PatentManiac,ThREE Consulting

バッテリーに関するコンサルティング会社Adamas Intelligenceのライアン・カスティロックス社長は「他のどの国と比較したとしても、中国はレアアースの特許分野ではるか先を進んでいることに疑いはありません。その理由の1つとして、中国は産出したレアアースを国内で消費するために、研究に注力していることが挙げられます」と語っています。カスティロックス社長は「中国は工業用磁石・モーター・バッテリー・電気自動車のサプライチェーンを構築し、将来的に原材料から完成品までを国内だけで作り上げられるようになる可能性があります」と警鐘を鳴らしています。

中国国内で取得されるレアアースの特許は多種多様です。JL Mag Rare-Earth社は同社が供給する磁石についてレアアースの含有量を減らしながらも磁力を維持できるようになったと発表し、中国国内で3件、アメリカで1件の特許を新たに取得。REMT Groupは宇宙開発技術にも使用されるマグネシウム合金の製造技術に関する特許を中国国内で20件、アメリカで2件保有しています。

By REMT GROUP

レアアースは、DVDプレイヤー・テレビなどの電化製品だけでなく、医療・軍事用機器や石油精製プラントにまで用いられており、現代産業にとって必需品といえる存在です。しかし、世界のレアアースの80％以上は中国が産出しているということが問題視されています。2019年5月、アメリカは中国からの関税を10％から25％にまで引き上げようとしたことを受け、レアアースの価格は38％も急上昇。7月に入って5.5％下落して少し落ち着きを見せましたが、レアアースの価格は政治によって大きく影響を受けるわけです。

ケネディーCEOはアメリカ政府がレアアース精錬施設の創設を主導し、中国からレアアースを輸入するという現状から脱却すべきというロビー活動を行っているそうです。カスティロックス社長は「カリフォルニア州クラーク山脈でのレアアース採掘を2020年までに再開し、アメリカ国内でのレアアース採掘・加工に注力するべきです」と主張しています。