1週間で500万回以上再生されたドウェイン・ジョンソンのクソすぎるCGシーンを最新VFX技術でリアル化するムービー
現代の映像制作において、コンピューターグラフィックスや合成処理で実写映像を加工する「VFX」は不可欠な地位を占めるようになりました。しかし、VFXもクリエイターの力量が問われるものなので、時折「これはちょっと……」と思うようなムービーが作り出されてしまうこともあります。ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンが登場するクソすぎるVFXシーンを、ぶっ飛んだコンセプトながらもクリエイティブなムービーを制作するCorridorDigitalが修正してくれました。
We Fixed The Worst VFX Shot Ever - YouTube
今回の司会進行を務めるのはCorridorDigitalの創設者の1人、ニコ・プリンジャーさん。
ニコさんが「世界で一番最悪のVFXシーンを知ってるかい?」として発表したのが、「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」のドウェイン・ジョンソン演じるスコーピオン・キングの登場シーン。
「もちろん、これが最悪VFX映像トーナメントのチャンピオンってわけじゃない。けど、CG化されたドウェイン・ジョンソンが間抜け面なのは確かだ」
CorridorDigitalのコメント欄には「スコーピオン・キングの見た目をなんとかしてくれ!」という投稿が寄せられまくったとのこと。
というわけで、普段のスケジュールの合間を縫って、たった1日でドウェイン・ジョンソンのスコーピオン・キングを整形するプロジェクトを発足したそうです。
まずはプロジェクトに参加するCorridorDigitalの面々で、問題のシーンを実際に視聴するところから。
問題のVFXシーンは34秒ぐらいからスタート。闇の中に人のものとは思えない影が浮かび上がって……
スコーピオン・キングが登場。しかし、その顔の表情はなんだかのっぺりしています。
登場シーンのひどさにCorridorDigitalの面々の表情が死んでしまいます。
極めつけはアップの際のこの表情。カートゥーンのキャラクターのようにも見えます。
まずは映像のどの部分をよくするべきかのディスカッションから。「スコーピオン・キングの手足のアニメーション自体は素晴らしい、最高だよ。体に当たる光の加減も本当によくできてる」とニコさん。
「けど、人間の顔っていうのは、もうちょっと複雑な技術が必要ってことだ」
「スコーピオン・キングの表情は全く動作と同期しているようには見えない。それが顔つきを不自然なものにしてしまっている」
「このシーンなんかは、顔の右半分は幸せそうな表情だけど……」
「左半分は怒ってるよ」
「実際にカメラの前でアクションしてる他のキャストに比べて、スコーピオン・キングが浮いてしまっているのも問題だね」
「ここのシーンだと、背景として炎が置かれる中のアクションシーンだから登場人物は汗をかくほどだ。そのせいで肌がテカるのが自然なんだけど……」
「スコーピオン・キングはまるで蝋かプラスチックみたいな肌の質感になってる。人の肌には色のムラとか光の当たり方の濃淡とか汚れが見えるけど、スコーピオン・キングの肌はスムーズすぎてのっぺりしちゃってるね」
「ここの部分では、他のキャストとスコーピオン・キングに当たってる光が違うな」
「炎が光源なせいで、こっちの人にはものすごく熱い光が当たってるように見える」
「一方で、スコーピオン・キングに当たっている光からは温度が感じられない」
洗い出された問題点をメンバーがそれぞれの得意分野を生かして直します。「サム、キミの担当は?」とニコさん。
サムさんは「俺はまずスコーピオン・キングの重量がもっと感じられるようにするよ。そして、スコーピンキングが実際の背景にもっとマッチするように光の当たり具合を書き直す予定さ」と回答。
「このシーンにおける唯一の光源のはずなんだけど、炎は全く重きを置かれてないね」とピーターさんが語ります。
「僕は光源効果を再計算し直して、まるで炎からの光が実際に人や物に当たってるようにしてみせるよ」
クリントさんは「このシーンはスコーピオン・キングが古代の扉から出てくるんだけど、これって古代の扉に見えないよね」とコメント。
「僕はスコーピオン・キングがこの扉に触ったときに、エジプトの亡霊どもの遺灰が扉からこぼれ落ちるかのような『古さ』を加えてやる」
ニコさんはPS2のゲームに登場するようなスコーピオン・キングの表情を改善する予定とのこと。
「どうやって表情を修繕するかは決めてある」と自信満々の様子。
メンバーはそれぞれ仕事道具を持って……
プロジェクトがスタート。
メンバーはそれぞれの作業に没頭します。与えられた時間はたったの1日。
作業内容の細かい解説もありました。サムさんはまず元のシーンでスコーピオン・キングの動きがスムーズ過ぎたことを改善するため、映像に揺れを追加したとのこと。
ライティングもサムさんの担当です。「人の顔っていうのはツヤ消しなんてされていないんだ。スコーピオン・キングは長い間地下墓地に閉じ込められていたんだから、顔も洗えてないし脂ぎってるはずさ。そういう肌に炎の光が当たると白くなる」
「さらに肌の質感をのっぺりさせないため、『ムラ』を加える。ノイズを肌にのせると、人間の肌の自然な粗さが表現できて、だいぶ良くなるよ」
ニコさんの担当パートはスコーピオン・キングの顔の表情をなんとかすること。
その手法とは機械学習を使ったリアルタイム映像合成技術「ディープフェイク」を活用するというもの。DeepFakeを活用するためには元となるさまざまな表情の顔データが必要です。
しかし、「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」が撮影された2000年~2001年ごろのドウェイン・ジョンソンの顔と2019年の顔はだいぶ変わっているので、2019年時点の素材をスコーピオン・キングに合成すると不自然になります。
ニコさんが思いついた解決策とは、2002年に公開された「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」のスピンオフ映画「スコーピオン・キング」のドウェイン・ジョンソンの表情を使うというもの。この映画は「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」の前日譚的位置づけの作品であるため、問題のシーンとメイクなどが共通。しかも、映画スコーピオン・キングでのドウェイン・ジョンソンの表情はCGを使わない自然なものと、今回のムービーに合成させるのに最適な条件が揃っています。
ニコさんは合成素材にするべく、映画スコーピオン・キングからドウェイン・ジョンソンの顔部分を全て抜き出したとのこと。それらの顔シーンをディープフェイクに読み込ませてムービーに合成しました。
おのおののメンバーの成果を合わせて完成した、スコーピオン・キング登場シーンの修正版はムービーの9分15秒からで、以下をクリックするとすぐに見ることができます。
We Fixed The Worst VFX Shot Ever - YouTube
古代の扉をたたき付けながら登場したスコーピオン・キングの顔は人間さながら。
その肌のテカリ具合は、まるで実際の人間に炎からの光が当たっているよう。
そして何より注目すべきはその表情の動き方。目を細めて凝視したり、目を剥いたり、鼻で笑うかのような尊大な表情の移り変わりがすごくスムーズになっています。
追加されたBGMは「恐ろしい何かが闇の底から現れる……」ということをバッチリ表現できています。古代の扉を押し開ける際の埃やカメラの揺れはスコーピオン・キングの体重と力強さが映像から浮かび上がってくるようです。
炎からの光も計算され直されています。
オリジナル(左)と修正後(右)を並べてみるとこんな感じ。顔のグラフィック、肌のテカリ、表情などが別物だとハッキリわかります。
「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」は2000年頃制作で、その当時にはディープフェイクなどのVFX手法はありませんでした。今回のムービーは、CorridorDigitalのメンバーの腕の良さを示していると同時に、この20年で映像業界にかなりの技術進歩が起こっていることを表しているといえます。
CorridorDigitalはこのほかにも、ボストン・ダイナミクスのロボットが人類に反撃するムービーなどVFXを使った奇抜な発想のムービーを多数公開しています。
500万回以上再生されたボストン・ダイナミクスのロボがついに人類へ反撃を開始するパロディムービー - GIGAZINE
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