生き物

南北4kmの広大なセントラル・パークの全リス数を調査した史上初のレポートが公開へ

by Photography by Becky Winner

アメリカやイギリスなど海外の公園にはリスが数多く生息しているのを見かけますが、ニューヨーク市の観光名所である広大なセントラル・パークの中に一体どれほどのリスがいるのか?という疑問に答える大規模な調査が、科学者・デザイナー・作家、そして300人のボランティアによって実施されました。「都市」に焦点を当てたメディアCityLabで、そのあまりにもユニークな唯一無二の調査内容が明かされています。

The Squirrel Census
https://www.thesquirrelcensus.com/

How Many Squirrels Are in NYC’s Central Park? - CityLab
https://www.citylab.com/life/2019/06/squirrel-census-results-population-central-park-nyc/592162/


アメリカ・ニューヨーク市のマンハッタンに広大な敷地を誇るセントラル・パークがリスだらけなのは有名な話。しかし、南北4km、東西0.8kmの敷地内にどれほどのリスがいるのか?という疑問の解明には、これまで誰も取り掛かりませんでした。そこで、作家のJamie Allen氏は野生動物の専門家、科学者、デザイナーたちを召集し、300人ものボランティアの手を借りて、史上初めての「リス人口調査」を実施することにしました。

「世界で最も有名な公園」ともいえるセントラル・パークの調査は、まさに「究極のチャレンジ」だったとのこと。調査チームはただ単純にリスの数を数えるのではなく、リスの生息場所や毛皮の色、集団を作っているのかどうかといった点をユーモアを交えて調べていきました。


この結果、まず判明したのは、セントラル・パークで暮らすリスの数は全部で3023匹で、うち81%にあたる2472匹は黒・白・シナモン色のハイライトが入った灰色の個体だということ。全体的にシナモン色の個体は393匹で、103匹が黒色。毛皮の色は総じて21種類が観測されたとのことです。

ボランティアがリスの行動を記録したところ、その多くは「走っている」「登っている」「食べている」といったものでしたが、中には「アクロバティックに木の枝から逆さにぶら下がっていた」「退屈していた」というユーモラスな内容もつづられていました。

by Kylli Kittus

ジョークのような内容も含まれる調査結果ですが、科学的な側面ももちろん存在します。Allen氏は調査の初期段階で、リスの数をカウントする方法を求めて、当時エモリー大学で都市疫学を研究していたDonal Bisanzio氏に声をかけました。というのも、リスは「一個体を一度だけ数える」ということが難しかったためです。

Bisanzio氏の指示のもと、Allen氏はセントラル・パークを350ヘクタールごとの区画に分割し、国勢統計区のように捉えていきました。ボランティアは区画ごとに朝1回、夜1回の計1日2回カウントを行ったとのこと。そして、木を上から下まで見たり、リスの立てる音に耳をそばだてたりしてカウントした数を、1950~60年にリス生態学者であるVagn Flyger氏が発表した人口計算式に当てはめて全個体の「推定数」を算出しました。この計算式には過カウント・非カウントといったリスの「不確実性」も含まれています。

次に、一般の人にデータをわかりやすく示すためにグラフィックデザイナーのNat Slaughter氏が2年かけてデータを可視化。リスの生息数を表したセントラル・パークのマップは2つ作られ、このうち1つは公園内の起伏や橋、アーチ、連結通路、噴水、彫像といった「地形」に着目したものでした。マップ作成のためにSlaughter氏は公園内でスケッチやノートをとることに多くの時間を割き、それをコンピューターに入力していったとのこと。この結果、市が公開しているマップには、実際には存在しない「ファントム・ヒル」が存在することもわかったそうです。市のデータはLIDAR技術によってドローンや飛行機から撮影したデータをもとに作られているため、「ビルの影を丘と認識間違いする」といいったミスで間違った地形が記録されていたのです。

以下がセントラル・パークの全景を捉えたマップ。公園のマップが最後にアップデートされたのは1994年であり、このマップは記事作成時点で最も公園内を包括的に捉えたものとなっています。


そして、以下が2つ目のマップ。リスの居場所や人口、密度などを示しています。


このようにして完成に至ることになったリス人口調査マップによって、セントラル・パークを訪れる人は、これまでとは違った体験をすることが可能になるとのこと。公園内をジョギングすると、地図を見るまでは持たなかった視点を持ち、リスの立てる音に耳を傾けるようになる、とAllen氏は述べています。

Allen氏はこの調査について「学術研究ではない」と述べ、「仮説を証明したわけでも反証したわけでもない」という姿勢を示しています。一方で、収集したデータは今後、ニューヨーク市に対して公開するとのことです。

なお、調査結果や作成されたマップは「CENTRAL PARK SQUIRREL CENSUS 2019 REPORT」として購入可能。価格は75ドル(約8000円)となっています。

Central Park Squirrel Census 2019 Report / Squirrel Census
https://squirrelcensus.bigcartel.com/product/central-park-squirrel-census-2019-report

CENTRAL PARK SQUIRREL CENSUS 2019 REPORTはマップ2つの他に37ページにわたる補助的データ、実験的サウンドトラック、ポストカードなどを含みます。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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