サイエンス

動物の進化は人間が作り上げた「都市」によっても影響を受けている

By Fred Faulkner

チャールズ・ダーウィンが記した「種の起源」の中では、生物は自然選択によって常に環境に適応するように変化し、種が分岐して多様な種が生じるとされています。この書籍が書かれたのは1800年代半ばのことですが、それから150年以上が過ぎた現代では、生き物の中には都会のビルの中の環境に即した種へと進化を遂げてきているものも存在しています。

Darwin comes to town: how cities are creating new species | Cities | The Guardian
https://www.theguardian.com/cities/2018/jul/23/darwin-comes-to-town-how-cities-are-creating-new-species

シンガポールでよく見かけられる鳥「ジャワハッカ」は、1925年頃にインドネシアからペットとして持ち込まれ、「モノマネの達人」として人気を集めました。それからおよそ100年が経とうとする2018年、ジャワハッカは個体数を大きく増やしてシンガポールの人口に匹敵する規模に拡大しています。

また、インドやアフリカからロンドンに持ち込まれたインコの一種「パラキート」は鮮やかな羽の色を持つ鳥で、20世紀にヨーロッパ中でパラキートの取引が行われたことで各国に広まりました。1974年にベルギー動物園のオーナーは「ブリュッセルの街にもっと色を」という狙いで40羽のパラキートを放ちました。そして約40年後、今や街に住むパラキートは3万羽を超えているといいます。


このような経緯で、人間は多くの動物を街の中に持ち込んできました。最初は野性の習慣で生息してきた動物たちですが、何十年という時間が流れるうちに都会の環境に順応した個体が生き残り、元来の姿とは少しずつ異なる種へと変化を遂げています。

その例の1つが、日本の仙台で確認されたカラスです。カラスは鳥の中では知能が高い種といわれていますが、仙台で見られたカラスは都会ならではの知恵を身に付けています。硬い殻に入った木の実を食べることは、大きなクチバシを持つカラスであっても容易なことではありません。そこでカラスは、硬い殻に入ったままの木の実を道路に置き、自動車に踏ませることで殻を割って中身を食べるという知恵を身に付けました。


また、ウイーンに住むクモの中には、夜間に照明で照らされる橋桁に巣を張る種が存在します。クモは一般的に昼間に活動する生き物ですが、夜に照明で照らされる場所にワナを仕掛けることで明るさに引き寄せられた虫を一網打尽にして食料にするという方法を編み出しました。この方法で、ウイーンのクモは通常よりも4倍も多くの餌を得ているとのことです。

都市の環境による影響は、生き物の行動だけに及んでいるというわけではありません。都市化により、動物そのものの特性が変化していることも明らかになっています。

アメリカの研究者は、1980年代にコンクリートでできた高速道路の橋桁に住む習慣を身に付けたサンショクツバメの羽の長さが、10年で平均約2mm減少したことを発見しました。また、路肩で死んでいるサンショクツバメの羽の長さを調査したところ、生き残っている個体よりも平均して0.5cm長いことが明らかになっています。

一般的に、鳥の羽の形は生活様式に密接に関わっています。短く丸い羽根は急激な方向転換や短い時間で飛び立つのに有利である一方、長く尖った羽根はより速いスピードで一直線に飛ぶことに向いています。つまり、多くの自動車が走る高速道路の近くで暮らすためには、長い羽根を持つことよりも短い羽根を持つことで小回りの効く飛び方ができる方が生存上は有利であることが、サンショクツバメの特徴の変化から裏付けられているというわけです。

By Don DeBold

他の鳥よりも顕著に「都会化」していることが確認されている鳥、それは「クロウタドリ」と呼ばれる鳥です。この鳥は別名「ブラックバード」とも呼ばれる真っ黒な鳥で、ザ・ビートルズの楽曲「ブラックバード」の歌詞で「Blackbird singing in the dead of night (ブラックバードが真夜中に歌っている)」と歌われるとおり、夜が明ける前から鳴き始めるという習性を持っています。


以前は山や森で暮らし、夏と冬で住む場所を変える習慣を持っていたクロウタドリですが、都市が出現するようになると住みかを都市の中に求めるようになり、一年中同じ場所に定住するようになりました。また、以前は夜明けと同時に鳴き始める習慣を持っていたクロウタドリですが、都市に順応するようになると鳴き始める時間が徐々に早くなってきたとのこと。これは、朝になって路面電車や自動車などが動き出すことで鳴き声が掻き消されるのを避けるためで、近年では夜明けの2~3時間前に鳴き始めるようになったそうです。

さらに興味深いのは、鳴く時の「トーン」も変化しているという事実。それまでのクロウタドリに比べ、都会に住むようになったクロウタドリの鳴き声はより高くなったといいます。これはもちろん、都会にあふれる騒音の中でも確実に鳴き声を届けるためにクロウタドリが「進化」した結果です。

都会に合わせて生活パターンや鳴き方を変化させたクロウタドリですが、繁殖のパターンにも変化は及んでいます。かつて回遊的な生活パターンを持っていたクロウタドリは、新たな住みかを定めてからようやく繁殖活動に入ることができました。しかし、都会に住み着くようになって夏と冬で住む場所を替えなくなったクロウタドリは、その時期が訪れるとすぐに繁殖活動に入れるようになったため、野山に暮らすクロウタドリに比べて繁殖時期が一カ月程度早くなっているそうです。


一般的に、生物の進化には非常に長い時間がかかります。そんな中で今回のクロウタドリのような生き物は数十年という通常よりも短い時間で従来とは全く違う特徴を持つように変化してきているというわけです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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