取材

西川口の「ニューチャイナタウン」には受け止めるしかない現実があった


埼玉県川口市の西川口駅周辺はチャイナタウン、外国人が多い街として近年各種メディアで話題となっています。だから、興味があって訪問してみましたが、なかなか強烈な場所でした。特にゴミ集積所(ゴミステーション)は異様で、息を止めたくなります。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。西川口は中国に迷い込んだかのようでハイテンションになりました。でも、これは旅行者の視点で、ここに住むとなれば正直考えてしまいます。男性の一人暮らしならまだしも、女性や子育てにはどうかと思うような環境でした。

◆西川口駅西口の駅前
埼玉県南東部にある川口市は、県庁所在地のさいたま市に次ぐ県内2位の人口約60万人を抱える中核市です。首都圏という人口密集地に埋没して日ごろ目立つことはありませんが、鹿児島市とほぼ同じ人口を抱える大きな市で、荒川を隔てて東京都区部と隣接しているため、東京のベッドタウンとして栄えてきました。その川口市内を南北に縦断する京浜東北線にあるのが西川口駅。記事を書くにあたって、2018年11月(夜)と2019年2月(昼)の2回訪問しました。


西口を降りてすぐ駅前のロータリーに乱横断禁止という注意書きがありました。「乱横断」とは横断歩道のないところで道路を横断すること。


西口駅前の商業ビル。4Fの表記は中国語だけですがネットカフェです。


上記の商業ビルは10Fにもネットカフェが営業しています。24時間2400円と格安です。


また、昔に比べるとだいぶ数は減ったようですが、西口駅前には未だに風俗店はあるようで、こうした無料案内所の看板も大きく掲げられていたりしました。夜にも訪れたことがあるのですが、そのときは客引きのおじさんが路上に立っていました。


◆ニューチャイナタウン
西川口駅の西口一帯は近年新しくできた「ニューチャイナタウン」として各種メディアで話題となっています。かつての西口一帯は風俗業が盛んな場所でした。しかし、2004年に埼玉県警が西川口を「風俗環境浄化重点推進地区」として指定。それから取り締まりが厳しくなり、大半のお店が廃業に追い込まれます。こうした風俗店の撤退と入れ替わる形で中華系の飲食店や商店が入居していき、今にいたるという訳です。実際に街を歩いてみると、あちらこちらで中華料理店や中華商店がお店を構えていて、さながら中国を旅しているかのようでした。

本場の中華料理が出てきそうな飲食店。料理の写真に食欲をかき立てられます。


こちらはシンプルデザインの中華料理店で、日本の街なみにも違和感なく溶け込んでしました。


立て看板ではなくライトを使ってお店の前をアピールしています。こういった案内も初めて目にする光景。


中華料理ばかりでなくタイ料理のお店も営業していました。


中国語カラオケもありました。ここ数年は中国語の音楽ばかり聞いているので、かなり気になります。


閉鎖されいていましたが「自由国土」という名前のネットカフェもありました。スタイリッシュな1階入口とゲームシーンで覆われた色褪せた2階の窓は、実際の中国にもあったような光景で、昔の旅を思い出しました。ビリヤード、eスポーツ、ボードゲームも楽しめる場所だったようです。


◆注意書き
駅前の乱横断禁止もそうですが、他にも治安が心配になる注意書きがありました。

「要注意!!外国人と思われる女性による道端でのスリ行為」。何かと物議を呼びそうなポスターですが、これもまた西川口の現実。


「・多数人が群がる ・深夜帯における大きな声の会話 は、ご遠慮願います」。日本語、英語、中国語(簡体字)、ベトナム語、トルコ語の5ヶ国語による表記。他の場所にもこの張り紙はあったので、特定の場所じゃなく地域一帯の問題なのでしょう。


西川口駅東口も歩いてみましたが、こちらは西口と違って普通に穏やかな街のようでした。中華系の飲食店や商店も何軒かありましたが、西口のようにチャイナタウン化することはなく、お店は点在しています。

東口から見たJR西川口駅。


◆ゴミ出しマナー
西川口で何より衝撃だったことゴミ出しマナーでした。ゴミ集積所は見るに堪えない状況。収集日前日、日が沈むような時間帯ですらないのに赤ん坊をベビーカーに載せた女性はポイとゴミを置いていきました。これも西口周辺で見られる光景でした。

駅前の路地裏にあった不法投棄禁止の呼びかけ。ゴミを置いていかれないように工事現場でみかけるバリケードが設置されています。


それでも放置される一斗缶、電子レンジ、電気式酒燗機。主に粗大ゴミが不法投棄される場所のようです。


別の日の夜ですが、ここには大きなソファーが重ねて放置されていました。


一般ゴミもひどい状況でした。決められた日の「朝8時30分までに」という注意書きはありますが、収集日前日の夕方前の明る時間帯でこの有り様。西川口1~6丁目のゴミ収集日は火曜日と金曜日で、写真を撮ったのは月曜日の15時です。


こちらもゴミが山積み。


行政による不法投棄絶対禁止の意気込みとは裏腹に、積み重なってしまったゴミの山。ペットボトルや空き缶もビニール袋からは透けてみえ、分別も守られていません。日本語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、ハングル、タカログ語、英語、トルコ語、スペイン語、ポルトガル語と9つの言葉の表記がありました。


道路の反対側がゴミ集積所なのですが、公園の前にもゴミが放置。


こうしたゴミ捨てマナーに問題のある場所に建つマンションでは、自然と注意書きも多くなります。入居者以外の人がゴミを捨てていくようです。


とあるビルの「防犯カメラ録画中」「ゴミお捨てるな」という警告。雑に貼られたガムテープがさらに不安を煽ります。


西川口駅の西口と東口をつなぐ跨線橋には煙草の吸い殻が散乱。


路上に駐輪された自転車のかごの中に酒瓶が置いてあることもありました。


◆他の場所では
「もしかしたら、日本のゴミ捨てマナーは自分がこれまで目にしてきたところが特別良かっただけで、西川口ぐらいが標準なのかもしれない」と、これまでの自身の常識を疑いましたが、別の機会に他の街のゴミ集積所にも注目してみるとやはり違いました。普通にきれいに運用されていました。

相模原市のとある場所では同じ黄色のネットでも全くゴミがありませんでした。ゴミ収集日は水曜日で、撮影したのは収集前日・火曜日の17時なので、条件は西川口と同じです。


愛知県のとある市は、収集前日ではないので撮影条件は違いますが、きれいなゴミ集積所です。


ただし、「西川口のゴミ捨てマナーが悪いのは外国人が多いから」というのは、また違うと思っています。事実、東京の工場で働いていたときに住んでいた民間のアパートのゴミ集積所が、これまたひどい状況でした。収集日なんて関係なくゴミを捨てたいときに捨てに行くスタイル。しかも「市指定のゴミ袋を使わない」「分別ができていない」ということで、ゴミは収集されませんでした。しかしゴミは増え続けるので、ゴミ集積所の外にまであふれ出します。粗大ゴミもシールを貼らずに放置されていました。夏場に大きなゴキブリがアパートの共用廊下をサササッと走っていったのはこうしたゴミのせいでしょう。部屋にまでやってきたこともありました。だからといって、住人に外国人が多いといった感じもしませんでした。たとえ日本人でもそこで暮らす人によってはゴミ集積所がめちゃくちゃになります。

目も当てられない東京のアパートのゴミ集積所でしたが、2カ月に1回くらい誰かしらやってきて作業していくので写真のような普通の環境にリセットされます。しかし、住んでいる人は変わらないので、すぐに荒れたゴミ集積所に戻ってしまうのでした。


治安が心配になる注意書きに見るに堪えないゴミ集積所と、西川口は格差社会の貧しさが行き着く先のように見ました。外国人が多くなるのは彼らが日本の低賃金労働を担っているため。日本は日本人の貧しさを放置したまま、その埋め合わせに低賃金で働く外国人を増やしてきました。貧しさは変わらないのにマナーだけ向上するなんてあるのでしょうか。結果、日本人と外国人の対立が深まっただけではないでしょうか。日本が多文化共生の社会を目指すのであれば、日本人であれ外国人であれ貧しい人を減らすべきだと私は思っています。

また、西川口では在日中国人の方々を中心とした「西川口ピカピカ隊」という清掃ボランティアの案内も告知されていました。ここで暮らす人たちがこの場所を変えていこうとしていることも見逃してはいけません。


いろいろ考えさせられる西川口訪問でした。知らなかっただけで、これもまた現実として受け止めるしかありませんでした。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
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DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/)

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in 取材, Posted by logc_nt

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