サイエンス

死後4時間経過した豚の脳機能を回復させることに研究者が成功

by Hey Paul Studios

人間を含めた哺乳類の脳は、血流が止まったり酸素レベルが低下したりすることに対して弱く、酸素と血液の供給が途絶えると意識や脳の電気的活動は数秒で消滅、細胞活動も数秒から数分で終了します。しかし、エール大学の研究者が、死後4時間が経過した豚の脳において、止まったはずの細胞活動が再開した様子を観察したことを報告しています。

Scientists restore some functions in a pig’s brain hours after death | YaleNews
https://news.yale.edu/2019/04/17/scientists-restore-some-functions-pigs-brain-hours-after-death


Restoration of brain circulation and cellular functions hours post-mortem | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1099-1

死後4時間、細胞活動観察=食用ブタの脳で-米エール大:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019041800079&g=int

脳内の細胞の死、つまり「脳の死」は、酸素と血液の供給が途絶えるとおよそ数秒から数分の間に訪れる迅速なもので、かつ不可逆的なものであると考えられてきました。しかし、エール大学の神経科学の教授であるネナド・セスタン氏の研究室では、死後数時間を経た細胞でも、小さな組織サンプルが生存可能性を示すことがあったため、豚の完全な脳をサンプルとして細胞活動についての調査を行いました。

by Kameron Kincade

セスタン教授らは、死後4時間が経過した豚の脳の血管系に、独自の溶液を循環させるBrain Exと呼ばれるシステムを接続。すると、神経細胞の完全性が維持され、特定の神経細胞・グリア細胞・血管細胞の機能性が回復したとのこと。

研究に携わったステファノ・G・ダニエル氏によると、これまで脳に関する研究の大部分は脳から取り出した微量の組織サンプルを用いており、脳を使えても機能が停止した状態だったとのこと。今回の発見により、今後は元のままの脳を調べられるようになり、細胞の総合作用や接続についても研究が進められるようになると語っています。


ただ、注意したいのは、この研究の目的が「意識の回復」ではない点です。一方で研究チームは、意識が回復するような兆候が見られた場合に備えて、麻酔や温度低下により脳の電気的活動を止める用意をしていたとのこと。

また、Brain Exで用いられた溶液には、本来人間の血液に含まれる成分の多くが欠けているため、人間の脳に同じ方法が使えるかどうかは不明だとのことです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logc_nt

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