NASAはゲームを通じて宇宙に興味を持たせて未来の宇宙飛行士を作るという取り組みを行っている
NASAは1900年代には「宇宙開発」を大衆にわかりやすくアピールするため、画家やイラストレーターの想像力を活用していました。現代では、画家などに替わり「ゲーム開発者」がNASAの協力者となって、次世代のエンジニア・科学者・宇宙飛行士になる子どもたちの「宇宙への興味」を掻き立てるという役割を果たしていると、未来に通じる科学的なニュースを掲載するHow we get to nextが報じています。
NASA Turns to Games For A New Generation of Space Art
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NASAのジェット推進研究所(JPL)のミッション運用改革部門の責任者を務めるジェフ・ノリス氏は砂漠の惑星Kharakを舞台に巨大な宇宙船を巡って戦うというリアルタイムストラテジーゲーム「Homeworld: Deserts of Kharak」を通して、バンクーバーのゲーム開発会社Blackbird Interactiveと交流を持つようになります。
Blackbird Interactiveは、NASAから提供された文書やミッションプランなどを参考に火星の基地計画をシミュレートしたゲーム「Project Eagle」を開発します。Project EagleはSteamで無料でプレイが可能となっています。以下のムービーではProject Eagleで描かれる火星のコロニーがどうなっているかをチェックすることが可能です。
Project Eagle Trailer - YouTube
Project Eagleで描かれる火星基地は地下にあり、地上にはドーム型の天井が見えるだけですが……
地下部分は何百メートルもあり、バイオ農場、原子炉や発射場などが格納されています。
ゲームに登場する火星の地形は、火星の周回軌道で観測を続ける多目的探査機マーズ・リコネッサンス・オービターから送られた実際の火星の地形データを使用しているとのこと。
Project Eagle開発初期には、火星と地球を定期運行するシャトル船はスペースシャトルをイメージしたデザインでしたが、NASAは「火星の大気圧では、そのデザインでは離陸のための揚力を得ることができない」という技術面からの指摘を行っています。こういった指摘を受けてBlackbird Interactiveは「技術的なリアルさ」に磨きを掛けましたが、すべてが「100%リアル」というわけではなく、あくまでも「宇宙への興味」を掻き立てるようにデザインすることを最優先しているようです。
このようなNASAの協力によって完成した作品はProject Eagleだけでなく、火星探査車「Curiosity」と連動して火星の遠隔作業を支援するHoloLens用VRソフトウェア「OnSight」をマイクロソフトと共同で開発しています。
JPLのハードウェア・ソフトウェア開発部門である「Ops Lab」でオペレーションリーダーを務めるヴィクター・ルオ氏は、「ゲームのようなサイエンスフィクションは100%の正確でなくても、技術者たちを未来に向かって前進させてくれる効果があります」とコメントしています。
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