セキュリティ

IBMがユーザーに無断でFlickr上の写真を顔認証技術のために利用しているという指摘


顔認証技術とはカメラとアルゴリズムを用いて人間の顔を識別し、性別・年齢・人種などの情報を判別したり、果ては写真に映っている人を特定する技術です。顔認証技術はまだまだ発展段階にあり、各社が技術レベルを向上させるために様々な試験を重ねている段階です。そんな中、顔認証技術をリードするIBMが、写真の共有を目的としたコミュニティサイト「Flickr」上にある写真を顔認証技術のために利用していると判明。ユーザーは顔認証技術への写真利用に同意していないのでは、と指摘されています。

Facial recognition's 'dirty little secret': Millions of online photos scraped without consent
https://www.nbcnews.com/tech/internet/facial-recognition-s-dirty-little-secret-millions-online-photos-scraped-n981921

IBMは2019年1月、100万人の顔データを収めた「Diversity in Faces(DiF、顔の多様性)」と呼ばれるデータセットをリリースしました。このデータセットは顔認証技術の公平性と正確性を向上させることを目標とし、さまざまな性別や人種の顔画像が含まれています。

IBMが100万人の顔データを収めた膨大なデータセットを「顔認識技術の公平性」を目指してリリース - GIGAZINE


DiFデータベースは、Flickr上で「クリエイティブ・コモンズ(CC)」のタグがつけられた画像を1億枚集めた「YFCC100M」と呼ばれるデータセットの中から、顔認証技術の目的にかなった画像をさらに厳選したものとのこと。写真にクリエイティブ・コモンズのタグをつけた人の多くは、非営利団体やアーティストが自分の写真を利用することを許可することが目的でしたが、投稿した画像がDiFデータセットとして収集されてしまい、「顔認証技術に画像が利用されることを想定していなかった」と主張する人も現れています。

By halfpoint

IBMは写真の利用について「研究を目的としている」と主張していますが、「IBMは慈善団体ではなく、テクノロジーで儲けるためにデータを使用しており、明白に商業利用ではないか」と指摘もされています。IBMは特定の肌の色や髪の色、人種から監視カメラの映像を検索できる技術をニューヨーク市警察に販売しています。また、この監視カメラ映像検索技術は、市民の自由を脅かすという批判や、特定民族に対しての差別であるという反発もあり、物議を醸しています。

by Daniel Naish

IBMは「DiFデータベースから画像を削除して欲しい」というユーザーの要請に対し、同社のプライバシー保護規定において、可能な限り対処すると回答しました。しかし、1000枚以上もDiFデータベース上に写真が登録されている男性が自分の写真の削除要請をIBMに提出したところ、「ユーザーIDだけでは削除しようがない」との返答がありました。DiFデータベース上から画像を削除するには、DiFデータベース上の画像のURLをIBM側に提出する必要があり、IBMはデータセットに含まれる写真のリストは公開していません。結局、この男性の写真は1000枚以上もDiFデータベースに残り続けたままのようです。また、これまでにDiFを利用した250以上もの団体が持っているDiFデータセットや「YFCC100M」データセットから画像が削除されるわけではなく、実質的に画像の削除は不可能に近い状態にあります。

なお、IBMだけが顔認証技術のためにインターネット上から画像を収集しているわけではなく、多くの研究機関が同様の手法で画像を集めたデータセットを作成しています。

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in セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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