サイエンス

一切眠らずに生きていける動物は存在するのか?ハエやクラゲも眠ることが明らかに


ヒトを含む多くの生き物は一時的に脳や体の活動を休止する「睡眠」を必要とします。人類は古代ギリシャの時代から睡眠の研究を行っていますが、睡眠のメカニズムと意義は現代も完全には明らかになっていません。それでも、さまざまな実験から「動物は長期にわたって睡眠不足に陥ると健康が悪化し、最悪死に至ることもある」ことがわかっています。そんな動物と睡眠の関係を探る研究について、科学系メディアのLive Scienceがまとめています。

Can Any Animal Survive Without Sleep?
https://www.livescience.com/64873-can-animals-survive-without-sleep.html


ペルージャ大学の細胞生物学者であるGigliola Grassi-Zucconi氏の研究によると、近代医学の分野で睡眠についての研究が行われたのは1890年代までさかのぼるとのこと。ロシア帝国で数少ない女性医師だったMarie de Manacéïne氏は、「子犬を何日も目覚めさせたままにして、数日間睡眠を取らせなかったらどうなるか」という睡眠に関わる動物実験を世界で初めて行いました。

実験では、睡眠不足にし続けて数日で子犬は亡くなったそうです。de Manacéïne氏が死後解剖した結果、子犬の脳に深刻な病変が発生していたことがわかりました。de Manacéïne氏は「私たちはできるかぎり長生きしたいと考えていますが、一方で私たちは人生の3分の1は睡眠によって犠牲になっているのです」と書き記していました。


また、1898年にはイタリアの生理学者であるLamberto Daddi氏とGiulio Tarozzi氏が、常に散歩して連れ回すことで犬を睡眠不足にする実験を行いました。十分な餌を与えられていたにも関わらず、犬は9~17日後に亡くなり、その脳細胞や神経細胞に変性が認められたことをDaddi氏は報告しています。

睡眠はヒトや犬のような脊椎動物だけではなく、無脊椎動物である昆虫にも見られることがわかっています。インペリアル・カレッジ・ロンドンの神経生物学者であるGiorgio Gilestro氏率いる研究チームが、キイロショウジョウバエのメスの睡眠習慣を監視したところ、他の動物のメスが1日あたり平均時間300分ほど睡眠していたのに対して、キイロショウジョウバエのメスは1日あたり72分しか寝ていなかったことがわかりました

by André Karwath

また研究チームは、キイロショウジョウバエを封じ込めたチューブを回転させることで睡眠時間の96%を奪うという実験も行いました。すると、睡眠不足を強制された個体群の死亡率は、正常に睡眠をとっていた個体群の死亡率とほぼ同じで、睡眠不足がキイロショウジョウバエの生命活動に支障をきたした様子は認められなかったとのこと。つまりキイロショウジョウバエのメスはわずか3分の睡眠でも生命活動を維持できるということがいえます。

一方で、本来寝るはずだったのに妨害されて眠れなかった場合、その後の睡眠時間が不足した分長くなるという「睡眠リバウンド」はハエの中にも見られたとのこと。睡眠リバウンドの量は睡眠不足の量と完全に対応しているわけではありませんでしたが、「ハエにとって睡眠は非常に少ないながらも必要不可欠なもので、主に概日リズムによって制御されているといえます」とGilestro氏は論じています。


同様の研究はクラゲでも行われています。カリフォルニア工科大学の研究チームは、散在神経系を持つサカサクラゲでも休眠状態に入っている様子を観察し、実験によって睡眠リバウンドも確認したことを報告しています。睡眠の意義が「脳の休眠」ならば脳を持たないクラゲが眠る必要はなく、研究チームは「眠ることに脳は必要ない」と論じています。

脳のないクラゲも眠ることが実験で示される - GIGAZINE


ドイツのマックスプランク鳥類学研究所では、ガラパゴス諸島に生息するオオグンカンドリに小さなデバイスを付けて脳の電気活動を計測しました。すると、陸上で監視している時間を含めても、1日に平均42分しか眠っていなかったことが判明しました。


また、飛行能力の高いオオグンカンドリは何百kmも海の上を飛び続けることができますが、飛んでいる間は脳の半分を覚醒させたまま、もう半分を睡眠状態にしていることがわかりました。さらに、飛行中にも関わらず両方睡眠状態になっていることもあったとのことで、体の休眠と脳の休眠は別であることがわかります。アマツバメなどの渡り鳥がまったく着地することなく何カ月も飛び続けられているのは、このような特殊な睡眠法があるからだと科学者はにらんでいます。

研究メンバーの1人であるNiels Rattenborg氏は「動物は睡眠を必要とするといわれますが、一部の動物はヒトよりもはるかに少ない睡眠時間でも生きることが可能なようです。ただし、どんなに睡眠時間が短い動物でも、完全に眠らずに生息し続けるということはおそらく不可能で、動物には最低限必要な睡眠量が存在することをこれまでの実験が示しています」と述べていました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
出産後の睡眠不足は4~6年にわたって母親に影響しつづける - GIGAZINE

ライブ配信中に寝落ちして200人以上に3時間も寝顔を見守られた男性のムービーが190万回以上の再生数を記録 - GIGAZINE

揺れながら眠ると記憶の固定がブーストされる - GIGAZINE

不眠症における「5つのタイプ」とは? - GIGAZINE

眠りや夢は私たちの意識と一体どんな関係があるのか? - GIGAZINE

睡眠不足は「不安」を招くことが脳の研究から明らかに - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.