放射能が残留する遺体を処理した火葬場職員が被ばくする事例が発生
By rabedirkwennigsen
放射性医薬品は放射性同位元素を使用した医薬品です。亡くなる数日前に放射線医薬品を投与された男性の遺体が原因で、遺体が運ばれた火葬場のスタッフが被ばくしていたことが判明しました。
Here’s why you shouldn’t cremate radioactive dead people | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/02/heres-why-you-shouldnt-cremate-radioactive-dead-people/
69歳のアメリカ人男性は死の2日前に膵臓腫瘍に対する治療としてルテチウムの同位体であるルテチウム-177を含む治験薬を投与されていました。男性は投薬の2日後に亡くなり、その3日後に火葬された後、埋葬されました。治験薬に含まれるルテチウム-177の半減期は6.65日ですが、男性が火葬されたのは投薬から5日後でした。
By rawpixel
男性に放射線治療を行った医師は、男性が死亡したことをしばらく通知されませんでした。男性が投与された放射線医薬品の半減期を過ぎないまま埋葬されたと発覚し、火葬場の調査が決定。ガイガーカウンターを使用した調査の結果、遺体を焼却した火葬炉などから最大で1時間あたり7.5マイクロレントゲンの照射線量率が検出されました。この環境下に置かれた人は1時間あたり0.0075レムの放射線に晒されることになります。労働安全衛生管理局が定めている「1年間」あたりの被ばく限度量は5レムですが、アメリカ合衆国原子力規制委員会の定めた「1年間」あたりの被ばく限度量は0.1レム。今回の状況下では、わずか14時間でアメリカ合衆国原子力規制委員会の1年間の被ばく限度量を超えてしまう計算です。
また、調査員が火葬場の職員の尿を検査したところ、今回問題となったルテチウム-177は検出されなかったのですが、別の放射線物質である「テクネチウム-99m」を検出。遺体に残留した放射線医薬品からの被ばくは今回のケースに限らず、以前から存在していた問題だということが発覚しました。
By Daian Gan
火葬場の放射性物質に関する連邦規制はなく、規制は州によって異なります。例えば、フロリダ州では免許がない限り、火葬場で放射性廃棄物を燃やすことは禁じられている一方、アリゾナ州では死亡した患者が放射性医薬品が投与されていたかを火葬場に知らせること義務づける規則はありません。アメリカの2017年における火葬率は50%で、火葬場で働くスタッフの長期被ばくの頻度と範囲や、健康への影響に対する更なる調査が必要だと結論づけられています。
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