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中国の廃棄物輸入禁止措置「ナショナルソード」のきっかけとなったのは何なのか?


中国は長年にわたって世界中の廃棄物を輸入してゴミ処理・リサイクルを行ってきましたが、2017年末に「国門利剣(ナショナルソード)」という新たな規制を設け、プラスチックゴミを含む多くの廃棄物の輸入を禁止しました。そんなナショナルソードが実施されたきっかけは何なのか、いったいどのような影響を世界に与えているのかについて、デザインなどに関するメディアの99 Percent Invisibleでプロデューサーを務めるAvery Trufelman氏がまとめています。

National Sword - 99% Invisible
https://99percentinvisible.org/episode/national-sword/

かつてアメリカでは大量のビンに紙類、プラスチックなどの資源ゴミが回収された後、その多くが中国へと輸出されていました。中国では製造業の原料を補うために資源ゴミを各国から輸入し、リサイクルして再利用するといったシステムが導入されており、多くの先進国は資源ゴミのリサイクルを中国への輸出に頼っていたとのこと。


しかし、中国は2017年末からナショナルソードを実施し、プラスチックゴミや特定の紙類などの輸入を停止。突然資源ゴミを輸出先を失ったアメリカなどの国々では、一部都市で資源ゴミの収集がストップしたり、埋め立てや焼却処理を行うといった対応に追われています。まだ資源ゴミを収集している自治体でも、販売先に苦労しているといった状況が続いており、リサイクル材料を販売して利益を出す代わりに、貯蔵するスペースを維持するための費用がかかっているとTrufelman氏は述べています。

中国が世界的な貿易市場に参戦した時、中国国内からの輸出品を輸出先で降ろし、代わりに製造業の原料として資源ゴミを積載して中国へ持ち帰るのは効率的なシステムでした。多くの国々はそのシステムに依存する形で資源ゴミの処理を任せていたわけですが、ナショナルソードによって多くの国々に影響が出ています。

「いったいなぜ中国はナショナルソードを実施し、これまでの政策を転換したのか?」という問いに対し、専門家の中には「Wang Jilang監督による『Plastic China』というドキュメンタリー映画が発端だったのかもしれない」と指摘する人もいるそうです。

PLASTIC CHINA Documentary Film Official Site


「Plastic China」がどういう映画なのかは、以下のムービーを見るとわかります。

IDFA 2016 | Trailer | Plastic China


大量のゴミ山の中で……


髪を整えている少女。


中国には大量のリサイクル施設が存在しており、Plastic Chinaはそんなリサイクル施設を所有する一家と、リサイクル施設で働く一家に取材したドキュメンタリーとなっています。


リサイクル施設で働く一家の娘、Jieはプラスチックゴミの浮かんだ灰色の水で顔を洗い、髪を整えていました。


生活する場所のすぐ近くでプラスチックゴミをリサイクルする機械が稼働しており……


プラスチックのちりが舞う劣悪な環境に暮らしています。


リサイクル施設で働く人々は、収集された資源ゴミを分別したり浄化したりして、再資源化するための処理を行っています。


11歳のJieも両親の仕事を手伝っており、学校にも行っていません。


外国のゴミから写真を切り抜いたり、ゴミとして捨てられたフィギュアをきれいにして自分のおもちゃにしているとのこと。


Jieの父親であるPengは、「お金がないんだからどうしようもない」と言いながら酒を飲んでいます。


一家は非常に狭い空間で暮らしており、リサイクル施設で働く人々はいずれも似たような生活環境であるとのこと。人々が住む村はプラスチックのゴミで覆われています。


ドキュメンタリーでは、リサイクル施設のボスであるKunの一家にも取材しており……


PCのサイトを眺め、新発表の車に目を輝かせるKunの様子などが紹介されています。


車を気に入るKunに対し、「夢見てるんじゃないよ、お金がないんだから!」と妻がたしなめていますが、ここでの「お金がない」はPengの場合とはかなり意味合いが違うように聞こえます。


Kunは車の展示会に足を運び、5万ユーロ(約630万円)の車を見て「10年は貯金しないと」などと話し……


試乗してはしゃいでいました。


プラスチックゴミに埋もれて働く人々。


Plastic Chinaは数々の映画祭に出品され、高い評価を得ています。


2016年に公開されたPlastic Chinaは、中国政府によって中国国内のインターネットから視聴できなくなっています。しかし、しばらくの期間は中国国内でも視聴できたとのこと。中国政府がPlastic Chinaの視聴を不可能にしてからしばらくしてナショナルソードが実施されたため、Plastic Chinaによって中国国内のリサイクル施設の現状を問題視した中国政府が、資源ゴミ輸入の停止に転換したのではないかともいわれています。

ナショナルソードによって資源ゴミの輸出先をなくした国々は、ほかの国々への販売を検討する国もある一方で、リサイクル施設や最新のリサイクル機器に投資を行って国内でのリサイクルを行う国や自治体もあります。しかし、排出される資源ゴミはあまりにも多く、飲料や食べ物のゴミで汚れた資源ゴミをリサイクルするのは非常に困難なのが現状。その結果、再資源化されることなく埋め立てられたり、焼却処理されたりする資源ゴミも増えているそうです。

リデュース・リユース・リサイクル」という標語のうちの一つであるリサイクルの道が狭まっている以上、人々は包装が少なかったり繰り返し使えたりする環境に優しい製品を購入するように努力する必要があります。また、政府や自治体が主導して製品の過剰包装や、リサイクルしやすい製品の開発の圧力を強めるべきかもしれないとTrufelman氏は述べました。

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in メモ,   動画,   映画, Posted by log1h_ik

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