同じ「ベビーフェイス」でも性別や人種によって成功をもたらすかどうかが変わるという「テディベア効果」
by Alexas_Fotos
「人は見た目じゃない」と言われつつも、「『魅力的な顔』の科学者は『有能でない』と判断されやすい」ことが研究で示されるなど、多くの人が顔や見た目で判断されているというのが現実です。人に与える印象を変える特徴の1つが「ベビーフェイス(童顔)」ですが、黒人男性であればベビーフェイスの方が昇進しやすく、白人男性であればしにくいなど、性別や人種によってどのような効果を発揮するかが異なっているという研究結果が示されています。
How physical appearance influences authority | Harvard Magazine
https://harvardmagazine.com/2019/01/robert-livingston-harvard
アメリカのフォーチュン誌が年に1回発表する全米企業500社のランキング「フォーチュン500」にランクインした会社のCEOは、その95%が白人男性です。そしてCEOである白人男性の多くは角張ってしっかりしたアゴ、白髪交じりの髪といった成熟や男らしさ、真剣さを示す見た目をしています。
一方で、フォーチュン500にランクインしたアフリカ系アメリカ人のCEOは、これとは違う特徴を持つと心理学者のRobert Livingston氏は述べています。Livingston氏の研究によると、アフリカ系アメリカ人の男性CEOはいわゆる「ベビーフェイス」の持ち主であり、大きな額、大きな目、丸みを帯びた頬、丸い鼻といったエマニエル坊や的な容姿だそうです。Livingston氏は「見た目に『素直さ』や『従順さ』が出ている方が黒人男性のリーダーにとって有利」という状況があると説明し、これを「テディベア効果」と呼んでいます。
by Peter Heeling
黒人男性は敵対的、攻撃的、危険、過度に男性的と認識され、「白人男性の権力の脅威である」と考えられがちであるため、企業においては「脅威」を感じさせない顔の人が昇進していくのだとLivingston氏は見ています。またLivingston氏は、ふくよかな顔のCEOであるほど、会社の収益に関わらず収入が多いことも発見したとのことです。
過去40年にわたり複数の研究者が「ベビーフェイス」について研究を行っており、顔の高さに対して広さの比が大きいと人はしばしばポジティブな反応をすることがわかっています。Livingston氏の研究はこれら過去研究を基礎にしたもので、2009年の論文ではアフリカ系アメリカ人リーダーに見られるベビーフェイスの特徴は、白人男性のCEOに対してメリットをもたらさないことが示されました。それどころか、白人男性のCEOのベビーフェイスと企業サイズ・ボーナス・給与額の間にはネガティブな関係すら見られたとのこと。
さらに、白人女性のCEOの場合は男性CEOよりも「非ベビーフェイス」の特徴が顕著だったといいます。たいていの女性は男性に比べて丸みを帯びた頬といった子どもに近い特徴を持っているため、適性や能力を示すためには、より「ベビーフェイスではない」見た目が求められます。ベビーフェイスは人を「武装解除」するため、黒人男性に対しては「脅威ではない」ことを示すメリットとなり、女性に対しては「能力が足らない」ことを示すデメリットとなりうるわけです。ただし、フォーチュン500に黒人女性のCEOは含まれなかったため、この点を調べることはできなかったとのこと。
by rawpixel.com
Livingston氏は、自分の研究結果が黒人男性に対して「整形手術をせよ」といっているものでも、「ソフトに話せ」といっているわけでもなく、「成熟した見た目の黒人男性が経営幹部から締め出される可能性」を警告していると述べています。「テディベア効果のようなものを生み出す階級構造やシステムを破壊する必要があります」「私たちが実力社会で生きているわけではないということに、気づいて欲しいのです。私たちは異なる基準で判断されています。あるグループで『資産』とみなされる資質は別のグループでは『負債』と見なされます」とLivingston氏。
この研究結果は雇用や昇進における盲点を避けるための助けとなるとLivingston氏は述べています。「Jamal」や「Lakeisha 」という名前が示されていると、「Greg」や「Becky」という名前が示されている時よりも電話のかけ直しが少ないという研究結果もあり、雇用において志願者のアイデンティティを隠すことには利益があるとのこと。また、多様な雇用委員会を開き、集団思考を持っていないと確認することも大切になります。
by it's me neosiam
テディベア効果は、人の属するグループがどのように認識されているかに左右され、それぞれのグループがどのように社会的不利を抱えているのかを明らかにしています。これらは非常に重要な示唆を含みますが、多くは見逃されているもの。Livingston氏は「黒人男性、黒人女性、白人男性、白人女性、みんな社会的不利を抱えていますが、私の研究は、これらの不利がどのように違うかを見いだすものです」と述べ、今後の目標は「組織に対して、さまざまなバックグラウンドを持つ人は、それぞれ異なる、場合によっては真逆の課題を抱えていると理解してもらうことです」だと語りました。
・関連記事
「魅力的な顔」の科学者は「有能でない」と判断されやすいことが判明 - GIGAZINE
「世界で最も美しい顔ベスト100(2017年版)」画像全まとめ - GIGAZINE
自分の容姿に自信がない人はどうすれば良いのかを指南するムービー - GIGAZINE
世界のイケメンモデルが大集合して各国のカッコイイ男性像の違いを知る - GIGAZINE
「美人は得をする」とは言えないことが研究で判明 - GIGAZINE
「写真の女性をPhotoshopで美しくしてください」と世界18か国のデザイナーに言うとこうなる - GIGAZINE
1枚の女性の写真を「美しくしてください」と世界各国の人に修整してもらったらどんな差が出るのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ