ワイヤレス充電の仕組みはどうなっているのか、どのような問題点があるのか?
by Aaron Yoo
Android端末ではもはや当たり前となりつつあるワイヤレス充電機能ですが、iPhoneでは2017年に登場したiPhone 8/8 Plus/Xから採用されるようになりました。iPhoneがワイヤレス充電に対応したことで家電量販店などでも多くのワイヤレス充電器が販売されるようになりましたが、その仕組みや問題点についてペンシルベニア州立大学のShashank Priya材料工学教授が詳細に解説しています。
How wireless recharging works – and doesn't, yet
https://theconversation.com/how-wireless-recharging-works-and-doesnt-yet-104376
発明家・電気技師だったニコラ・テスラは1890年には既に空中を通じて送電する手法を考案していましたが、1世紀以上が経過した現代になってようやくワイヤレス充電は実現することとなりました。基本的な仕組みはラジオ局からラジオの電波が送信され、ラジオがそれを受信するという方式と似ています。
ワイヤレス充電では電気が電磁波に変換されて空気中に送信され、目的地にたどり着いたところで電磁波が電気信号になって充電されるというもの。この場合、ラジオに利用される電波よりもかなり大きなエネルギーを持った電磁波を送受信する必要があります。
記事作成時点ではワイヤレス充電の主要な問題点として、「送信機と受信機の距離がほんの数cmであっても、送れる電力が非常に小さくなってしまう」というものが挙げられます。市販のワイヤレス充電器では、スマートフォンを上に置くと充電がスタートしますが、スマートフォンを充電器から持ち上げるとすぐに充電がストップしてしまいます。研究者や企業は長距離のワイヤレス電力転送技術の開発に取り組んでいますが、いまだに電気自動車を高速道路の休憩スペースや家のガレージに駐車するだけで充電することはできません。
もしも大きな電力を長距離ワイヤレス充電できるようになれば、例えばペースメーカーなどの体内にデバイスを埋め込んだ人々が充電のためにデバイスを取り出す必要がなくなり、電気自動車が道路を走りながら充電できるようになるかもしれません。また、自宅に設置する煙探知機などの電池交換も不要になり、ワイヤレスで常に充電できる照明の開発でコンセントの場所などにとらわれず、どこにでも照明を設置できる可能性もあります。
ワイヤレス充電では送電装置と受電装置間の接続が非常に重要です。最も効率的に電力が送信される状況は、理想的には送電機が発する電磁波の周波数と、受電側装置の共振周波数が一致する場合です。
家の近くをトラックが通過する時、あるトラックが通ると家全体がガタガタと揺れるのに対し、別のトラックではそれほど家が揺れないことがあります。これが「共振周波数が一致する」ということで、トラックが発する振動数と物体の共振振動数が一致しているというわけ。ワイヤレス充電の場合、電磁波と受電装置の周波数が一致しなければ転送される電力量が大幅に減少してしまうことになります。
Priya氏の研究チームでは、電磁波と受電側の周波数が一致するまで「ラジオのチューニングのように」自動的に送電側の周波数を調節するシステムの開発に取り組んでいます。例えば電気自動車を駐車する際、どうしても理想的な据え置きの送電装置と車に搭載された受電装置の位置関係になるように駐車できず、斜めにズレてしまったり距離が離れ過ぎてしまったりします。
そういった場合、うまく電力が送信できていないことを送電側の機械が検知し、さまざまな要素を変更して電磁波の周波数を変更できれば、これまで以上に効率的な給電が可能になります。Priya氏の研究が進めば、やがて生活の至る所にワイヤレス充電機構が備え付けられるようになるかもしれません。
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