賃金格差は「既婚男性」と「それ以外のみんな」の間にも存在する
by Mihai Stefan Photography
男女の間には賃金格差があると主張されることがあり、この理由については性差別ではなく「選択の違い」ともいわれています。一方、経済学者が新たに、「男女間」ではなく「既婚男性とそれ以外」の間に賃金格差があることを報告しています。
Married Men Outearn Single Men | St. Louis Fed
https://www.stlouisfed.org/on-the-economy/2018/december/married-men-outearn-single-men
The gender wage gap is between married men and everyone else — Quartz
https://qz.com/1508500/the-gender-wage-gap-is-between-married-men-and-everyone-else/
「男性と女性の間に賃金格差が存在するために女性の社会進出が妨げられたり、子育てのために女性が働けなくなる」という主張はしばしば行われています。そして女性が活躍する場を失うことで、昇進を始めとした多くのメリットは男性の手に渡るともいわれています。
実際に2016年のデータでは、フルタイムで働く女性は、同じくフルタイムで働く男性の80.5%しか稼げていないことが示されています。男女の賃金の推移を追った調査では、男性と女性は26歳前後まで同じような形で賃金が増加するものの、その後は格差が大きくなり、45歳時点では男性が年7万5000ドル(約830万円)を稼ぐのに対し、女性の稼ぎは5万ドル(約550万円)になることが示されました。これは、「子育てのために女性が職を離れる」ことが理由だと説明されてきました。
しかし、経済学者のGuillaume Vandenbroucke氏は、賃金格差がジェンダーではなく、男性の「結婚歴」と相関関係があることを発見。少なくとも高校卒業資格を持った従業員であれば、未婚男性と未婚女性の間に生涯賃金の差はほとんどないとのこと。既婚の女性は未婚の女性に比べて子どもを持つことが多いものですが、両者の間にも格差がないことから、男性に比べて女性の賃金が少ない理由は「子育て」ではないとみられています。データでは、既婚男性は40代半ばで年9万ドル(約1000万)を稼ぐようになり、「既婚男性」の賃金は「その他のグループ」のほぼ倍になることが示されました。
ただし、このデータから「男性は結婚すると賃金が上がる」ということまではいえず、「高い収入を得る男性は結婚しやすい」という可能性をVandenbroucke氏は示しています。
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