「社会問題化している肥満に取り組むためにはお酒にかかる税金を引き上げるべき」という主張
糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群などの原因ともなる肥満は、いまや世界の主要な健康問題の1つとなっています。オーストラリア政府によると、オーストラリアの成人のおよそ3割が肥満であり、子どもは4人に1人が肥満だったそうで、オーストラリアでは国民の肥満が深刻な社会問題として議論されています。そんな中、The Conversationが「オーストラリアの肥満問題を解決するには酒税を値上げすればよい」という主張を紹介しています。
Assessing Cost-effectiveness of Obesity Prevention Policies in Australia – ACE-OBESITY POLICY 2018
http://www.aceobesitypolicy.com.au/
What's the most value for money way to tackle obesity? Increase taxes on alcohol
https://theconversation.com/whats-the-most-value-for-money-way-to-tackle-obesity-increase-taxes-on-alcohol-108335
2016年~2017年の統計によると、オーストラリアでは総計1億8600万リットルのアルコールが消費されたとのこと。これは15歳以上のオーストラリア人1人につき9リットルを飲んでいるという計算になります。ディーキン大学の研究チームは、アルコールの消費を減らすことを目的とした政策をとることで、オーストラリアの肥満問題を解決できると主張しました。
世界保健機関(WHO)の(PDFファイル)調査によると、アルコール摂取量の多い人ほどより安価な酒を求める傾向にあるそうです。また、研究チームは、アルコールの価格が低いほど消費レベルが高いということを示す研究を紹介しています。
以上のことから、アルコールの税金の値上げこそアルコール消費量を減らすための方法で最も費用対効果が高いものだと研究チームは論じています。実際にアメリカでの調査では、課税によってアルコールの価格が1%上昇すると、アルコール中毒になるレベルを超えた過度の飲酒が1.4%減ったという結果も得られているそうです。
ただし、オーストラリアの酒税は複雑かつ不合理なのが現状だと研究チームは指摘しています。オーストラリアでは、まず卸の段階でアルコール濃度と生産量に応じて税がかけられます。また、オーストラリアの主産業の1つでもあるワインには、Wine Equiliaztion Tax(ワイン同等化税)という29%の税金が課せられます。従来の税制に従うと、アルコール度数が低いものの糖質を多く含むビールは酒税が最も低く、対して度数が高く糖質が比較的少ないスピリッツは高くなってしまうのが現状だそうです。
研究チームは、酒税制の抜本的な見直しを求めています。研究チームが提案する税制を適用すると、ボックスワインは120%、ボトルワインは33%、ビールは25~30%、スピリッツは4.6%の値上げをすることになるそうです。税制を変更することで、オーストラリア全体のアルコール消費量を16%削減することが可能となり、国民の平均体重がおよそ0.7kg減量するほか、47万人以上のオーストラリア人の健康寿命が延びると研究チームは論じています。さらに、増加した税収入は糖尿病・がんの医療に費やすことができるので、健康への影響もかなり大きいとしています。
また、肥満に由来する疾患を予防することで、48億オーストラリアドル(約3900億円)の節約にもなると研究チームは主張しています。研究チームは「お酒の値上がりが国民の不評を買う可能性は高いですが、政府が効果的な肥満戦略に取り組んでいるのであれば、酒税の引き上げは包括的な社会的対応の一環として考慮されるべきです」と述べています。
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