興行収入が1000億円規模の大ヒット映画はいずれもジェンダーバイアス測定の「ベクデルテスト」をクリアしている
by Jakob Owens
2014年から2017年の4年間で興行成績のよかった映画を対象にした分析により、映画製作を女性が主導した作品の方が、男性主導の作品よりも好成績を収めたことが明らかになりました。また、ジェンダーバイアスを測定するために使われる「ベクデルテスト」についてもクリアしている作品の方が、クリアしていない作品よりも好成績であり、特に大ヒットするような作品はいずれもテストをクリアしているものであったことがわかりました。
FEMALE-LED FILMS OUTPERFORM AT ALL BUDGET LEVELS, PER RESEARCH FROM CREATIVE ARTISTS AGENCY AND SHIFT7
https://drive.google.com/file/d/1nCcnbWVISHocVm0YIyqlsKnMAK6dnO16/view
media-research — shift7
https://shift7.com/media-research
これは、映画監督や俳優、プロデューサーらを多数抱え、ハリウッド4大エージェンシーの1つに数えられるクリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)が、shift7という会社と組んで行った調査によって明らかになったものです。調査対象となった作品は2014年1月から2017年12月に公開された映画350本で、ベクデルテストに関する情報はBechdel Test Movie Listから提供されたとのこと。
350本のうち、女性主導だった作品は105本、男性主導だった作品は245本でした。「女性主導」か「男性主導」かは、データテクノロジー企業・gracenoteのハリウッド情報データ「STUDIO SYSTEM」を利用して、プレス資料の最初にクレジットされている人物が男性か女性かで分けたとのこと。必ずしも監督が最初にクレジットされるわけではないので、「女性が中心となって作った」というよりは「主要スタッフに女性が含まれている」ぐらいで捉えた方がよいかもしれません。
作品の興行収入の平均値を、「製作費が1000万ドル(約11億円)未満」「製作費が1000万ドル以上3000万ドル(約34億円)未満」「3000万ドル以上5000万ドル(約56億円)未満」「5000万ドル以上1億ドル(約113億円)未満」「1億ドル以上」の5つに分けてグラフ化したものがコレ。5つの分類すべてで、男性主導の作品(グレー)を女性主導の作品(赤)が上回る結果となっています。
「女性主導作品の方が全体的に製作費が多くて、結果的にヒットする作品が多かったのでは」という推測も可能ですが、実際には製作費ごとの作品数分布は以下の通り。製作費1億ドル以上の作品では男性主導の作品(グレー)の数の方が圧倒的多数です。「スター・ウォーズ」シリーズでプロデューサーを務めるキャスリーン・ケネディ氏や、クリストファー・ノーラン監督の妻でプロデューサーのエマ・トーマス氏といった存在の影響が大きいのかもしれません。
続いては「ベクデルテスト」を基準としたもの。ベクデルテストの内容は「作中に最低2名の女性が登場するか」「その女性同士は会話するか」「会話の話題が男性以外のことか」という3つをクリアしているかによってジェンダーバイアスを測定しており、製作費別の調査が行われた結果、いずれのランクでも、ベクデルテストをクリアしていない作品(グレー)をクリアしている作品(赤)の興行収入が上回りました。
以下は製作費別に、ベクデルテストをクリアしている映画(赤)と、クリアしていない映画(グレー)がどのくらい作られたのかを示すグラフ。いずれのランクでもテストをクリアしている作品の方が多数ではあるのですが、予算が低い方がテストをクリアしている割合が高い傾向が見られます。
ベクデルテストの結果は、平均値ではなく興行収入の「上限」にはっきりと現れていて、テストをクリアしていない作品は興行収入10億ドル(約1000億円)の壁を超えることができませんでした。
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