「FAXの使用を2020年までに全面的に廃止する」とイギリスの国営サービスが決定

by Donald Trung

インターネットが普及して電子メールの使用が当たり前になった現代でも、システムの更新が遅れがちな役所や病院では今でもファクシミリ(FAX)が根強く利用されています。そんな中、イギリス宇の国営医療サービス事業である国民保健サービス(NHS)が「オフィスでのFAXの使用を段階的に廃止し、2020年までに完全にFAXを撤廃する」と発表したことがBBCによって報じられています。

NHS told to ditch 'absurd' fax machines - BBC News
https://www.bbc.com/news/uk-46497526

人工知能企業DeepMindの医療・健康部門は、NHSは世界で最もFAXを多く購入している組織だと報告しています。また、イングランド王立外科医師会(RCS)によると、2018年7月時点で、NHSでおよそ9000台のファクシミリが使用されていたとのこと。BBCが地域医療サービスの運営母体組織である「医療トラスト」にアンケートをとったところ、およそ4割が100台以上のFAXを使っていて、最大の医療トラストであるBarts Health NHS Trustはなんと369台のFAXを使用していたことが明らかになりました。

「NHSは文書のやりとりをほぼFAXに依存している」という報道はイギリス国内でも大きな批判を集めたため、NHSはデジタルの未来に備えるための長期的なビジョンを設定。その一環としてFAXを段階的に廃止していき、2020年3月31日までにはすべてのFAXをNHSから排除する方向を示しました。

by Gerry Brague

ドンカスターの薬局で働くTaz氏はBBCのインタビューに対して「退院記録・緊急の書類・時間外サービスなどすべてが暗黒の時代に突入しています」と回答。「NHSによるFAX廃止によって多くの物事が変わるよう願っています。技術を使わないために起こる潜在的なエラーや時間の無駄は衝撃的なもので、患者が苦しむことになります」と述べています。

一方で血液サービスに従事するTim Owen氏は「コンピューターウィルスが病院のITインフラストラクチャを攻撃したらどうなりますか？」とFAXの廃止に疑問を呈し、Owen氏は「2017年のWannaCry事件の時、時代遅れのFAXがあったおかげで血液製剤の注文を平常通り行うことができ、患者の安全を脅かすことはありませんでした」と語っています。また、ある総合診療医はBBCのインタビューに対して「地方ではインターネットがまだ十分に普及しているとはいえず、病院にX線検査を依頼するにはFAXが不可欠です」と答えたそうです。

イギリス・保健省は「患者の安全とサイバーセキュリティを向上させるためには、文書のやりとりをより現代的な方法へ変更することが必要です」とコメントし、FAXよりも安全な電子メールを使うべきだとしています。また、RCSの委員会議長を務めるRichard Kerr氏は「NHSが時代遅れの技術を使い続けることは不合理です」と語り、「膨大な量の患者情報を伝達するためのより良い方法に投資したことは重要です」とコメントしています。