1000万人以上の登録者数を誇る人気YouTuberにみる「誰もが興味をひくコンテンツ」の神髄とは?
by Esther Vargas
ビジネスを成功させるためには、より多くの宣伝をうち、より多くのトラフィックを集め、より多くの注目を浴びなければなりません。特にインターネットを中心にバイラル・マーケティングを行う場合、FacebookやTwitter、YouTubeなどの情報拡散力を利用して、短時間に爆発的なトラフィックを集めることが必要です。そんな中、世界的人気を誇るYouTuberがどうやって人々の耳目を集めているのか、起業家でYouTuberのネーサン・コントニー氏が分析しています。
Viral Marketing – The Set List – Medium
https://medium.com/the-set-list/viral-marketing-77aa2fc94b95
ケイシー・ネイスタット氏は映像クリエイターであり、起業家であり、1000万人以上のチャンネル登録者数を誇る世界的に人気のあるYouTuberでもあります。
ネイスタット氏が世界的に知られるようになったのは、2003年に公開した「iPod's Dirty Secret」という2分30秒ほどのムービーがきっかけ。ネイスタット氏の購入したiPod classicのバッテリーが購入してわずか1年半でだめになってしまったとAppleのカスタマーサポートに訴えたものの、「新しいiPodを買ったほうがいい」とまったく相手にされなかったそうです。そこで、ネイスタット氏は「iPod's Unreplaceable Battery Lasts Only 18 Months(iPodの取り替え不可能なバッテリーは18カ月しかもたない)」というメッセージを、ニューヨーク中に貼られたiPodの広告ポスターの上からスプレーで書き殴る様子を撮影し、発表しました。このムービーは世界中で話題となり、Appleは映像の公開から2週間後にiPodの延長保証プログラムを発表しました。
iPod's Dirty Secret - from 2003 - YouTube
また、ネイスタット氏は2005年に、自身が住むニューヨークの治安の悪さを皮肉るかのように、いかにも怪しげな格好をして町中に駐輪されている自転車のチェーンをさまざまな道具で断ち切って、白昼堂々と自転車を盗む映像を公開しました。たくさんの人が現場近くを歩いていますがほとんど気にしないため、ほんのわずかな時間でまんまと盗めてしまいます。ネイスタット氏は2012年にも同様のムービーを公開していますが、楽々と盗めてしまうところは2005年と全く変わってないようです。
bike thief - YouTube
以下のムービーは、「自転車専用道路を走っていない」ということで50ドル(約5700円)の罰金を払わされたネイスタット氏が、「自転車専用道路には障害物が多すぎて走るのは危険だ」という申し立てを警官に訴えても無視されてしまったことから、自転車専用道路に置かれている障害物に次々と衝突して突っ込んでいく様子を撮影したもの。
Bike Lanes by Casey Neistat - YouTube
ネイスタット氏が制作するのは社会に対して問題提起をするようなムービーだけではなく、吹雪に見舞われマヒしたニューヨークの町を、車の後ろにくくりつけたロープをつかんでスノーボードで滑りまくるというおふざけムービーも公開しています。
SNOWBOARDING WITH THE NYPD - YouTube
以上のムービーはどれもSNSを中心に爆発的に拡散され、1000万回以上再生された「バイラルムービー」となりました。ネイスタット氏の制作するムービーは、40年以上前に社会学者が提唱した「常識を打ち破るような面白さ」を具現化したものだと、コントニー氏は分析しています。
ノーザンイリノイ大学の社会学者だったマーレイ・デイヴィス氏は、理論家は理論が正しいから評価されるのではなく、理論が面白いからこそ評価されると主張しました。デイヴィス氏は「(PDFファイル)That's Interesting!(おもしろさについての導入研究)」という論文を1971年に著し、その中で理論を「面白い」あるいは「興味深い」ものにするのは何かというテーマを取り上げました。
デイヴィス氏は、「新しい理論は、古い心理、ことわざ、霊感、格言、言葉、平凡さなどを否定する場合に注目されます」と主張。そして「全ての面白い理論、少なくとも興味深い社会理論の全てが、聴衆が持つ世界への攻撃で構成されています。もし理論の内容が挑戦的ではなく、当然だというような常識を改めて確かめるようなものだったら、その理論の価値は拒絶されてしまうでしょう」と述べ、「Xであると思われているものは現実にはXではない」「Xだと受け入れられているものは、実際はXではない」という理論こそ他人の興味を引きやすいものだと論じています。
ネイスタット氏の制作するムービーは、視聴者の期待を裏切るような内容となっていて、まさにデイヴィス氏が1971年に唱えた「面白い理論」の条件を満たしているといえます。デイヴィス氏が提唱し、ネイスタット氏が実践して見せた面白さはシンプルながら難しく、潜在的に危険なものですが、このレンズを通してアイデアをフィルタリングすると、自分のアイデアがより大きなインパクトを得ることができるとコントニー氏は語っています。
なお、ネイスタット氏も、「常識に対して挑戦的な態度をとる」というフィルターで自分のアイデアを他人の興味を引くようなムービーに昇華していることを意識している様子で、「高い設備もカメラも必要ない、自分ができないことをやるべきだ」というムービーを公開しています。
DO WHAT YOU CAN'T - YouTube
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