子どもを授かるための「正しい年齢」とはいつなのか?
By Andrea Ferreira
社会全体の晩婚化が進んでいるのは日本に限らず多くの先進国で見られる現象で、それに伴って女性が出産する年齢も上昇しています。自身のキャリアとのバランスで出産のタイミングを見計らうことはとても重要ですが、一方では出産に適した「適齢期」があることもしっかりと考えておく必要があります。
What is the 'right' age to have a child?
https://theconversation.com/what-is-the-right-age-to-have-a-child-106951
女性の社会進出が広まるにつれ、企業もそれをサポートする動きを見せるケースがあります。AppleやFacebook、Googleといった企業では、従業員に提供している医療プログラムの中に「若いうちに女性の卵子を凍結しておく」というプランが含まれており、いわゆる「出産適齢期」の女性がキャリアを中断されることなく安心して働けるための環境が整えられています。
人々がより自由にキャリアや人生を設計することを可能にするプランが整えられているわけですが、それでもなお生物学的には年齢が低い間に出産を行うことでさまざまなリスクを回避できる可能性が高まるとのこと。アメリカにおける調査では、35歳以上の母親と45歳以上の父親に生まれた子どもは、統合失調症や自閉症などの遺伝的および神経発達障害のリスクが高くなることがわかっています。
また、年齢を重ねた親が子どもを妊娠する際には、通常の受精ではなく人工授精によるサポートが必要となることもあります。しかし、人工授精によって授かった子どもは早産や低体重出産を起こすことが多くなり、心臓血管や代謝性疾患が後の人生で発生するリスクがより高くなるとのこと。
さらに、父親の年齢が高くなると精子の活発度が低下してしまうことで、受精する能力が低下してしまいます。このように、高齢出産によるリスクは女性だけではなく、男性の側にも存在しています。
社会全体の晩婚化が進んでいるのは日本だけではありません。イギリスとアメリカで夫婦が子どもを授かった平均年齢を時代別に並べた以下の図では、1990年代にはおおむね30歳以下だった出産年齢が2016年には30歳前後にまで上昇していることが示されています。
「妊活」を始めた夫婦が実際に子どもを授かるまでには、平均して1年程度の時間がかかります。それでもなお、平均して7組に1組の夫婦は妊娠することができないという統計がありますが、この状況は加齢に伴って悪化します。夫婦の年齢がともに35歳から39歳だった夫婦の場合は妊娠に失敗する確率が6組に1組、さらに40歳以上になると4組に1組の割合で子どもに恵まれない結果となってしまいます。また、人工授精が成功する可能性も加齢によって低下します。女性が40歳以上の場合、人工授精の成功率は10%未満になるという統計結果もあるとのこと。
一方、出産期を遅らせることで得られる「メリット」も存在しているとのこと。妊娠・出産は女性しかできないプロセスであり、その時期は様々な活動が大きく制限されてしまいます。また、出産後も育児に多くの時間を割く必要が生じるため、男性と同じように仕事を続けることが難しいのは事実です。
女性が出産によってキャリアに良からぬ影響を受けることは「motherhood wage penalty(母親であることによる賃金上のペナルティ)」という言葉で語られることがあり、女性のキャリア面から見れば収入が減り、育児という「無賃金労働」に従事しなければならなくなるという状況が存在します。しかしこの「ペナルティ」は、出産期を遅らせることで影響を小さくしてより多くの収入を得ることができるという研究結果が明らかにされています。
一方、このペナルティは女性に限ったものではないという点も留意する必要があるとのこと。ノルウェーでは1993年から男性にも育児休暇を与える制度が導入されていますが、この制度を利用した父親の生涯年収が負の影響を受ける傾向にあるという研究結果も明らかにされています。
By StubbornYeza
より自由で豊かな人生設計を行う上で、「子どもをいつ授かるのか」という夫婦にとって最大のイベントのタイミングを計ることは極めて重要であるといえます。早いほど良いという考え方や、さまざまな事情からある程度遅い方が良いという考え方まで、その理想像は個人や夫婦によってさまざまであるため、絶対的な正解というものは存在しません。
しかし、加齢に伴うリスクが存在することは紛れもない事実であることを知っておき、遅すぎる状況になってしまう前に十分に準備しておくことが重要。生物学的にみて出産に好ましい年齢は、女性は35歳以下、男性は40歳以下であるとされています。
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